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『絶交宣言』
「わ……」
「わ?」
「別れてほしいんだ」
「っ!」
じっとりと汗をかき、視線を床に固定しキョロキョロと落ち着かなく動かしながら。それでも何故か、俺の口は引かない。言葉を撤回することすらせず、続けていた。
「それって、セフレを解消しろってことだよな」
「うん」
「なに、友達に戻りたくなった?」
「違う。戻りたくない。友達になんか、もう、……戻れないよ」
ぽたり、涙の跡が床にシミを作る。
思っていなかった言葉が次々に飛び出る。あれ、あれれ、おかしい。こんなこというつもりじゃ……!?
ああ、そっか。俺は本心、気づいていたんだ。全部見ないふりしていた、だけで。俺には、彼の未来をただの友人として見守ることなど到底できない。それを、心のどこかでは、たぶん分かっていたのだ。だから言葉はすらすら出てくる。
「なにそれ」
「ごめん。ほんと悪い。身勝手だけど別れさせてほしい。今までほんと、ありがとう」
「ちょっと、え、待って? なに、俺、今、別れ話されてんの。なんで?」
紫君は未だ混乱の只中、といった有様。その様子に、立ち上がってはいるが、それでも意識ははっきりしていないのだろうかと思う。
「うん、そうだね。俺、別れたい。金輪際、君の顔も見たくもないかな」
(俺以外の人と幸せになる、そんな君の幸せそうな顔なんか、耐えられないんだよ)
どうか分かって。俺の愛しい人。
「え、普通にやだ。むり。むりだって、そんなの。なんで? なんでだよ。俺、なんかした? 君が嫌がるようなことなんか、した覚え、ないんだけど」
(ちがうよ。君はそんなことしてない。悪いのは全部俺なんだ。君はなにも、悪くない)
これは俺の願い。君と一緒に笑う、その誰かの存在に耐えられない、俺が望んだこと。
本当は遠くからでも祝いたい。でも、きっと俺は呪ってしまうだろう。
好きで仕方ないけど彼を自分のエゴで縛り付けたくない。これは俺からの、ささやかなプレゼントだよ。俺という楔から解放する機会を、君に。
「さよならって、せめて笑顔で別れたいんだ。だから、俺と――――絶交してください、紫君」
(君の幸せを邪魔しないように)
「ばかいうなよ」
喜ばれると思った。「やっとかよ」とかさっきみたいに「マジつっかれたああ」とか、そんな。肩の荷が下りることを喜ぶ彼が目に浮かんでいたというのに。目の前にいるこれは、なんだ。いや、誰だ。これは俺の知ってる……、
「おいおい、そりゃないよ。いくらなんでもセフレをここまでその気にさせておいて、自分だけ逃げようとかさぁ」
ベッドの端においていた手。その指に指を絡ませられる。
「あまつさえ、簡単に切り捨てられると思われるなんて……俺をなんだと思ってたの。ねぇ、尚紀クン?」
そうして彼は、ひどく窮屈に俺の手を捕まえながら、俺の指にキスを落とした。
これは俺の知ってる、一式紫という人間じゃない。
誰より思慮深い瞳に陰りがみえる。
仁王立ちの彼。不穏な雰囲気をまとわせている。
顎をくいっと上に向けられ、彼と目と目が合う。俺の顔を覗き込む彼。その目には、俺の考えを検めようという意思がありありと宿っているかのように見えた。
最後に笑顔をみせようとして、失敗して崩れた俺の顔。それを間近で見られる。
俺の苦い胸中はそのままに、彼の冷気が降りかかる。
(なんだろう。どうしてこうなったんだっけ?)
「わ?」
「別れてほしいんだ」
「っ!」
じっとりと汗をかき、視線を床に固定しキョロキョロと落ち着かなく動かしながら。それでも何故か、俺の口は引かない。言葉を撤回することすらせず、続けていた。
「それって、セフレを解消しろってことだよな」
「うん」
「なに、友達に戻りたくなった?」
「違う。戻りたくない。友達になんか、もう、……戻れないよ」
ぽたり、涙の跡が床にシミを作る。
思っていなかった言葉が次々に飛び出る。あれ、あれれ、おかしい。こんなこというつもりじゃ……!?
ああ、そっか。俺は本心、気づいていたんだ。全部見ないふりしていた、だけで。俺には、彼の未来をただの友人として見守ることなど到底できない。それを、心のどこかでは、たぶん分かっていたのだ。だから言葉はすらすら出てくる。
「なにそれ」
「ごめん。ほんと悪い。身勝手だけど別れさせてほしい。今までほんと、ありがとう」
「ちょっと、え、待って? なに、俺、今、別れ話されてんの。なんで?」
紫君は未だ混乱の只中、といった有様。その様子に、立ち上がってはいるが、それでも意識ははっきりしていないのだろうかと思う。
「うん、そうだね。俺、別れたい。金輪際、君の顔も見たくもないかな」
(俺以外の人と幸せになる、そんな君の幸せそうな顔なんか、耐えられないんだよ)
どうか分かって。俺の愛しい人。
「え、普通にやだ。むり。むりだって、そんなの。なんで? なんでだよ。俺、なんかした? 君が嫌がるようなことなんか、した覚え、ないんだけど」
(ちがうよ。君はそんなことしてない。悪いのは全部俺なんだ。君はなにも、悪くない)
これは俺の願い。君と一緒に笑う、その誰かの存在に耐えられない、俺が望んだこと。
本当は遠くからでも祝いたい。でも、きっと俺は呪ってしまうだろう。
好きで仕方ないけど彼を自分のエゴで縛り付けたくない。これは俺からの、ささやかなプレゼントだよ。俺という楔から解放する機会を、君に。
「さよならって、せめて笑顔で別れたいんだ。だから、俺と――――絶交してください、紫君」
(君の幸せを邪魔しないように)
「ばかいうなよ」
喜ばれると思った。「やっとかよ」とかさっきみたいに「マジつっかれたああ」とか、そんな。肩の荷が下りることを喜ぶ彼が目に浮かんでいたというのに。目の前にいるこれは、なんだ。いや、誰だ。これは俺の知ってる……、
「おいおい、そりゃないよ。いくらなんでもセフレをここまでその気にさせておいて、自分だけ逃げようとかさぁ」
ベッドの端においていた手。その指に指を絡ませられる。
「あまつさえ、簡単に切り捨てられると思われるなんて……俺をなんだと思ってたの。ねぇ、尚紀クン?」
そうして彼は、ひどく窮屈に俺の手を捕まえながら、俺の指にキスを落とした。
これは俺の知ってる、一式紫という人間じゃない。
誰より思慮深い瞳に陰りがみえる。
仁王立ちの彼。不穏な雰囲気をまとわせている。
顎をくいっと上に向けられ、彼と目と目が合う。俺の顔を覗き込む彼。その目には、俺の考えを検めようという意思がありありと宿っているかのように見えた。
最後に笑顔をみせようとして、失敗して崩れた俺の顔。それを間近で見られる。
俺の苦い胸中はそのままに、彼の冷気が降りかかる。
(なんだろう。どうしてこうなったんだっけ?)
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