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淑女たちのお茶会・再び
親友同士の美少女が4人、今日はエヴァンジェリンの屋敷の庭園にてお茶会をしていた。
今日のお供は、たっぷりのカスタードの上にキャラメリゼされた薄切りりんごを美しく並べたアップルタルトと、りんごのコンポートのみを詰めた網目もつやつやと美しいアップルパイ。
お茶はもちろん、アップルティー。
こんなにりんご尽くしなのは、今が旬だから、ということもあったが、ある女性の好物だからだ。
「それで、レイチェル。ドミナート侯爵令息とはどうなりましたの?」
「どうもこうも、あちらから婚約破棄の宣言を頂きましたわよ」
淑女としては少々勢いよくタルトを頬張り、レイチェルはきちんと飲み込んでからにっこりと吐き捨てた。
「えー!やっぱり夜会で?『貴様との婚約を破棄する!』って奴⁉︎」
何故か瞳をキラキラさせたパトリシアに、レイチェルは苦笑して首を振った。
「謝罪に来るって先触れがあったから、一応両親と出迎えてたの。そうしたら、エントランスに入るなり、『貴様との婚約を破棄するー!』よ。ドミナート侯爵に羽交い締めされて、引きずられて退場したわ」
両親がイイ笑顔だったわ、と言って、レイチェルはお茶をおかわりした。
「では、婚約は解消なさったの?」
「解消じゃないわ、破棄よ。もちろん、あちらの有責で。ドミナート侯爵家としては、1番避けたかったでしょうけど」
「おやおや。それでは、ドミナート子息は終わりだねー」
ヘンリエッタの言葉に、レイチェルは肩を竦めた。
「終わりも終わり、勘当して叩き出すって仰ってたわよ、侯爵閣下。……まあ、何故か喜んでたけど」
「これでストーン嬢を追いかけられるーって?……でもアイツ、行方不明って聞いたよ?」
「行方不明?ですの?」
王太子の護衛をしている婚約者のおかげで、不審者情報を手に入れるのが早いパトリシアは、改めて他の3人を見回した。
「寮から、質素な馬車に貢物詰め込んで出発したでしょ。そのあと、途中で降ろされたんだって。ストーン男爵の意図か、御者が悪心を起こしたのか、それともストーン嬢が逃げたのかも?」
「一応貴族令嬢でしょう?見つかりましたの?」
エヴァンジェリンが心配すると、パトリシアは不思議そうな表情になった。
「心配するんだ?迷惑かけられたのに?」
「それとこれとは別ですわ」
「そっか。……見つかってはないみたい?もうこっちに近づけないとは思うけど、気にはしてて」
「……そう。……あら?ドミナート子息の話でしたわね」
「勘当されたなら、ドミナート子息ではないんじゃない?」
「名を呼ぶのが嫌なんですもの。……で?」
「ああ……何だっけ、追いかけたんだっけ。……って、待って。ジェレミーが、普通の街で、人を追いかける?」
「人を追いかけるってことは……他の人に見なかったか尋ねたり……」
「店に入って確認したり……」
「……護衛もなしで、あの顔で?」
透けるような儚げな美貌を思い出した4人は、思わず顔を見合わせ、揃って祈りを捧げた。
無事……ではいられないでしょうけど、なるべくマシな所に買われていますように……。
祈りを捧げられた神も困るだろうが。
コホン、と咳払いをして、エヴァンジェリンが話題を変えた。
「そう言えば、ヘンリエッタが王太子殿下に、わたくしに頼るよう言ってくれたのですって?」
「わたくしたちも心配をお掛けしたから、少しは休んで頂きたくて」
「あ、聞いた聞いた。バスケットいっぱいのクッキー、持って行ったんだって?」
パトリシアが明るく茶化すと、エヴァンジェリンは薄っすら赤くなった。
「だって……殿下が……」
「何、なにぃ?」
「食べたいって……」
俯いたエヴァンジェリンに、周りがニヤニヤと冷やかす。
「いやーん、赤くなって可愛いったら!」
「そんな顔、殿下にだけ見せなさいよ!」
「ふふふ、仲良しだなぁ」
キッと顔を上げたエヴァンジェリンは、にっこりとヘンリエッタを見やった。
「そう言えばアンリ、王太子殿下に第3王子殿下が好きだって宣言したんですって?」
「えっ!」
「なっ、ななな、何でそれを!」
今度は、真っ赤になったヘンリエッタをレイチェルとパトリシアが茶化す。
「情熱的ぃー!さすがラブラブカップル!」
「お兄さまの前で!大たーん!」
「違うぅ!あれは、話の流れで!別に宣言した訳じゃなくってぇ……!」
「うふふ、仲良しね」
「エヴァってば!パ、パトリシアだって仲良しだろう!いつも甘やかされてて!」
「そうだよ?10個も上だもーん。いっつも子ども扱いされてますぅ」
開き直って拗ねたパトリシアに、エヴァンジェリンは真顔で言った。
「あら、あれは子ども扱いではないと思うわ」
「え、だって。いつも膝抱っこだよ?」
「まあ、パットは華奢だし、乗せたくなるのも判る──じゃなくて、抱きしめたいのでしょう」
「え?え?え?」
「そうよ、あのレイモンド卿が、蕩けるような顔をしてるわよ」
レイチェルが自信たっぷりに頷くと、ちらちらと視線を向けた2人もにっこりと微笑んだ。
「大丈夫、ちゃんと女性として見られてますわ」
「じゃなきゃ、あんな牽制じみた視線を周りに飛ばさないって」
「そ……そっかな……」
いつも元気なパトリシアが赤くなると、華奢さが際立つ。
「あー。わたくしも、婚約者が欲しいわぁ」
レイチェルがやけ食いを始めると、他の3人はくすくすと笑った。
「あら、心当たりはあるでしょう?チェリーのところは婿入りですし、もう、誰でもいいのだから」
にっこり笑ったエヴァンジェリンに、レイチェルは、曖昧な笑みを浮かべた。
今日のお供は、たっぷりのカスタードの上にキャラメリゼされた薄切りりんごを美しく並べたアップルタルトと、りんごのコンポートのみを詰めた網目もつやつやと美しいアップルパイ。
お茶はもちろん、アップルティー。
こんなにりんご尽くしなのは、今が旬だから、ということもあったが、ある女性の好物だからだ。
「それで、レイチェル。ドミナート侯爵令息とはどうなりましたの?」
「どうもこうも、あちらから婚約破棄の宣言を頂きましたわよ」
淑女としては少々勢いよくタルトを頬張り、レイチェルはきちんと飲み込んでからにっこりと吐き捨てた。
「えー!やっぱり夜会で?『貴様との婚約を破棄する!』って奴⁉︎」
何故か瞳をキラキラさせたパトリシアに、レイチェルは苦笑して首を振った。
「謝罪に来るって先触れがあったから、一応両親と出迎えてたの。そうしたら、エントランスに入るなり、『貴様との婚約を破棄するー!』よ。ドミナート侯爵に羽交い締めされて、引きずられて退場したわ」
両親がイイ笑顔だったわ、と言って、レイチェルはお茶をおかわりした。
「では、婚約は解消なさったの?」
「解消じゃないわ、破棄よ。もちろん、あちらの有責で。ドミナート侯爵家としては、1番避けたかったでしょうけど」
「おやおや。それでは、ドミナート子息は終わりだねー」
ヘンリエッタの言葉に、レイチェルは肩を竦めた。
「終わりも終わり、勘当して叩き出すって仰ってたわよ、侯爵閣下。……まあ、何故か喜んでたけど」
「これでストーン嬢を追いかけられるーって?……でもアイツ、行方不明って聞いたよ?」
「行方不明?ですの?」
王太子の護衛をしている婚約者のおかげで、不審者情報を手に入れるのが早いパトリシアは、改めて他の3人を見回した。
「寮から、質素な馬車に貢物詰め込んで出発したでしょ。そのあと、途中で降ろされたんだって。ストーン男爵の意図か、御者が悪心を起こしたのか、それともストーン嬢が逃げたのかも?」
「一応貴族令嬢でしょう?見つかりましたの?」
エヴァンジェリンが心配すると、パトリシアは不思議そうな表情になった。
「心配するんだ?迷惑かけられたのに?」
「それとこれとは別ですわ」
「そっか。……見つかってはないみたい?もうこっちに近づけないとは思うけど、気にはしてて」
「……そう。……あら?ドミナート子息の話でしたわね」
「勘当されたなら、ドミナート子息ではないんじゃない?」
「名を呼ぶのが嫌なんですもの。……で?」
「ああ……何だっけ、追いかけたんだっけ。……って、待って。ジェレミーが、普通の街で、人を追いかける?」
「人を追いかけるってことは……他の人に見なかったか尋ねたり……」
「店に入って確認したり……」
「……護衛もなしで、あの顔で?」
透けるような儚げな美貌を思い出した4人は、思わず顔を見合わせ、揃って祈りを捧げた。
無事……ではいられないでしょうけど、なるべくマシな所に買われていますように……。
祈りを捧げられた神も困るだろうが。
コホン、と咳払いをして、エヴァンジェリンが話題を変えた。
「そう言えば、ヘンリエッタが王太子殿下に、わたくしに頼るよう言ってくれたのですって?」
「わたくしたちも心配をお掛けしたから、少しは休んで頂きたくて」
「あ、聞いた聞いた。バスケットいっぱいのクッキー、持って行ったんだって?」
パトリシアが明るく茶化すと、エヴァンジェリンは薄っすら赤くなった。
「だって……殿下が……」
「何、なにぃ?」
「食べたいって……」
俯いたエヴァンジェリンに、周りがニヤニヤと冷やかす。
「いやーん、赤くなって可愛いったら!」
「そんな顔、殿下にだけ見せなさいよ!」
「ふふふ、仲良しだなぁ」
キッと顔を上げたエヴァンジェリンは、にっこりとヘンリエッタを見やった。
「そう言えばアンリ、王太子殿下に第3王子殿下が好きだって宣言したんですって?」
「えっ!」
「なっ、ななな、何でそれを!」
今度は、真っ赤になったヘンリエッタをレイチェルとパトリシアが茶化す。
「情熱的ぃー!さすがラブラブカップル!」
「お兄さまの前で!大たーん!」
「違うぅ!あれは、話の流れで!別に宣言した訳じゃなくってぇ……!」
「うふふ、仲良しね」
「エヴァってば!パ、パトリシアだって仲良しだろう!いつも甘やかされてて!」
「そうだよ?10個も上だもーん。いっつも子ども扱いされてますぅ」
開き直って拗ねたパトリシアに、エヴァンジェリンは真顔で言った。
「あら、あれは子ども扱いではないと思うわ」
「え、だって。いつも膝抱っこだよ?」
「まあ、パットは華奢だし、乗せたくなるのも判る──じゃなくて、抱きしめたいのでしょう」
「え?え?え?」
「そうよ、あのレイモンド卿が、蕩けるような顔をしてるわよ」
レイチェルが自信たっぷりに頷くと、ちらちらと視線を向けた2人もにっこりと微笑んだ。
「大丈夫、ちゃんと女性として見られてますわ」
「じゃなきゃ、あんな牽制じみた視線を周りに飛ばさないって」
「そ……そっかな……」
いつも元気なパトリシアが赤くなると、華奢さが際立つ。
「あー。わたくしも、婚約者が欲しいわぁ」
レイチェルがやけ食いを始めると、他の3人はくすくすと笑った。
「あら、心当たりはあるでしょう?チェリーのところは婿入りですし、もう、誰でもいいのだから」
にっこり笑ったエヴァンジェリンに、レイチェルは、曖昧な笑みを浮かべた。
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