【本編完結】【R18】新米冒険者くんの溺愛〜高嶺の花である私が夜は年下男子にひんひん泣かされているだなんて、絶対誰にも知られたくない!〜

鈴木 桜

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第4章 普通のデートがしてみたいだなんて、絶対誰にも知られたくない!

第14話 眠れない夜には(※)

「エミリーさん」
「ん?」
「いま、何考えてます?」
「え?」

 クレアちゃんが、ガッと私の手を握った。

「いらんこと考えてますね⁉」
「いらんこと?」

 必死の形相で、クレアちゃんが私を見つめている。

「私のせいで、ごめんなさい。でも、エミリーさん、一人で悩んじゃダメですよ」
「ん、でも……」
「エミリーさんは、一人で悩んだら駄目なタイプです。絶対に!!!!」
「わ、わかった」

 力強く言われては、とりあえず頷くしかない。

「どうせ、『私はサイラスくんのこと何も知らない!』って考えてたんでしょ!」
「うっ」

 まさに図星で、私は言葉を詰まらせた。どうやら、彼女には全て筒抜けらしい。

(まさか、思考を読み取る能力でもあるのかしら……?)

 この世界には、そういう魔法もあるらしいと噂で効いたことがある。

「エミリーさん。私、別にそんな特別な能力なんか持ってませんからね」
「えっ!」

 また思考を読まれた。

「ぜんぶ、顔に出てますから」
「うそ」
「ほんとです。……くぅぅぅぅぅ。グーです!」

 今度は拳を握って唸ったかと思えば、親指を立てたクレアちゃん。

「エミリーさん、そういうとこ、最高にグーです!!」
「あ、ありがと」
「で、本題に戻りますけど」

 クレアちゃんが、きゅっと表情を引き締めたので、私も居住まいを正した。

「エミリーさん、サイラスくんと付き合い始めて、どれくらいですか?」
「えっと、1ヶ月と2週間くらい?」
「ですよね。そんな短期間なんですから、お互いのことを知らなくて当然です」
「そうなの?」
「お見合いなどの結婚を前提としたお付き合いであれば別ですが、今回のケースは、そうです」
「普通なの?」
「はい。お付き合いを始めたばかりの男女が、お互いのプライベートに関することで深い話をするのなんか、普通はないと思いますよ?」
「へえ」
「だいたい、聞かれなきゃ答えないでしょ? エミリーさんだって」
「あ。それは、そうだね」

 目からウロコだ。確かに、私から彼に関する何かを尋ねたことはない。なら、彼が話してくれないのは当たり前のことだ。私だって、聞かれていないのでプライベートなことを話した記憶もない。

「付き合いたてなんて、デートしてキスしてセックスするもんです。それ以外のことは、もっと時間が経って、少しばかり熱が引いてからするもんです」

 身も蓋もないコメントである。

「それじゃあ、もうちょっと時間が経ってから、訊けばいいかな?」
「それもまた、違いますね。ケースバイケースです」

(なんと)

 あまりの難しさに眉を寄せた私に、クレアちゃんが苦笑いを浮かべている。

「エミリーさん。恋愛だからって、難しく考えてませんか?」
「え?」
「恋愛ったって、人と人ですよ。仕事なら、こうやってちゃんとコミュニケーションとれてるじゃないですか」
「う、うん」
「いつも通り、話せばいいだけですよ」
「いつも通り……」

 オウム返しで呟いた私に、クレアちゃんは再び苦笑いを浮かべた。

「とにかく、一人で悩まないように!」
「……はい」

 返事をしてみたが、私の不安は消えなかった。
 
(飽きたら、捨てられる)

 だって、セックスしかしていない。好きだと言われたけれど、それだってどこまで信用できるのか。相手は18歳の若者、しかもイケメン。すぐに新しい恋を見つけるだろう。

(でも、それまでは。……初めての恋愛を楽しんだっていいよね?)
 

 * * *


 それから一週間は一人の時間を満喫した。
 お風呂はゆっくり入っているとサイラスくんが乱入しようとするので、すっかりカラスの行水だった。今日はバスタブに湯を張って、お気に入りの入浴剤も入れた。食事は適当に済ませて、ソファでゴロゴロ過ごして。積んであった未読の本を読み漁る。クレアちゃんに借りた今月号の『en・en』もしっかり熟読した。

 しかし。

「……寝よう」

 一人の夜8日目、ついに時間を持て余し、いつもよりも早くベッドに入ることになった。

「……」

 照明を消した部屋の中、ベッドに潜り込む。ところが、眠気は一向にやってこない。

「……こんなことって、ある?」

 馬鹿みたいな話だ。恋人と離れ離れで寂しくて眠れないとは。

(高嶺の花として、あるまじき事態だわ……)

 このままでは、明日には寝不足の身体をひきずって出勤することになってしまう。

「……背に腹は代えられない」

 何かに言い訳するように言ってから、私は一台の端末を取りだした。魔石をたくさん消費するので、めったに使わない音声通話用の魔導通信機だ。

「……いやいやいやいや。たった1週間よ? 我慢しなきゃ」

 自分に言い聞かせる。

「……ちょっとだけ」

 結局、我慢はできなかった。端末を立ち上げて操作する。

『第9ギルドより銀の翼、第2306728号クエスト受注を確認しました。担当、サイラス・エイマーズ』

 職場の端末から自分の端末に、こっそりとデータを移しておいた録音を再生する。

「ん」

 その声を聞くと、胸がぎゅっと締め付けられた。

『担当、サイラス・エイマーズ』

 もう一度再生した。また胸がきゅっと締め付けられて、今度はあらぬ場所までキュンと反応してしまう。

(わたし、最低だ……!)

 不在中の恋人の声を聞いて発情するとは。

「ううぅぅぅ」

 罪悪感に唸りながらも、やっぱり私は我慢できなかった。

「ちょっとだけ」

 自分に言い訳を重ねてから、下着の上からそこに触れる。

「んっ」

(濡れてる)

 彼の声を聞いただけで、そこはしとどに蜜を溢れさせていた。
 恐る恐る下着の上から指を滑らせると、クチュクチュと水音が響いて。指先からも耳からも、甘い痺れが広がっていく。

「んっ、あっ」

(きもちいいところ、は、……クリトリス……っ)

 敏感なそこに、そっと指で触れてみた。

「あぁっ!」

 急な刺激に驚いて、思わず指を離してしまった。下着越しに触れていただけだというのに、しっとりと湿っている指を見て、頬が耳が熱くなる。

「んっ、ぁ……」

 震える指で、もう一度端末を操作した。

『担当、サイラス・エイマーズ』

「ぁ……っ!」

 その声を聞きながら今度は下着の中に手を入れて直接触れて、必死でソコにを擦った。

「あっ、あっ、……んんんんっ!」

 腰がビクンと大きく震えて。

「あっ、はっ、んん」

(私、自分で触って、い、イッちゃった……!)

 諸々の罪悪感に苛まれながらも、ようやく眠気が訪れたので、ほっと息を吐いた。

「サイラスくん……」

 呼んでも返事はない。それでも呼ばずにはいられなかった。

(ちゃんと、一人でも寝れるわよ)

 そう、心の中でひとりごちたわけだが。


 この方法で眠りにつくことができたのは、この日から数えて3日だけだった──。
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