冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

文字の大きさ
134 / 299

過去編・未来から繋ぐ力

しおりを挟む
俺は怖くて、カイウスの腕を掴んでギュッと抱きしめる。
カイウスが優しく「…ライム」と声を掛けられた。

カイウスはリーズナのように過去のカイウスのところに行って魔力を全て与えるそうだ。
魔力がなくなったという事は、あのカイウスのように眠るかもしれない。
…いや、カイウスの話からして…きっと死んでしまうんだ。

ポロポロと、涙が溢れてきて首を横に振った。

「嫌だ、嫌だ…カイウスッ」

「ライム、俺が消えるわけじゃない…君の生きる世界のカイウスに戻るだけだ」

「じゃあ今のカイウスは?どうなるの?」

「…俺の世界は、ライムが俺を目覚めさせたら世界が変わるんだ」

「………せかい?」

「そう、だから…どっちにしろ俺は…この時ライムと過ごした記憶がなかった事になる」

涙で濡らす俺の頬を拭ってくれて、軽く頬に口付けられる。

カイウスに力を渡すから、俺の世界のカイウスは消えないと言っていた。
それでも、カイウスはカイウスだ……カイウスのためとはいえ、このカイウスが消えるなんて嫌だよ。

俺はカイウスを抱きしめて、カイウスに優しく包まれた。
……受け入れなければいけない、カイウスを困らせるわけにはいかない。
カイウスを助けるために来たんだ、それしか助ける方法がないなら…

カイウスはカイトを見ると、パニックだったがカイウスの方を見た。

「カイト、ライムの事頼みます」

「へぁ?…ど、どういう意味だ?」

「この子の名前はライム・ローベルトです…未来から来た子なんです…俺の記憶は消えるけど、ずっとこの子の味方で居てほしい」

「…カイウス?」

「ライムの事を知っている人が多ければ多い方がいい、君は悪い事をしていないのに酷い目にあっている……そんな事許されない」

ギュッ、とカイウスが抱きしめて…瞳を閉じた。
ありがとう、カイウス……これはお別れじゃない…元の世界に帰って俺のカイウスに出会うための儀式なんだ。

軽く口付けをして、名残惜しいが身体を離れた。

カイトは、ようやく俺達の正体が分かったのか手を叩いていた。

先にカイウスが行って、カイウスを起こすと言っていた。
俺も一緒に行きたかったが、二人同時に時間を跨ぐ事は出来ないそうだ。

カイウスが、元に戻るために俺にあるものを握らされた。

夢の中で俺を呼ぶ声が聞こえた、その声に目が覚めた。

目の前にいたのは、俺の大好きなカイウスがいた。
カイウスに抱きしめられて、温かさに安心する。

カイウスを抱きしめ返して、違和感に気付いた。

俺は筋肉質の男で、片腕と片足を壊されて動かなかった。

でも、俺は両腕でカイウスを抱きしめている。
開いたり閉じたりして確認すると手が動くし、痛みがない。
足も揺らしてみたら、やっぱり普通に動くな。

この場にはカイウスしかいないから、カイウスが助けてくれたのか?

大きな音が聞こえて、そちらを見ると大きくなったリーズナとカイトがいた。

リーズナが起きてて、大丈夫かと思って立ち上がって一歩二歩後ろに下がる。

「ライム、リーズナは大丈夫だ」

「そうなの?」

「リーズナが気絶した時、俺の力を与えたんだ」

カイウスの話によると、リーズナに触れた時カイウスは違和感に気付いたそうだ。
リーズナの身体の中に神の力を感じたみたいで、神の力をリーズナの体内に与えて精神を蝕み操っていた。

だから元々カイウスの力を体内に宿していたから、またリーズナの体内にカイウスの力を与えて正気に戻ったみたいだ。

カイトが手を振り、俺達のところにやってきた。

カイトの服も、ボロボロでところどころ砂のようなものが付着していた。
カイトも誰かと戦ったんだな、無事で良かった。

「良かった、お前らも無事だったんだな」

「…カイト様も、ご無事で何よりです」

「……その、俺…結果的に何の役に立たなかった、ごめん」

『そんな事もなかったぞ』

カイトは落ち込んでいて、元に戻ったリーズナがカイトの肩に乗っていた。

カイトの落ち込む理由は俺みたいで、俺を助けられなかっだから役ただずだと言っているようだ。
カイトが無事だっただけで、俺もカイウスもいいと思うけどな。

リーズナはカイトの戦いをずっと見ていたからか、俺達に説明していた。

カイトが戦ったのは、中性的な気持ち悪い男だとリーズナが言っていた。
中性的って事は、前に神といた華奢な男だろう。

『お前がやった事は無駄なんじゃないぞ、お前があの男の気を引かせる事が出来たからあの男はコイツを殺しに行かなかったし、俺も目を覚ます事が出来た』

「…そうですね、カイト様のおかげです…ありがとうございます」

「そ、そんな事…ないって」

カイトは耳を赤くして、困っているようで手を振っていた。

あの華奢の男はリーズナが倒したそうだけど、カイトの剣もいい腕をしているとリーズナは評価している。

リーズナはカイトの肩から飛び降りて、カイウスの肩に乗った。
ジッとカイウスをリーズナが見て、俺は思い出した。

どうしよう、カイウスとリーズナがあまりにも自然としていて、このカイウスとこのリーズナが生きている時間が違うと気付いた。
やっぱりカイウスとリーズナは繋がってるから、言わなくても分かるのだろう。
しおりを挟む
感想 174

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...