冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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カイウスの話15

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「マリーの事、ご存知ですか?」

「マリー?どうかしたのか?」

「もう日付が変わっているので、昨日の事です…買い物途中で何者かに襲われました」

マリーが襲われた?誰に、なんでもっと早くに言ってくれないんだ!

エーデルハイド家の俺のメイドだ、ライムにもマリーを見といてと言われてたのに主人である俺の責任だ。

ローズにマリーの怪我について聞くとかすり傷程度だと言っていて安堵した。
俺が騎士団長としての仕事中だったから知らせるのが遅くなったとローズは頭を下げた。
かすり傷だったから、そこまでローズを責めていない…椅子から降りてローズの前で膝をついた。

これがローズの話したかった事か、今すぐでなくても朝なら話のついでにマリーの様子を伺えたのに…

ローズはまだ頭を下げていて、上げるつもりがないのかそのまま口を開いた。

「ローベルト家です」

「……は?」

「マリーを襲ったのはローベルト家のご令嬢のようです」

ローベルト家のご令嬢って、ライムの妹か?そういえばマリーの事をあまりいいようには思っていないように感じた。

ローズはローベルト家が嫌いだ、だから怒りを露わにして拳を握りしめていた。
俺だってローベルト家はライム以外嫌いだ、好きな子をあんな暗い地下牢に閉じ込めるような奴ら嫌いにならない方が可笑しい。

でもローズはライムもまとめてローベルト家としているからライムの事も同じくらい嫌いなのだろう。
家を襲ったアレだって、ライムは何も悪くないと言っても証拠がないから信用しない。
ローベルト家が屋敷に不法侵入した事実はあるから、ライムの身の潔白を証明するのは難しい。
ライムがローベルト家と何の繋がりもないという証拠しか無理だろう。

「カイ様、あのローベルト家の令嬢はマリーを始末する兵器を隠していると言っていたようです…あの悪魔の男の事です」

「……」

「カイ様の友人だとは承知しております、ですが…カイ様、貴方はあの男に騙されています!この家を守るためなのです…お願いします、目を覚まして」

「目を覚ますのはお前の方だ、ローズ…自分の部屋で頭を冷やしてこい」

「カイ様っ」

「…疲れてるんだ」

そう言うと、ローズは立ち上がり俺に頭を下げて部屋から出て行った。

「モテモテだなぁ、カイ様は…」

「……」

「ちょっと落ち着けよ、アレも一応友人なんだろ」

いつから起きていたのか、リーズナがベッドの上から床に座る俺を見つめていた。

指先がビリビリと電気が通ったようにまとっている、ぐっと力を込める。
ローズは古くからの付き合いで、俺のよき理解者でもある友人だ。

その友人を魔力でねじ伏せて従わせようと思っていた、リーズナがいなかったら俺はまた暴走してしまったかもしれない。
リーズナは見えない魔力で俺の力を押さえつけている、だんだん気分が楽になっていく。

ローズは昔から、俺の事を過大評価しすぎている…神の子だと周りは俺をそう呼ぶ…ローズも例外ではない。
だから、神とは真逆の力の悪魔の力であるライムが気に入らないのだろう。
…俺からしたら、俺の方が感情で人を殺す悪魔の力だ…ライムはそんな俺を止める天使の力か。

『カイ、お前もう分かってるんじゃないか?あの頑固なメイド長の事…』

「…ローズは神の子という肩書きを持つ俺を守るためなら、俺の言葉を無視して暴走しかねない…リーズナ、ローズを見張っていろ」

『分かってる、あのガキにもカイがどんな事になっても傍にいられるか試したんだよ…メイド長に何されてもカイの事裏切らないか』

ガキってライムの事か?ライムはガキではない、ちゃんとライムと可愛い名前があるんだ。

リーズナを睨むと、背中をびくつかせて「…ライムに」と言い直した。
俺が何に怒ってるのか、口に出さずに分かったようだ…しかし、呼び捨ても腹立たしい…「ライムさん」だろ。

まぁそれはいい、ライムの前ではちゃんとさん付けするなら…

リーズナは上から目線で合格だと言っていた、愛を試されていたのか…あんな脅すような事をしなくても他に方法があっただろ。
ライムの愛の深さを知って嬉しかったが、ライムが俺に殺されるのを望んでいた事は嬉しくなかった。

俺は何があってもライムを殺すどころか、傷付けたりしない。
ライムを守っているつもりが、あんな風に思われていた事がショックだった。
フリとはいえ、ライムを殺そうとしたのはリーズナだがライムは俺をリーズナと重ねていた。
確かに俺とリーズナは繋がっている同一人物のようなものだ、でも…リーズナは俺ではない。

もっと命を大切にしてほしい、ライムの生まれた環境がそうさせているのかもしれない。

…だとしたら、ローベルト家はとても重い罪を犯したんだ…アイツらがいる限り、ライムは心から笑えない。

俺は、ベランダのカーテンを開くと俺を待っていたライムが手すりから身を乗り出して手を振っている。
そんなに前のめりになったら危ない、そう思うが嬉しくて顔がニヤける。

そういえば、俺がリーズナとライムのところに向かう前に感じた殺気と敵意は何だったんだ?
リーズナはライムに敵意を向けていたが、殺気は向けていない。
…気になるが、今気にしていてももうその殺気の相手は居なくなっていたし…俺達とは関係ない相手なのかもしれない。

明日、もう一度精霊について調べるとして…今は癒しがほしい。

ベランダに出ると、すぐにライムの部屋のベランダに飛んだ。
ベランダとベランダの間の隙間が俺とライムを邪魔していて嫌だ。
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