オオカミ少年は人間なのか狼なのか、

はいは〜と

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鳴り止まない孤独

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 「一匹で生きることは、人間にとっては難しい。」
 「一匹で生きることは、狼にとっても難しい。」
 誰にとっても孤独は恐ろしいものであり、
追いかけてくる孤独に、
溢れてやまない孤独に、
立ち向かうことが、何よりも難しいことだと思う。

 ある日少年は、大切な恋人を殺めてしまった。動機などは特になく、そこに血があったから本能が抑えきれなくなってしまったこと以外に、説明できるものがなかった。
 少年は、生まれた時からオオカミの呪いにかけられていた。夜になるとその姿は狼になり、大切な人から愛されなくなる、そんな呪いだ。もちろん親からは名付けをされる前に捨てられた。そのう上、街の人間からも奇妙に思われ、街の外れの塔に閉じ込められていた。
 少年は、塔に閉じ込められることを嫌とは思わなかった。生まれた時から愛されたこともなかったからである。仕方ない。そう言った感情だけが彼を殻に閉じ込めた。

 朝日が登ると、毎日塔のなかに、少年を監視している研究者の娘がやってきて、街でとれた野菜を食べさせる。そして娘は少年を羨ましがるのだ。
「貴方は私よりも父上から愛されている。父上は私のことを少しも見ていない。多分きっと、貴方に食べられても仕方ないと思っている。」
しかし少年には分からなかった。愛とはなんなのか、だのに、咄嗟に口を開いて娘に伝える。
「なら、僕が君を愛すから、君は父さんを愛してあげて欲しい。僕は僕の親を愛することさえできないどうしようも無い生き物なんだ。」
娘は急に泣き出した。少年には分からなかったが、娘の声を聞いて一緒に泣いてしまった。そうして、彼らは近づくことになる。

 娘が少年にこっそりサンドイッチを持ってきた。少年はこのようなものがあるのかと必死になって食べ尽くした。
 少年が娘にこっそり藁で作った冠を渡した。娘はその冠を必死に抱いて家に帰ったら。
 娘が少年に愛を伝えると、少年は少しずつ愛を理解していった。同時に彼女に言ってしまったことの大きさを悟り、恥じらうようになってしまった。

 少年はある日熱を出した。人間とは少し違う身体に、どう治療を施すのが正解か分からなかった研究者は、娘に人間用の高価な治療薬を渡した。娘は急いで彼に薬を飲ませた。彼は安静に眠りについた。
 次の日も少年は寝込んでいた。次は狼用の薬を飲ませた。しかし少年にはあまり効果がなかった。それどころか、容体は悪化する一方で、娘はそれを心配し、彼に温かい服を編んだ。

 そして服が完成し、娘は少年に差し出した。娘の少し小さな手の上に少し大きめの服。愛を感じた。しかし少年は娘の指先の小さな小さな赤い血を見て、肉というものを久しぶりに口にしたのだった。

 少年は自分の正体について考えた。
そのきっかけは愛してやまない彼女の死である。
誰が死を生んだのか。
何が死を運んだのか。
それもまた理解するまで時間のかかることだった。

 村の大人たちは少年を何もない大きな箱の中に閉じ込めた。
少しの隙間から覗く月明かりを時間が経つにつれて雲は隠してゆく。
少年は自分の手の香りを嗅いで、彼女のことを思い出し、一人溢れてゆく孤独に涙を堪えきれなかった。追いかけてくる孤独に、耐え切ることが出来なかった。

少年は人間ではない。
少年は狼ではない。
少年は唯一つ、少年である。

雨が降る音を聞きながら少年は歌を歌った。彼女が教えてくれた大切な歌だった。
その鋭く尖った大きな爪と、そこに残る乾いた赤い彼女の跡は
少年の自分自身を知るための、知ってしまう恐怖に立ち向かうための、勇気を与えた。

 少年はただ一人、朝日が登る匂いを嗅ぎ、箱を破り森へ帰ったのだった。
少年は少年として生きることをやめた。
その朝は新たな生命を祝福していた。

 
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