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『欲張りな〝さいごのおねがい〟』
いつものように連絡先から彼の電話番号をコールする。今どきチャットアプリで十分なのに。ただ彼の声を聴きたいが為であったが。
(それももう、終り、か)
「もしもし? あ、尚紀?」
「ああ」
「どうかした? って、そういうのは野暮か。いつものアレだよな。その……最近呼び出し多いけど、もしかしてさ、溜まって……あ~、なんでもないです!! いつものホテルだよな! ああ、すぐ行くよ」
ピ。
思わず携帯をベッドに取り落とす。彼が面倒だとおもうほど、俺ってそんなに呼び出してた? あまつさえ欲が溜まっているなんて勘違いさせるほど?
かぁぁと赤面してしまう。一度熱を持って頬はなかなか引いてくれない。今更照れようが、今までとんでもなくはしたない誘いを繰り返してるくせに。手であおいでもなかなか微熱は引いてくれない。
(は、恥ずかしい…………)
最後ぐらい、と俺はいつものように、いや、いつも以上に気合をいれて準備していた。ローションもゴムも普段以上の数量。おまけに……、そっとズボン越しに腰骨を撫でる。
(こんなの穿いてたら……はしたないって思われちゃう、かな)
しかもナカまで自分で準備しとくとか。初めてやったから、うまくできている自信がない。いままでセフレのくせに、こんなこともしてなかったんだよな。配慮が足りてなかった、俺。体を拓いて貰えるのは、純粋にすごく気持ちよかったけど、彼に面倒をかけていたと思うといたたまれない。
たしかに俺、欲求不満なのかも。紫君といると、俺はどこまでも貪欲になってしまう。だから。だから、今日だけ。間違っても、今日だけなんだ。
最後のセックスくらい、俺も素直になっていいかな。
待ち時間が思ったより長かった。というのも紫君は課題の終わらない後輩を手伝っていたそうで。なんて親切なんだろう。こんな時まで彼はやっぱり俺以外の誰かを優先するのか。もはや諦観。されど嫉妬は募るばかり。その顔も名前も知らない後輩にさえ敵意がわいてくる。
(だめだ、しっかりしろ! そもそも彼には本命がいるんだ。このぐらい慣れなきゃ……紫君の友人なんてやってけないのに)
自分を叱咤し彼と向き合う。やっぱりいつ見ても、惚れ惚れするほど格好いい。
「あの、紫君。一緒に」
「ああ~~~~つっかれたああああ!! やあっと尚紀を補充できる」
「へ?」
どさり。なぜかベッドに着衣のままで押し倒される俺。ごろん、と寝転ぶのはいいが、いいのだがしかし――これってなんですか?
「わり。少し寝かせて」
「あ、うん」
「って、カラコンとらなきゃか……めんどくせー」
まさかここでお預けとは。でも、なんだかいつもより紫君、疲れてる気がする。目の下にはクマもあるし。こころなし、元気もない?
洗面台でコンタクトを外した紫君が戻ってくるが、やはり体勢は変わらず。
大人しくされるがままになっていると、むぎゅっと、まるで抱きまくらでも抱きしめるように紫君に抱きつかれる。これはこれで嬉しいけど……事前準備がばっちりな俺には辛すぎる。モゾモゾと忙しない俺。下半身を万が一にも刺激しないように、彼と距離をとろうとする、が。
「んん。なあんか、尚紀、顔赤くない? それにいつもよりいい匂いする……。すぅはぁ。もしかしてシャワー浴びた?」
「んぐ!?」
「はは、わざわざキレイにしたんだ。そんなの気にしなくてもいつだって尚紀は綺麗だよ」
よしよしと俺の頭を撫でる彼。本気で眠いのか、まぶたがうとうとと、閉じかけている。
(ええ!? 紫君、どうかし、た? なな、なんか普段と様子が違うし、なんかいつもより緩んでいるっていうか……)
ドキドキしてる心臓。間違っても俺が綺麗なんてありえない。おかしなジョークだ。なのに、嬉しいと思ってしまうなんて。こんなところで計画が破綻するとは思わなかった。いいやまだ、完全に破綻したわけではない。少し狂いが生じただけだ。まだここからえっちにだってもつれこめ……。
「むにゃむにゃ。……尚紀、…………してる」
る、わけないか。
(ふふ、かわいー寝顔)
つん、とその頬をたわむれにつつく。大の男でもここは柔いんだな。その感触を楽しんでいたら、俺の気も緩んでしまった。うっかり、こんな言葉をこぼす程度には。
恋しい君の姿も見納め。うれしやかなしや、それでも幸せだった。君との毎日は輝いていて、また色のない日常に戻るのはちょっと怖い。だけど、それで君が笑っていられるなら。俺の不幸を代償に、君の幸せが守られるなら。どれだけだって差し出せる。
それでも胸の内はあまりに切ない。この愛しい気持ちもいつかは思い出になってしまうのか。そう考えると余計に感傷的な気分になってしまう。
「今日でお別れ、だな」
誤算だったのは――瞬間的に空気が凍てついたから。
先程まで緩んでいた気配はどこにもなく、ぱちっと目を開けた紫君。彼は完全に覚醒していた。
「なにそれ、どういうこと」
紫君は真剣だ。
こんな急展開、誰が思ったか。彼の耳に届いてしまった発言。聞かれてしまったからには、もう取り消せない。俺はまだ、十分な覚悟なんかできていないのに。
(それももう、終り、か)
「もしもし? あ、尚紀?」
「ああ」
「どうかした? って、そういうのは野暮か。いつものアレだよな。その……最近呼び出し多いけど、もしかしてさ、溜まって……あ~、なんでもないです!! いつものホテルだよな! ああ、すぐ行くよ」
ピ。
思わず携帯をベッドに取り落とす。彼が面倒だとおもうほど、俺ってそんなに呼び出してた? あまつさえ欲が溜まっているなんて勘違いさせるほど?
かぁぁと赤面してしまう。一度熱を持って頬はなかなか引いてくれない。今更照れようが、今までとんでもなくはしたない誘いを繰り返してるくせに。手であおいでもなかなか微熱は引いてくれない。
(は、恥ずかしい…………)
最後ぐらい、と俺はいつものように、いや、いつも以上に気合をいれて準備していた。ローションもゴムも普段以上の数量。おまけに……、そっとズボン越しに腰骨を撫でる。
(こんなの穿いてたら……はしたないって思われちゃう、かな)
しかもナカまで自分で準備しとくとか。初めてやったから、うまくできている自信がない。いままでセフレのくせに、こんなこともしてなかったんだよな。配慮が足りてなかった、俺。体を拓いて貰えるのは、純粋にすごく気持ちよかったけど、彼に面倒をかけていたと思うといたたまれない。
たしかに俺、欲求不満なのかも。紫君といると、俺はどこまでも貪欲になってしまう。だから。だから、今日だけ。間違っても、今日だけなんだ。
最後のセックスくらい、俺も素直になっていいかな。
待ち時間が思ったより長かった。というのも紫君は課題の終わらない後輩を手伝っていたそうで。なんて親切なんだろう。こんな時まで彼はやっぱり俺以外の誰かを優先するのか。もはや諦観。されど嫉妬は募るばかり。その顔も名前も知らない後輩にさえ敵意がわいてくる。
(だめだ、しっかりしろ! そもそも彼には本命がいるんだ。このぐらい慣れなきゃ……紫君の友人なんてやってけないのに)
自分を叱咤し彼と向き合う。やっぱりいつ見ても、惚れ惚れするほど格好いい。
「あの、紫君。一緒に」
「ああ~~~~つっかれたああああ!! やあっと尚紀を補充できる」
「へ?」
どさり。なぜかベッドに着衣のままで押し倒される俺。ごろん、と寝転ぶのはいいが、いいのだがしかし――これってなんですか?
「わり。少し寝かせて」
「あ、うん」
「って、カラコンとらなきゃか……めんどくせー」
まさかここでお預けとは。でも、なんだかいつもより紫君、疲れてる気がする。目の下にはクマもあるし。こころなし、元気もない?
洗面台でコンタクトを外した紫君が戻ってくるが、やはり体勢は変わらず。
大人しくされるがままになっていると、むぎゅっと、まるで抱きまくらでも抱きしめるように紫君に抱きつかれる。これはこれで嬉しいけど……事前準備がばっちりな俺には辛すぎる。モゾモゾと忙しない俺。下半身を万が一にも刺激しないように、彼と距離をとろうとする、が。
「んん。なあんか、尚紀、顔赤くない? それにいつもよりいい匂いする……。すぅはぁ。もしかしてシャワー浴びた?」
「んぐ!?」
「はは、わざわざキレイにしたんだ。そんなの気にしなくてもいつだって尚紀は綺麗だよ」
よしよしと俺の頭を撫でる彼。本気で眠いのか、まぶたがうとうとと、閉じかけている。
(ええ!? 紫君、どうかし、た? なな、なんか普段と様子が違うし、なんかいつもより緩んでいるっていうか……)
ドキドキしてる心臓。間違っても俺が綺麗なんてありえない。おかしなジョークだ。なのに、嬉しいと思ってしまうなんて。こんなところで計画が破綻するとは思わなかった。いいやまだ、完全に破綻したわけではない。少し狂いが生じただけだ。まだここからえっちにだってもつれこめ……。
「むにゃむにゃ。……尚紀、…………してる」
る、わけないか。
(ふふ、かわいー寝顔)
つん、とその頬をたわむれにつつく。大の男でもここは柔いんだな。その感触を楽しんでいたら、俺の気も緩んでしまった。うっかり、こんな言葉をこぼす程度には。
恋しい君の姿も見納め。うれしやかなしや、それでも幸せだった。君との毎日は輝いていて、また色のない日常に戻るのはちょっと怖い。だけど、それで君が笑っていられるなら。俺の不幸を代償に、君の幸せが守られるなら。どれだけだって差し出せる。
それでも胸の内はあまりに切ない。この愛しい気持ちもいつかは思い出になってしまうのか。そう考えると余計に感傷的な気分になってしまう。
「今日でお別れ、だな」
誤算だったのは――瞬間的に空気が凍てついたから。
先程まで緩んでいた気配はどこにもなく、ぱちっと目を開けた紫君。彼は完全に覚醒していた。
「なにそれ、どういうこと」
紫君は真剣だ。
こんな急展開、誰が思ったか。彼の耳に届いてしまった発言。聞かれてしまったからには、もう取り消せない。俺はまだ、十分な覚悟なんかできていないのに。
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