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しおりを挟む手を握ったり開いたりを繰り返し動く事を確認。
上体を横に捻ったり、前屈する様に前に伸ばすも痛みは無し。
身体には特にこれといった痛みは無いが異様に頭だけがズキズキする。
ゆっくりとした動作でベッドから足を下ろし床に両足を付けて立ち上がる。
立てる…。
今の状況を把握する為に此処がどこで、何が起きてるのか確認しなくちゃ。
痛む頭を軽く手でおさえながら、まず少し離れた所にある鏡の前まで歩を進め自身を映し目を丸める。
艶がある綺麗な黒髪に、大きくクリッとした愛らしい形をした澄んだ青い瞳にほんのり色付くふっくら唇…女の子の様な容姿をした…14、5歳の子が鏡に映し出され思わず目を顰めた。
「誰、だよこれ」
俺は確か…20代平凡男性だったはずで、出勤前に……
ブワリと一気に何があったのか鮮明に思い出し、あの強烈な痛みや冷たくなっていく己の身体の感覚すら浮上し思わず両腕で抱き締めるように抱え込みその場に蹲る。
死んだ、のか。じゃあこれは…なんだ?
カタカタ、蘇る記憶に身体を震わせながら考えるも今の自分が誰で、なんの為にここに居るかも分からない。
じわりと視界が歪む。
恐怖に呑まれ、ぽたりと涙がこぼれ落ちた瞬間…ガチャリと扉の開く音が聞こえビクリと肩が竦む。
少し静寂の間が流れたあと、扉側から何かが近付いてくる気配を感じる。
ギュッと目を瞑り、己の身を更に縮こませるように丸めれば背中にそっと暖かい温もりを感じ思わず顔を上に上げれば心配そうに此方を見るお爺さんと目が合った。
「トワリス、どうしたんじゃ…もう起き上がっても大丈夫なのか?」
「だ、れ…ここは何処なの、俺はトワリスじゃない、」
零れた涙はぽろぽろと止まること無く溢れ、頬を濡らしぱたぱたと床に落ちシミを作る。
「……何を言うておるんじゃ、お主記憶が…」
お爺さんは戸惑った様に眉を下げながらも手を止めず優しく背中をさすってくれるお陰で気持ちが少し落ち着いてきた。
ズッ、と鼻をすすり袖で涙を拭く。
何時までも泣いてビビってる場合じゃない。
「お爺さん、"俺" に何があったの?」
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