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望まぬ訪問者
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ドアのノックもしないでジークが部屋に入ってきた。
遠慮がなさすぎるな、部屋くらいは俺の自由な場所であってほしかった。
もう俺は監視付きじゃなくて、普通の兵士になった筈なのにな。
「なにか用ですか?」と少し冷たい声が出た。
勝手に部屋に入ってきた相手に優しくする事はないし、俺が嫌いになってくれたら関わらなくても良くなる。
ただ問題が、彼が俺を嫌になるほどの感情を持っているかどうか謎だ。
そもそも俺に興味なければ嫌という感情はないのではないのか?
興味はむしろなくていいから、放っておいてほしい。
無言で百面相している俺をジークはただ見ていた。
俺の質問に全く答える気がないみたいだ。
「俺、もう寝るんで用事は明日にしてもらえますか?」
「用がないと来てはいけないのか?」
「……え?」
「婚約者だから、仲を深める事も大切だと聞いた」
誰にそんな余計な知恵をもらったんだよ。
俺は嫌だって言った筈だ、それにローベルト卿にも言った……伝わってるかは分からないけど…
仲を深めるとかしなくていいし、今までそんな事をしようとした事なんてなかっただろ。
いつから婚約者になったのかは分からない。
まだ、謎だらけの政略結婚だけど…これだけははっきりしている。
忘れたのか?俺とカイウスを殺そうとした事…
「俺は忘れてないから、俺達を殺そうとした事」
「命令に従っただけだ」
「命令なら殺そうとした相手と結婚するんですか!?」
「そうだ」
コイツ、目が本気を物語っていて一歩下がった。
命令なら、生理的に受け付けない相手でも結婚しそうだ。
でも俺は無理だ、いくらフリでも婚約者のフリは出来ない。
カイウスへの気持ちは偽りたくはないからだ。
カイウスを傷付けようとしたこの男を俺は許さない、絶対に…
ジークにも言ったのに、ジークは俺に好きな人がいるって忘れてるのか?
居てもいなくても、ジークに支障はないんだろうけど…
「俺は無理だから、命令だからって無理しなくていい…ローベルト卿に言ったから」
「……」
「そもそも俺にだって好きな人がいるのに、なんでサクヤの言葉だけ聞いたんだ………嫌いな息子より、溺愛している娘なのは分かってるけど」
とにかく、ジークに愚痴ったところでどうしようもない。
何の政略結婚か分からないが、ローベルト卿がどうしても結婚させたいようには思えない。
俺が結婚するというより、ジークを傍に置きたい気がする。
だから何処にも行かないように結婚させたのかもしれない…………何故か俺と…
俺とジークの周りの反応を見ていればよく分かる。
ユリウスは誰に対してもアレだから、ユリウスは置いておこう。
ジークが通ると、敬礼したり恐怖で兵士も縮こまったりしている。
ローベルト卿にとって、恐怖を与える駒こそほしいだろう。
長年恐怖支配してきた一族だから…
俺に対してはなにか言いたい事があるように見てくる。
でも誰も何も言わずに、素通りされる。
いくらローベルト卿の息子でもお荷物だって誰でも知っているから…
「愛などいらない、利用出来るからするだけだ」
「…貴方はそうでも、俺には必要な事なんです…だから貴方とは結婚出来ない、出ていって下さい」
俺が好きになったのも、今後もなにがあってもカイウスだけだ。
ジークは何も言わず、部屋から出ていった。
備え付けられた机の上に上半身を乗せて、大きなため息を吐いた。
この床のずっと下にカイウスがいる、いるのになんで俺はそこにいけないんだろう。
自然と涙が出てきて、服の袖を拭う。
大丈夫だ、きっとカイウスに会える…こんな近くまで来れたんだから…
明日、地下に続く別の扉を探してみよう。
ローベルト卿が仕事とか俺に頼まなければ…だけど…
指輪の力を知ってしまったから、大丈夫だとはどうしても言えない。
俺にもまだ分からないのに、力を使えと言われても使えるわけがない。
それに、カイウスにもらったものだ…悪い事になんか使いたくない。
俺って、薬を飲んでる設定にしてるから薬のせいでこんな力が出るんだって思われている。
指輪にもなにか力があるが、やはり薬のおかげなんだろうと思ってそう。
カイウスの指輪だって誰も知らないからな。
知ったらカイウスと俺の関係がバレてとんでもない事になるかもしれないから、薬中毒者のフリをしてないとな。
上半身を起こして、そうしようと決めてベッドに向かった。
遠慮がなさすぎるな、部屋くらいは俺の自由な場所であってほしかった。
もう俺は監視付きじゃなくて、普通の兵士になった筈なのにな。
「なにか用ですか?」と少し冷たい声が出た。
勝手に部屋に入ってきた相手に優しくする事はないし、俺が嫌いになってくれたら関わらなくても良くなる。
ただ問題が、彼が俺を嫌になるほどの感情を持っているかどうか謎だ。
そもそも俺に興味なければ嫌という感情はないのではないのか?
興味はむしろなくていいから、放っておいてほしい。
無言で百面相している俺をジークはただ見ていた。
俺の質問に全く答える気がないみたいだ。
「俺、もう寝るんで用事は明日にしてもらえますか?」
「用がないと来てはいけないのか?」
「……え?」
「婚約者だから、仲を深める事も大切だと聞いた」
誰にそんな余計な知恵をもらったんだよ。
俺は嫌だって言った筈だ、それにローベルト卿にも言った……伝わってるかは分からないけど…
仲を深めるとかしなくていいし、今までそんな事をしようとした事なんてなかっただろ。
いつから婚約者になったのかは分からない。
まだ、謎だらけの政略結婚だけど…これだけははっきりしている。
忘れたのか?俺とカイウスを殺そうとした事…
「俺は忘れてないから、俺達を殺そうとした事」
「命令に従っただけだ」
「命令なら殺そうとした相手と結婚するんですか!?」
「そうだ」
コイツ、目が本気を物語っていて一歩下がった。
命令なら、生理的に受け付けない相手でも結婚しそうだ。
でも俺は無理だ、いくらフリでも婚約者のフリは出来ない。
カイウスへの気持ちは偽りたくはないからだ。
カイウスを傷付けようとしたこの男を俺は許さない、絶対に…
ジークにも言ったのに、ジークは俺に好きな人がいるって忘れてるのか?
居てもいなくても、ジークに支障はないんだろうけど…
「俺は無理だから、命令だからって無理しなくていい…ローベルト卿に言ったから」
「……」
「そもそも俺にだって好きな人がいるのに、なんでサクヤの言葉だけ聞いたんだ………嫌いな息子より、溺愛している娘なのは分かってるけど」
とにかく、ジークに愚痴ったところでどうしようもない。
何の政略結婚か分からないが、ローベルト卿がどうしても結婚させたいようには思えない。
俺が結婚するというより、ジークを傍に置きたい気がする。
だから何処にも行かないように結婚させたのかもしれない…………何故か俺と…
俺とジークの周りの反応を見ていればよく分かる。
ユリウスは誰に対してもアレだから、ユリウスは置いておこう。
ジークが通ると、敬礼したり恐怖で兵士も縮こまったりしている。
ローベルト卿にとって、恐怖を与える駒こそほしいだろう。
長年恐怖支配してきた一族だから…
俺に対してはなにか言いたい事があるように見てくる。
でも誰も何も言わずに、素通りされる。
いくらローベルト卿の息子でもお荷物だって誰でも知っているから…
「愛などいらない、利用出来るからするだけだ」
「…貴方はそうでも、俺には必要な事なんです…だから貴方とは結婚出来ない、出ていって下さい」
俺が好きになったのも、今後もなにがあってもカイウスだけだ。
ジークは何も言わず、部屋から出ていった。
備え付けられた机の上に上半身を乗せて、大きなため息を吐いた。
この床のずっと下にカイウスがいる、いるのになんで俺はそこにいけないんだろう。
自然と涙が出てきて、服の袖を拭う。
大丈夫だ、きっとカイウスに会える…こんな近くまで来れたんだから…
明日、地下に続く別の扉を探してみよう。
ローベルト卿が仕事とか俺に頼まなければ…だけど…
指輪の力を知ってしまったから、大丈夫だとはどうしても言えない。
俺にもまだ分からないのに、力を使えと言われても使えるわけがない。
それに、カイウスにもらったものだ…悪い事になんか使いたくない。
俺って、薬を飲んでる設定にしてるから薬のせいでこんな力が出るんだって思われている。
指輪にもなにか力があるが、やはり薬のおかげなんだろうと思ってそう。
カイウスの指輪だって誰も知らないからな。
知ったらカイウスと俺の関係がバレてとんでもない事になるかもしれないから、薬中毒者のフリをしてないとな。
上半身を起こして、そうしようと決めてベッドに向かった。
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