【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶

文字の大きさ
4 / 59

4ただの他人の空似です

しおりを挟む
「困った」
「なんてことだ」
「帰りたい。いや...もし命の保証があるなら帰れなくていいのかも」

ガルーダ、フェニックス、わたしの三人は、それぞれの思惑の中でいっせいに途方に暮れた。
ぞろぞろ私たちの後をついてくる兵たちも、
「他人の空似だってよ」
「こんなそっくりなのにか?」
「とろくさそうだし、平凡な顔立ちだし、シームルグじゃないだろう。もしそうだったら今頃俺たちは石になってるさ」
「記憶がないだけじゃないのか?」
好き放題、がやがやと言っている。

私とシームルグが同じ顔なら、シームルグだって平凡な顔立ちだっていうのよ。全く!!

「そもそも、お前がシームルグだと認めれば早いんだよ」
ため息をつき、睨みつけるフェニックスに、目を爛々とさせてわたしは聞いてみる。
「ちなみに全く別人ですけど、認めたらどうなりますか?」
「そんなものすぐ死刑で終わりだ」
「別人です。他人の空似です」

ぜんっぜん早くない!
なんてものに似てしまったんだ。
平凡な死刑になる顔立ちなんて似なくていい!

「何度も言いますが、私は別人です。その場合これからどうしたらいいんでしょう?」
「大昔に異世界人が、迷い穴に潜りこんでやってきてしまうことがあったとは聞いたことがある。そのものは文明を変えるほどの発展を我が国にもたらすので大切に扱ったと記憶している。異世界人なら大切に保護だと思います」
ガルーダは、そこで一旦言葉を切り私をみる。
「ただ、そう言いつつも、あまりにもシームルグとそっくりでその慣例が認められるか戸惑っているんです」
「そうですか...」

ガルーダさんは冷静でいい人そうだけど...
それを聞いて、私は詰んだなと目を閉じた。

目の前の街の風景は、どうみても自分の生きてきた世界より発展しているもの。
少なくとも飛行機とかドローンとかではなく、彼ら自身が飛んでいるわけだし、電化製品とかこの世界に何かないものがあったとして、こんなものがあると便利ですと言ったとしても、24歳ただの事務員のわたしに何ができる?
私にはなんの知識もない。
ファンタジーな世界にあるような能力もない。
わたしにできるのはせいぜい電球交換までだわ。

「先にお伝えしておくと、わたしの住んでいた世界よりこちらの方が発展していると思います。少なくとも、浮かんでいる城はみたことないですし」

それを聞いてガルーダは目を見開き、わなわなと震えるようにわたしに聞く。

「そんなことをして、どうやって!どうやってソラリクス様をお守りするのだ?」
「どうやってって?ええと、昔ならお殿様を守るのにお堀があって水を張って入らないように侵入を防いだり、城壁に返しをつけてよじ登らないというか、突き落とせるようにしたり、鉄砲穴とか石を落として兵を殺してたんだと思いますよ。」
わたしは持っている歴史の知識をフル動員して話す。
「水!突き落とし!鉄砲!!石で殺すのか!なんと残忍な」
フェニックスは、聞くに耐えないと顔を背ける。

おい、歴史上の人物にそっくりだというだけで人を殺そうとしたあんたたちが言うか??

突っ込みたい気持ちを抑えてフォローのように今の時代の話を付け加える。

「今は...総理大臣といって、国を守るトップみたいな人は、鉄砲でも通過できないバッグを持った大勢のここにいる兵みたいな人たちに守られたり、家から地下を通路にして国会議事堂っていう、話し合いがされるところへ移動して敵から攻撃されないようにしていると思うわ」
「地下!!地下っていうと地面の下か??」
フェニックスが信じられないような顔をする。

何かおかしなことを言ったかしら?

「地龍はどうやって抑える?モグラ族は?あいつらを怒らせたら、街のあちこちを掘りまくるから家が傾くぞ」
「寝ている地龍を怒らせたら、ひとたまりもありません」
「異世界人、恐るべしだな」

ガルーダとフェニックスの顔が恐怖に歪む。

「えっ!わたしが住んでる日本はまだ掘らない方なんですよ。海外だと地下5階ぐらいは当たり前にあったりするし...というか、地龍はいないわ。モグラはいてもモグラ族はいないと思う。モグラ族って、どんな生き物か知らないけど...」

巨大ネズミを想像してぶるっと震える。
ゴミ屋敷で走り回るネズミやその死骸とどれほど戦ったことか。

「いや、それだけじゃないぞ。その鉄砲というのはなんかの攻撃なのだろう。それをバッグで守る発想がよく分からない。盾ではいかんのか?」
「盾みたいなのを持っている人たちもいるわ。多分そっちの方が多いと思うわ」
機動隊が持っているような防御盾はよく見る。
「窓がついて、ちゃんと様子を見ることもできるし、透明のものもあるって聞いたことがあるわよ」
「窓!!」
「透明!!」
二人が声を合わせる。
「い、いや一般的なことしか知らないわよ。テレビに映ってるニュースでしか見たことがないし」
「ニュース??それはなんだ」
「テレビに映る?なんのこと言っている?」

どこまでもわたしと彼らの話は噛み合わない。
彼らはこの世界でどんなことが起こっているのかは、空間に画面を出して、その国々が提供するものをみるのだという。

「空間に画面を出せる方がすごくない?だって電気いらないのよ??」

そんな私たちの言い合いを見ている兵たちも、唖然とした顔で私を見つめている。

なんかおかしなことを言っている女がいる

そんな扱いに変わってきた。

「とりあえずソラリクス様に連絡して判断を仰ぐか?」
「だが、ソラリクス様に冷静な判断が出来るだろうか?愛する大聖女様が殺されてしまったんだぞ」
二人のこそこそ声が耳に入る。
「えっ?ソラリクスの子孫もいるの?」
わたしは思わず二人の会話に混ざった。
絵の中の子孫たちが活躍しているのだ。
確かに、ソラリクスの子孫だって活躍しているのかもしれない。
「不敬だ!様をつけろ」
「うっ!失礼しました。その、ソラリクスさまの子孫はいるの?じゃなかった。いらっしゃるのかしら?」
わたしは仕方がないとため息をつきながら聞いてみる。
「それを知ってどうするおつもりですか?」
ガルーダは先ほどとは違う少し冷えた声で聞いてくる。
わたしは思わず、言い淀んだ。

「え、どうするか??どうするかとか考えてないかも。
ただ、二人が絵の中の人たちの子孫なら、他にも子孫がいるのかもしれないなあって思っただけ。知らないでいいなら知りません。というか、知りたくないわ。世の中には知らない方が幸せなことなんて腐るほどあると思うの」

わたしは、二人の剣呑とした雰囲気に

知りたくない知りたくない。
くわばらくわばら

と手をブンブン振って拒否をする。
好奇心は猫を殺すっていうけど本当だわ。
余計なことを聞いちゃった。

「ソラリクス様の前にあなたを出したら...どうされるでしょうね」
「そりゃ、似てる奴が現れるだけで首を刎ねるんじゃないか?」

ガルーダがため息をつくように私をみると、フェニックスがそれに悪ノリしたような返答をした。

「本当にただのそっくりさんなんですよ。でも、仮にあなたたちに、ここでさよならと言われても、ここの世界で私は生きていけるのかしら?
その、私でもできそうな仕事ってこの世界にはありますか?パソコンならちょっとは使えると思うのだけど」
「パソコン??なんだそれは?」
「文字を機械に打ち込んで、それを相手の機械に送ったり、いろんな資料をまとめたり、計算したり...ないのかしら?そういうのは?」
「そんなのは賢者の仕事だろう。そんな機械に起こさなくても、一瞬で言葉を文字にするし、表にするし」
「なんですか!そのチートな能力は!」
私は唖然とする。当たり前のように語るけど、それ当たり前じゃないからね。

「チートって何かは分からないが、すごいから賢者だし、それらをまとめてきた大賢者様はさらにすごいから大賢者なんだろう」
呆れたようにフェニックスはため息をつくが、そろそろわたしの無能ぶりに気づき始めたのか、少しだけフレンドリーになってくる。
「お前がシームルグのそっくりさんだっていうのは本当かもな。少なくとも月光神じゃない。厄病神っていうなら同意するがな。」
「厄病神っていわれると、言い返せませんけど、最初から言っているようにわたしはただのそっくりさんです。」
わたしは、ほっとしたものの肩を落とす。

「パソコンも要らないなら、あと何が出来るかしら。生活費とかどのくらいかかるんだろう。家は?敷金礼金が要らなくて月々わたしが働いたとして払えるところってありますか?」
わたしは二人をじっと見たが、ガルーダは首を振った。
「あなたが普通に一般に紛れて働くのは無理ですよ。この世界中の人たちがシームルグを知っている。そして彼女が復活しないか恐れを抱いている。そっくりさんだとしても、あなたが何もできない人だと知っても無理でしょうね。何もできないうちに殺されるのが関の山です」

ため息をつきながら「はぁーっ」と語られる言葉にひゅっとわたしは息を飲み込んだ。
なんで殺されるのが前提なのよ!
ああ、財産放棄して次の職場を探せばよかった。
わたしが元の世界で行方不明になったって、アパートの滞納で夜逃げしたと思われるのが関の山じゃないの!!
職場も無くなった今、探してくれる人すらいないわ。

「やっぱりソラリクス様に一度お目通りさせるしかないんじゃないのか?隠すこともできないし、隠す義理もないしな」
フェニックスも渋い顔をする。
「ですが、冷静に判断されないとそっくりな異世界人に手をかけたとなれば、ソラリクス様への批判の声がまた大きくなってしまうぞ」
「でもシームルグにそっくりだぜ。うまいこと言いくるめれば手をかけたって...」
二人のこそこそ声がわたしの耳に入る。

「誰とでも会えと言われたら会うわよ。でも、言いくるめずに手をかけないようになんとかしてちょうだい!」
わたしは思わず叫び声を上げた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

処理中です...