褒美は変わった皇女様

よしき

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シアの秘密

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「この魔女が!」
 皆が口々にそう言う。
「領主様を殺そうとするなんて!」
 違う違うとかぶりを振るが、誰も聞いてはくれなかった。
「英雄を地に貶めたおとし行為は、帝国の恥だ!」
 人々は、手を縛られた娘の金糸の様に美しい髪をハサミで全部肩の長さで切り落とすと、ワーッと歓声を上げる。
「さぁ、魔女を死刑に!」
「死刑だぁー!」
 娘は広間に作られた断頭台の前まで連れてこられると、空を見上げた。そして、無力なまま。歓声の中、自分の命を奪うそれへと膝まづいた・・・


 
 シアは、ハッとしてそこがベッドの上であると気がつくと、大きく安堵の吐息を吐く。辺りは明るく、すでに日が登っていた。そう、ここは侯爵領で。そっと、隣に目をやると、サージャがまだ眠っている。
 昨日、領民達へのお披露目は大成功して・・・。サージャもとても喜んでくれていたのをシアは思い出した。
 そして、シアはそっとベッドから抜け出した。

 寝室の隣の部屋の扉を開け、いつも着る質素なドレスに着替える。このドレスは、侍女がいなくても自分で着替えられるからいい。
 それからベルを鳴らす。
 そして、はぁっと大きくため息をつくと、シアは先ほどの夢を思い返す。
《このところ見ていなかったのに、またあの夢を見てしまった。消してあんな事になってはいけない・・・》
 しばらくすると、ケイティがお茶を持ってやってきたので、小さくありがとうと言うと、それを味わう様に口に含む。
「シア様、お顔の色が優れませんが?」
 そんなシアを見て、ケイティが心配そうに声をかける。
「なんでもないの・・・ただの夢見が悪かっただけ」
「ならよろしいのですが。」
 ケイティがそう言って、部屋から出て行く。
 シアはそれを見届けると、もう一度ため息をついた。
《多分、あれは、前世で起きた事実。なんとしてでもそれを阻止しなければ・・・》
 
 アナスタシア・・・蘇る・・・
 シアの名前は奇しくもそう言う名前だった。
 彼女には、前世の記憶があった。
 彼女は前世でもアナスタシアだった。
 
 前世では、横暴な皇女として、幼い頃から我儘に城で育った。そして、一目惚れした英雄のサージャリオンと無理やり結婚して・・・
 そして、ある事件をきっかけに民達に城から引きずり出されて処刑される・・・。

 子供の頃は、その記憶のせいでよく熱を出し、父である皇帝や母を悩ませたものだが・・・。母が亡くなる10歳の頃になるとシアは、何かを悟った。そして、前世とは違った生活を送る様に心がけるようになった。それまでしていた贅沢や我儘はやめ、父や兄の言うことをよく聞く聡い皇女となった。
 そのせいだろうか。サージャとの結婚は、自分から出なく父帝のとして嫁ぐ形となった。
 だから、前世での荘厳かつ贅沢な結婚は望まなかった。そうして、前世とは違う事を行っていくと、違った未来がシアには訪れたから・・・
 シアは思う。
 「なんとしても、夢のような結末を迎えないようにしなければ・・・」と、強く。
 
 

 


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