一条の光 -山崎闇斎と伊藤仁斎-

深川ひろみ

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二 旧知

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 家人も寝静まり、しんとした秋の夜長に、源佐は灯りを頼りに書を繙いていた。
 松屋の邸へ行くと、同じ学問仲間の壺屋も来ていた。松屋が声をかけたとかで、前回の読書会ではっきりしないところもあったので、よければ一緒に疑問を質したいという。源佐にしても願ってもないことで、三人で本を読みあい、質問しあい教えあい、結局暮れまで話し込んだ。それから軽食をご馳走になり、軽く酒も酌み交わして帰宅した。戌の刻(午後八時頃)にはなっていたと思う。食事の際に出た茄子漬が旨かったので褒めたところ、土産にいくつか包んでくれて、ふさも喜んでいた。
 儒の道を学ぶ者として、理解ある家族と、好学の同士に恵まれ、裕福とは言えないにせよそこそこの生活を送ることが出来るようになった自分は、実に果報者だと思う。若い時分、そんな未来を描くことはとても出来なかった。
 山崎闇斎と出会ったのは、源佐が最も精神的に苦しかった、三十歳前のことだ。今から三十年程昔のことになる。
『道の前には皆一人や』
 源佐の苦しみを、私塾を開いたばかりだった闇斎は、無造作に一言で切り捨てた。九歳年長だから、相手は三十八歳だったはずだ。
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