褒美は変わった皇女様

よしき

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皇女と皇帝

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 さて、等の皇女アナスタシアはと言うと、ハルベルトから降嫁の話を聞いたのは、サージャリオンよりも1時間前の話である。
 金糸の様な美しい髪を、帝国風に編み込んだ髪型はとても彼女にあっている。瞳の色はハルベルトと同じ空色の瞳である。
「シアよ、この話どうか?」
 「父上は、面白がっておられますようで。」
「まあ、そう言うな。お前も既に19歳だ。に行かなくてはなるまい。しかも、嫁ぎ先はあの『英雄殿』だ。悪くはあるまい」
 シア(皇女)は、クスクスと笑った。
シアは皇太子との2人兄妹で、ハルベルトは、亡き皇后によく似た娘をとても可愛がっていた。性格としては・・・ハルベルトの様に突拍子もない思いつきをする訳ではないが、2人はとても仲が良かった。
「父上は、本当に面白い事をされるのがお好きなのですね。よろしいでしょう、ジェットラム侯爵に異論がなければ、私も降嫁いたします。」
「侯爵には、異論などないに決まっているだろう。何せシアは帝国1の『英雄』にふさわしいのだから」
 ハルベルトは、胸をそらしてそういった。本気でそう思っているのだろう。
 それを見て、皇女はクスクスと笑った。
「陛下、嫁ぐ私のお願いがございます。お聞きくださいますか?」
 ハルベルトは、
「もちろん」
と、大きく頷いてみせる。
 シアは、ニッコリと笑った。
「実は、が侯爵家に嫁ぐにあたり、盛大なお式はしたくないのでございます。」
「なぜかね?娘よ。降嫁をするとはいえど、お前は私の娘だ。盛大に祝ってやりたいのだが?」
 なんと言っても『英雄』に嫁ぐのだ。ハルベルトはそう言った。
 しかし、シアは少し曇った顔で、
「私は陛下と殿下のお見送りだけで十分でございます。これからはジェットラム侯爵家に馴染まなくてはなりませんし。それに、ジェットラム侯爵には
と、言った。その声は少し震えていたかもしれない。
 ハルベルトは、首を振って否定をした。
 「何を言う、お前ほど素晴らしい娘はおらん!ジェットラム侯爵にはその事を言わなくとも、お前を幸せにしてくれるはず。私が言うのもなんだが、あそこまで浮名を流さず手柄を立てた男はそうはおらん!もし、お前の事を大切にしないと言うのであれば、私が罰してくれる!」
 皇女は、ふわりと笑うと父親である皇帝に傅いた。
 「陛下、そのお言葉で十分にございます。」
「シアよ、いつでも城に遊びに帰っておいで。私の美しい娘よ・・・」
 こうして、シアは降嫁を承諾したのだった。
 
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