どうしてか、知っていて?

碧水 遥

文字の大きさ
9 / 17

その裏で・再び

「……は?ジルが勘当されて叩き出された?」

「はい。ご両親たちの目の前で、『婚約を破棄する!』とやったようで」

「アイツはどうしてそう両極端なんだ……!」

 クローディアスは、思わず頭を抱えた。

 甘えるなら婚約者に甘えろとは言いましたよ。確かに言ったけど、甘えるってこういうことじゃないだろう⁉︎

「そのあと、ピンクおん……マリナ・ストーン嬢を探そうとしたらしく、街で目撃されていました」

「……アイツ、ピンク女に惚れてでもいた訳?そんなに接点あったか?」

「まあ……あなたがすげなく追い払うたびに、慰めに行ってましたが。……弟殿下と一緒に」

「……アホか」

「アホですね」

 クローディアスは、どさりとソファに身体を投げ出した。

「レイチェル嬢の何が気に入らないんだ、あんな美人。エヴァとはまた違うタイプだが、間違いなくとんでもない美女だろう?」

「まあ……人には好みというものがありますからねぇ……」

「好みって。……美女は嫌いとか?あのピンク女よりよっぽど、レイチェル嬢の方が美しかろう」

「可愛いタイプが好きなんでしょう。顔だけで言うなら……うちのパティとか」

「パトリシア嬢?……元気な姿しか浮かばん」

「あー、まあ、殿下が彼女を見る時は、私に会いに来てる時ですからね。普段に輪をかけて元気ですね」

 侍女がお茶を2人分出して下がると、クローディアスはレイモンドに座るよう合図した。

「で?無事なのか、ジェレミーは」 

 声をひそめて尋ねたクローディアスに、レイモンドは首を傾げた。

「無事の定義によります」

「……と言うと?」

「身体は無事です。怪我どころか、今までより贅沢をしているかもしれません」

「……は?」

「超高級な男娼館に売られたようです。貢物で部屋が埋まったそうですよ。その一部を男娼館に還元しているので、も気が向いた時しかしないようですが、売り上げは断トツトップです」

「男娼……館……」

 呆然と呟いたクローディアスに、レイモンドは苦笑を浮かべた。

「本人が幸せかどうかは、判りかねます」

「本当に両極端だな⁉︎」

 無事なら良かったけど。良かった……のか?

 考え込みそうになったクローディアスは、頭を振って紅茶のカップを手にした。

 どうにかする気がないのならば、考えても致し方ない。

「もう、アイツのことは忘れる。忠告を聞かずに勝手に堕ちていった奴まで、面倒見切れるか」

「それがよろしいかと」

「で……ストーン嬢のことだが」

「は」

 雰囲気を一変させた主に、レイモンドは背筋を伸ばした。

「逃亡した、のか?」

「いえ、正確には違います。ストーン家に着いて馬車のドアを開けたら、中に座っていたのは茶髪茶目の少女だったそうで」

「身代わりか」

 クローディアスの深刻な口調に、レイモンドは首を振った。

「いえ、本人だそうです」

「……は?」

「元々、ストーン嬢は茶髪茶目の、おとなしい少女でした。学園に入る前に、何故かピンクの頭になっていたそうで……性格も変わり果て、お前などうちの娘ではない!と勘当に近い状態で放り出したらしいのですが」

「迷惑だな⁉︎」

「家に着いた茶髪のストーン嬢は、元のマリナ嬢だったらしく」

「あー……じゃあまあ、ピンク頭は逃亡したいなくなったで、いいんだな」

「そのようです」

 紅茶で喉を潤し、クローディアスは再び口を開いた。

「ハーレム男の方は?」

「家で監禁されたのは確認しました。数日は騒ぎ立てていたようですが……ぬいぐるみを与えたら静かになったそうで」

「……は?」

「ぬいぐるみを与えたら静かになったそうで」

「聞こえなかった訳じゃないっ」

 クローディアスは、再びソファに沈み込んだ。

「何なんだ、一体……」

「1つ1つお名前を付けて、ハーレムしているそうですよ?クマちゃんと」

「クマちゃん……」

 ボスッとクッションを殴って、クローディアスは吐き捨てた。

「それでいいんなら、端っからそうしてろっての」

 あーもーやだ、と呟いて、殴ったクッションを抱えたクローディアスに、レイモンドは無表情に言った。

「シャイルードル公爵令嬢をお呼びしますか?」

「結構だ!」

「そうですか。私はパティに会ってきます」

 では、と立ち上がったレイモンドに、クローディアスは、イイ笑顔を浮かべた。

「逃すか。今は人手が足りないんだ。動員した文官に、変なのが混じってないとは限らないからな」

「嫌です」

だ」

「……くっ」

 拳を握って扉に向かったレイモンドに、クローディアスは澄ました顔で声をかけた。

「休憩は終わりだ。文官を入れてくれ」

「……かしこまりました」
感想 2

あなたにおすすめの小説

王家の賠償金請求

章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。 解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。 そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。 しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。 身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。 『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。 エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。 ──そして舞踏会の夜。 王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。 ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。 王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。 王国は“内乱寸前”へと傾いていく。 そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。 「僕と結婚してほしい。  僕以外が王になれば、この国は沈む」 冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。 「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」 エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。 それからの2人は──? ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)