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最終章 最後に愛は勝つ!? 婚約破談の危機に害虫駆除!
絶倫皇女、アジトに辿り着く
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ディアス家の屋敷を出る前に万が一の事を考え、騎士団に向けて使いの者を出した。
ヒューゴも心配だから一緒に行くと言ってくれたが、親友でもある貴方を巻き込む訳にはいかないと私達は丁重に断った。
「二人共、気をつけて下さいね!」
「えぇ、ありがとう! ちゃんとレポートするから、楽しみにしててね!」
ヒューゴに手を振って、馬車に乗り込んだのが丁度、二時間前の出来事である。
馬車から降りて向かった先は件の工場跡地。人が住んでいるような気配はない。道は荒れ果て、腰の辺りまで高さがある雑草が辺り一面に群生していたのであった。
「うぅ……道がこんな荒れてるとは思わなかったわよぉぉ……」
ゼェゼェと呼吸をしながらその場で休憩していると、耳元でモスキート音が聞こえた。私は蚊に噛まれまいと、顔を歪めながら全力で振り払う。
「虫が多いぃぃぃぃっ! やだやだやだーーーー、こっちくんなーーーー!」
奴等のアジトは荒地にあると聞いてたから、汚れても良いドレスで来たけど、こんな事ならヒューゴに虫除けスプレーの開発も頼んでおけば良かったと思った。
「インジー、大丈夫ですか?」
「なんとかね。でも、ドレスが謎の植物の種だらけになっちゃいました」
「本当ですね。この件が終わったら、そのドレスは破棄しましょう。ウェディングドレスをオーダーする時に貴方に似合うドレスを数着用意したらいいのです」
そうよ……そうよそうよ! 私にはメインイベントである結婚式が用意されてるじゃない♡ 私の時代キターーーーーーーー!! あぁん、楽しみすぎてゲロ吐きそうだわぁぁぁぁ♡
「さぁ、気を取り直して慎重に進みましょう」
「分かったわ、グレン♡」
グレンが茂みを掻き分けて先行し、私は彼の腕を掴みながらその後をついていく。サクサクと雑草をかき分けながら暫く進むと、所々ヒビ割れた煉瓦造りの外壁が見えてきた。
「ここに奴等がいるはずです」
彼が腰に携帯していた鞘から赤い宝石が付いた剣を抜き、いつ襲われても私を守れるように構えた。そして、赤錆色の脆そうな鉄の扉に指を指す。
「あそこに裏口があります。襲われてしまったら危ないので、インジーはここで待っていて下さい」
「嫌よ、私も一緒に行く! 私が大学で医療を学んでるのは、こういう時の為なのよ!? それに害虫達を懲らしめる時は貴方と一緒じゃないと嫌! 私の敵は貴方の敵、貴方の敵は私の敵よ! じゃないと、コレをヒューゴから貰ってきた意味がないもの!」
そう言って私は持っていた紙袋をグレンの目の前に突き出した。
玩具の使い方はよく分からないものの、グレンは暫く考えた末に「……わかりました。ですが、私の身に危険が迫った時は迷わず逃げて下さい。約束ですよ?」と小指を出してきたので、小指を絡めて私は「絶対に約束するわ」と微笑み、約束を交わしたのであった。
◇◇◇
グレンは窓の縁に手をかけ、懸垂の要領で建物の内部を覗き見た。
中は薄暗くて壁が黒ずんでいたり、一部穴が空いていたりしたが人の気配は全くなく、物なども一切置かれていない小さな部屋であった。
「誰もいないな……」
グレンが私にこっちに来いとハンドサインを送ってきたので、私はドレスの裾を持ち上げながらグレンの側に素早く駆け寄った。
「では、入りますよ。足音をたてないように気をつけて」
「えぇ」
グレンが裏口の扉をそっと開けて建物の内部に侵入したが、季節は秋に差し掛かっているにも関わらず、夏場の公衆トイレのようなアンモニア臭が部屋の中に立ち込めていたので、私は鼻を摘みながら顔を歪めてしまった。
「う……すごく臭うわね」
「恐らく、野生動物の糞尿でしょうね。本当に酷い匂いです」
グレンはそう言ったが、恐らく動物ではないと思う。
だって、部屋の隅っこに置かれてる肥溜めみたいな桶が二つ満タンに貯まってるのよ? それに、あの茶色の物体の大きさを見て? 蝿がブンブン集ってるし、それに動物はあんな大きなウンチはしないわ。
……という事は、これらは人間の糞尿という事になる。水を止められているのでトイレが使用できないんだろう。
でもさ? だからって、普通の部屋をトイレ代わりにするかね? うぅ、もう最悪ッ! 早くこんな所からおさらばしたーーいッ!
私は叫び出したいのをグッと堪え、チラッとグレンを見てみると彼は既に戦闘モードに入っていた。真剣な表情で隣の部屋に続く扉の側で息を殺し、どう動くか思案している。
「グレン、どう?」
「静かに。人の話し声が聞こえます」
「え、本当に?」
「えぇ。二人……いや、三人ですね。比較的若い男の声です」
なんですって? 三人組の若い男の声といえば……アース、キン、チョウじゃない? じゃあ、親玉であるガマエルはここにはいないのだろうか?
「……グレン、私にも聞かせてくれる?」
私は扉のすぐ側に近寄って耳を澄ましてみる。
すると、聞き慣れた害虫三人組の馬鹿笑いする声が聞こえてきたのだった。
「せーーっの、乾杯ーーーー♡ いやぁ、反王室の印刷会社にイング嬢の盗撮写真売ったら思いの外ぼろ儲けできたわ~~~~!
しっかし、あのヤリマンクソビッチのせいでどうなる事か思たけど、やられたらやり返すのが俺らの本懐やで……なぁ、キンにチョウ?」
「「そうだそうだ~~、やられたらやり返す~~♡ 僕達の本懐~~、アースに賛成~~♡」」
この声は間違いない。
アース、キン、チョウの声だ。あんの害虫共……私が近くにいないと思って言いたい放題言ってやがるなぁぁ!!
くっ、駄目……我慢よ、イングリッド! ここは耐えるの! 我慢しなくちゃっ!
「……ハッ!」
私は無意識のうちに錆びた鉄の扉に思わず爪を立ててしまったらしく、キィィィィ……という小さな耳障りな音で我に返った。
「プハァーーーー♡ これは勝利の酒やッ! さぁ、全部飲み干すでぇぇぇぇッ!」
「「飲み干そう、飲み干そう~~♡ 勝利の美酒~~~~♡」」
コンッ!と空瓶を床に置いたような音が響いた後、続けてアースのギャハハッという下品な笑い声が建物内に響き渡った。
「いんや~~、ほんまあのヤリマンクソビッチとセックスせんで良かったわ~~!
ショーに来てたVIP客、皆アイツの餌食になってもぉたやん! ほんま、なんなんあれ? なんであの女とセックスした奴は死んでしまうん? アイツの雌穴は地獄に直結なんか? 地獄耳ならぬ地獄穴やで地獄穴っ! アイツの雌穴は性病移されるより酷い穴やんなぁ~~? それやったら俺は梅毒なって死ぬ方がマシじゃーー、ギャハハハハハハハッ!!!!」
………………プチン。
プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチ…………ブッッッッッッッッッッツン‼︎‼︎‼︎‼︎
「……………………殺す」
あんの害虫ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
黙って聞いてりゃいい気になりやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……もう我慢ならん!!
私は感情をむき出しにしながら、部屋の隅に置かれていた肥溜めを二つ手に取った。重いであろうそれをゴリラのように軽々と担ぎ、扉へと向かう。
「イ、インジー……そ、それは––––」
バァンッ!と躊躇なく扉を蹴破った私。
それを後ろから止めるグレンの声。しかし、私は耳を貸さずにズンズンと建物の中心へ突き進んだ。
「殺す……殺す……殺す……殺す」
私は害虫を駆除する為だけのキリングマシーンと化していた。もう誰にも私を止められない。そして、怒りのまま両手に持っていた肥溜めを奴等がいるであろう場所に向かって投げ付けてやった。
「調子こいてんじゃ……ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ‼︎‼︎」
イングリッド必殺、肥溜めインパクト!!
「とくと味わいなさいッ、これが私の怒りじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「「「え……? ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎‼︎‼︎‼︎」」」
カッポーーーーーーン、ビチャビチャビチャッ!
ものの見事に肥溜めが害虫共に直撃し、廃工場内に茶色の雨が降り注いだ。
「グェェッ、オェッ!!」
三人は自分達がした汚物を頭から被る羽目になり、あまりの激臭に鼻が捩れ、その場で気絶してしまったのであった。
ヒューゴも心配だから一緒に行くと言ってくれたが、親友でもある貴方を巻き込む訳にはいかないと私達は丁重に断った。
「二人共、気をつけて下さいね!」
「えぇ、ありがとう! ちゃんとレポートするから、楽しみにしててね!」
ヒューゴに手を振って、馬車に乗り込んだのが丁度、二時間前の出来事である。
馬車から降りて向かった先は件の工場跡地。人が住んでいるような気配はない。道は荒れ果て、腰の辺りまで高さがある雑草が辺り一面に群生していたのであった。
「うぅ……道がこんな荒れてるとは思わなかったわよぉぉ……」
ゼェゼェと呼吸をしながらその場で休憩していると、耳元でモスキート音が聞こえた。私は蚊に噛まれまいと、顔を歪めながら全力で振り払う。
「虫が多いぃぃぃぃっ! やだやだやだーーーー、こっちくんなーーーー!」
奴等のアジトは荒地にあると聞いてたから、汚れても良いドレスで来たけど、こんな事ならヒューゴに虫除けスプレーの開発も頼んでおけば良かったと思った。
「インジー、大丈夫ですか?」
「なんとかね。でも、ドレスが謎の植物の種だらけになっちゃいました」
「本当ですね。この件が終わったら、そのドレスは破棄しましょう。ウェディングドレスをオーダーする時に貴方に似合うドレスを数着用意したらいいのです」
そうよ……そうよそうよ! 私にはメインイベントである結婚式が用意されてるじゃない♡ 私の時代キターーーーーーーー!! あぁん、楽しみすぎてゲロ吐きそうだわぁぁぁぁ♡
「さぁ、気を取り直して慎重に進みましょう」
「分かったわ、グレン♡」
グレンが茂みを掻き分けて先行し、私は彼の腕を掴みながらその後をついていく。サクサクと雑草をかき分けながら暫く進むと、所々ヒビ割れた煉瓦造りの外壁が見えてきた。
「ここに奴等がいるはずです」
彼が腰に携帯していた鞘から赤い宝石が付いた剣を抜き、いつ襲われても私を守れるように構えた。そして、赤錆色の脆そうな鉄の扉に指を指す。
「あそこに裏口があります。襲われてしまったら危ないので、インジーはここで待っていて下さい」
「嫌よ、私も一緒に行く! 私が大学で医療を学んでるのは、こういう時の為なのよ!? それに害虫達を懲らしめる時は貴方と一緒じゃないと嫌! 私の敵は貴方の敵、貴方の敵は私の敵よ! じゃないと、コレをヒューゴから貰ってきた意味がないもの!」
そう言って私は持っていた紙袋をグレンの目の前に突き出した。
玩具の使い方はよく分からないものの、グレンは暫く考えた末に「……わかりました。ですが、私の身に危険が迫った時は迷わず逃げて下さい。約束ですよ?」と小指を出してきたので、小指を絡めて私は「絶対に約束するわ」と微笑み、約束を交わしたのであった。
◇◇◇
グレンは窓の縁に手をかけ、懸垂の要領で建物の内部を覗き見た。
中は薄暗くて壁が黒ずんでいたり、一部穴が空いていたりしたが人の気配は全くなく、物なども一切置かれていない小さな部屋であった。
「誰もいないな……」
グレンが私にこっちに来いとハンドサインを送ってきたので、私はドレスの裾を持ち上げながらグレンの側に素早く駆け寄った。
「では、入りますよ。足音をたてないように気をつけて」
「えぇ」
グレンが裏口の扉をそっと開けて建物の内部に侵入したが、季節は秋に差し掛かっているにも関わらず、夏場の公衆トイレのようなアンモニア臭が部屋の中に立ち込めていたので、私は鼻を摘みながら顔を歪めてしまった。
「う……すごく臭うわね」
「恐らく、野生動物の糞尿でしょうね。本当に酷い匂いです」
グレンはそう言ったが、恐らく動物ではないと思う。
だって、部屋の隅っこに置かれてる肥溜めみたいな桶が二つ満タンに貯まってるのよ? それに、あの茶色の物体の大きさを見て? 蝿がブンブン集ってるし、それに動物はあんな大きなウンチはしないわ。
……という事は、これらは人間の糞尿という事になる。水を止められているのでトイレが使用できないんだろう。
でもさ? だからって、普通の部屋をトイレ代わりにするかね? うぅ、もう最悪ッ! 早くこんな所からおさらばしたーーいッ!
私は叫び出したいのをグッと堪え、チラッとグレンを見てみると彼は既に戦闘モードに入っていた。真剣な表情で隣の部屋に続く扉の側で息を殺し、どう動くか思案している。
「グレン、どう?」
「静かに。人の話し声が聞こえます」
「え、本当に?」
「えぇ。二人……いや、三人ですね。比較的若い男の声です」
なんですって? 三人組の若い男の声といえば……アース、キン、チョウじゃない? じゃあ、親玉であるガマエルはここにはいないのだろうか?
「……グレン、私にも聞かせてくれる?」
私は扉のすぐ側に近寄って耳を澄ましてみる。
すると、聞き慣れた害虫三人組の馬鹿笑いする声が聞こえてきたのだった。
「せーーっの、乾杯ーーーー♡ いやぁ、反王室の印刷会社にイング嬢の盗撮写真売ったら思いの外ぼろ儲けできたわ~~~~!
しっかし、あのヤリマンクソビッチのせいでどうなる事か思たけど、やられたらやり返すのが俺らの本懐やで……なぁ、キンにチョウ?」
「「そうだそうだ~~、やられたらやり返す~~♡ 僕達の本懐~~、アースに賛成~~♡」」
この声は間違いない。
アース、キン、チョウの声だ。あんの害虫共……私が近くにいないと思って言いたい放題言ってやがるなぁぁ!!
くっ、駄目……我慢よ、イングリッド! ここは耐えるの! 我慢しなくちゃっ!
「……ハッ!」
私は無意識のうちに錆びた鉄の扉に思わず爪を立ててしまったらしく、キィィィィ……という小さな耳障りな音で我に返った。
「プハァーーーー♡ これは勝利の酒やッ! さぁ、全部飲み干すでぇぇぇぇッ!」
「「飲み干そう、飲み干そう~~♡ 勝利の美酒~~~~♡」」
コンッ!と空瓶を床に置いたような音が響いた後、続けてアースのギャハハッという下品な笑い声が建物内に響き渡った。
「いんや~~、ほんまあのヤリマンクソビッチとセックスせんで良かったわ~~!
ショーに来てたVIP客、皆アイツの餌食になってもぉたやん! ほんま、なんなんあれ? なんであの女とセックスした奴は死んでしまうん? アイツの雌穴は地獄に直結なんか? 地獄耳ならぬ地獄穴やで地獄穴っ! アイツの雌穴は性病移されるより酷い穴やんなぁ~~? それやったら俺は梅毒なって死ぬ方がマシじゃーー、ギャハハハハハハハッ!!!!」
………………プチン。
プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチ…………ブッッッッッッッッッッツン‼︎‼︎‼︎‼︎
「……………………殺す」
あんの害虫ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
黙って聞いてりゃいい気になりやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……もう我慢ならん!!
私は感情をむき出しにしながら、部屋の隅に置かれていた肥溜めを二つ手に取った。重いであろうそれをゴリラのように軽々と担ぎ、扉へと向かう。
「イ、インジー……そ、それは––––」
バァンッ!と躊躇なく扉を蹴破った私。
それを後ろから止めるグレンの声。しかし、私は耳を貸さずにズンズンと建物の中心へ突き進んだ。
「殺す……殺す……殺す……殺す」
私は害虫を駆除する為だけのキリングマシーンと化していた。もう誰にも私を止められない。そして、怒りのまま両手に持っていた肥溜めを奴等がいるであろう場所に向かって投げ付けてやった。
「調子こいてんじゃ……ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ‼︎‼︎」
イングリッド必殺、肥溜めインパクト!!
「とくと味わいなさいッ、これが私の怒りじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「「「え……? ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎‼︎‼︎‼︎」」」
カッポーーーーーーン、ビチャビチャビチャッ!
ものの見事に肥溜めが害虫共に直撃し、廃工場内に茶色の雨が降り注いだ。
「グェェッ、オェッ!!」
三人は自分達がした汚物を頭から被る羽目になり、あまりの激臭に鼻が捩れ、その場で気絶してしまったのであった。
応援ありがとうございます!
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