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第14話・異世界と地球の架け橋
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在アルス・メリア日本大使館が完成して半年。
日本での法整備も順調に進み、いよいよ異世界からの観光客第一号がまもなく到着する。
この日のために、加賀立大使館職員は、王都の各ギルドとの提携を整え、旅行客の安全確保のために様々なテコ入れを行ってきた。
初日から冒険者ギルドに登録しないよう、武器を購入させないようにと書類を手渡し、冒険者になるためには『冒険者訓練学校』を卒業してもらうようにと、小さいながらも学校の建築にも携わっていた。
旅行代理店を決定し、こちらに代理店の店舗も確保、そこで発売される『異世界渡航旅券』を買い求めることによって、ようやく異世界アルス・メリアへとやってくることができるようになった。
「さて、そろそろですよ。篠原さんと秋冬夜さんは新しく作られた観光用転移門へ。加賀さん、和泉さんは受付カウンターへ。石田君と神谷くんは異世界ギルドに向かい、転移門の分岐および接続手続きを開始してください」
山城部長が指示を飛ばすと、それぞれ持ち場に向かう。
在アルス・メリア日本大使館隣、異世界ギルドとは反対側に作られた『観光用転移門』から、日本人がやってくるまであと30分。
それぞれ持ち場についた職員たちは、手に汗握るほどに緊張感に包まれている。
そして大使館内・領事部事務局カウンター。
異世界へとやってきた観光客は、まずはここで入国手続きを行わなくてはならない。
検疫および手荷物預かり所などは転移門のある建物の中にすべて併設されているが、領事部だけは大使館の中に作られている。
「ああ、あと20分……もうすぐ観光客がきます……」
「必要な手続きは、異世界渡航旅券の確認、真偽の水晶での犯罪歴の確認、あとはこのパンナフレットを手渡して……」
加賀と和泉が指折り数えつつ、手続きの流れを復唱している。
「まあ、お二人とも、そんなに緊張しないでください。これまで何度も訓練をしてきたのです、自分を信じてください」
「は、はひっ」
「パンフレットは三枚、一般用とこじらせた若者用と、シルバーパス用……大丈夫です」
リチャードが加賀と和泉に手をかざし、静かに魔法を唱える。
沈静化という、こころを落ち着かせる魔法。
それが淡い輝きを放ち、二人の心まで浸透していく。
「どうですか?」
「はい、大丈夫です」
「もう怖いものなんてありません。さあ、日本人よ、この異世界を見るがよい、です」
そう告げる二人に、リチャードも満足である。
そしてやがて、目の前の通路からガヤガヤと声が聞こえてきたので、二人は静かに立ち上がると、ついにやって来た観光客に頭を下げた。
「ようこそ、神聖ミーディアル王国へ。こちらは在アルス・メリア日本大使館領事部です、それでは入国手続きに入りますので、こちらへどうぞ」
すらすらと紡がれる言葉。
それにほっとしたのか、一人、また一人とカウンターに列ができ始めた。
こうして在アルス・メリア日本大使館は、ようやく本来の活動を開始したのであ る。
この先、日本と異世界の懸け橋となった日本大使館では、さまざまな出来事に際悩まされることになりますが、まずは物語はここまで。
またいつか、加賀たち在アルス・メリア日本大使館の人々の物語が紡がれることはありかと思いますが、いましばらくは彼女たちも多忙ゆえ、しばしお時間をいただけたら幸いです。
──fin
日本での法整備も順調に進み、いよいよ異世界からの観光客第一号がまもなく到着する。
この日のために、加賀立大使館職員は、王都の各ギルドとの提携を整え、旅行客の安全確保のために様々なテコ入れを行ってきた。
初日から冒険者ギルドに登録しないよう、武器を購入させないようにと書類を手渡し、冒険者になるためには『冒険者訓練学校』を卒業してもらうようにと、小さいながらも学校の建築にも携わっていた。
旅行代理店を決定し、こちらに代理店の店舗も確保、そこで発売される『異世界渡航旅券』を買い求めることによって、ようやく異世界アルス・メリアへとやってくることができるようになった。
「さて、そろそろですよ。篠原さんと秋冬夜さんは新しく作られた観光用転移門へ。加賀さん、和泉さんは受付カウンターへ。石田君と神谷くんは異世界ギルドに向かい、転移門の分岐および接続手続きを開始してください」
山城部長が指示を飛ばすと、それぞれ持ち場に向かう。
在アルス・メリア日本大使館隣、異世界ギルドとは反対側に作られた『観光用転移門』から、日本人がやってくるまであと30分。
それぞれ持ち場についた職員たちは、手に汗握るほどに緊張感に包まれている。
そして大使館内・領事部事務局カウンター。
異世界へとやってきた観光客は、まずはここで入国手続きを行わなくてはならない。
検疫および手荷物預かり所などは転移門のある建物の中にすべて併設されているが、領事部だけは大使館の中に作られている。
「ああ、あと20分……もうすぐ観光客がきます……」
「必要な手続きは、異世界渡航旅券の確認、真偽の水晶での犯罪歴の確認、あとはこのパンナフレットを手渡して……」
加賀と和泉が指折り数えつつ、手続きの流れを復唱している。
「まあ、お二人とも、そんなに緊張しないでください。これまで何度も訓練をしてきたのです、自分を信じてください」
「は、はひっ」
「パンフレットは三枚、一般用とこじらせた若者用と、シルバーパス用……大丈夫です」
リチャードが加賀と和泉に手をかざし、静かに魔法を唱える。
沈静化という、こころを落ち着かせる魔法。
それが淡い輝きを放ち、二人の心まで浸透していく。
「どうですか?」
「はい、大丈夫です」
「もう怖いものなんてありません。さあ、日本人よ、この異世界を見るがよい、です」
そう告げる二人に、リチャードも満足である。
そしてやがて、目の前の通路からガヤガヤと声が聞こえてきたので、二人は静かに立ち上がると、ついにやって来た観光客に頭を下げた。
「ようこそ、神聖ミーディアル王国へ。こちらは在アルス・メリア日本大使館領事部です、それでは入国手続きに入りますので、こちらへどうぞ」
すらすらと紡がれる言葉。
それにほっとしたのか、一人、また一人とカウンターに列ができ始めた。
こうして在アルス・メリア日本大使館は、ようやく本来の活動を開始したのであ る。
この先、日本と異世界の懸け橋となった日本大使館では、さまざまな出来事に際悩まされることになりますが、まずは物語はここまで。
またいつか、加賀たち在アルス・メリア日本大使館の人々の物語が紡がれることはありかと思いますが、いましばらくは彼女たちも多忙ゆえ、しばしお時間をいただけたら幸いです。
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