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第一部・アマノムラクモ降臨
第1話・異世界トラック事故案件、待ったなし‼︎
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俺は……死んだ筈。
冒頭から、こんな書き出しで始まる小説を、俺は何度も読んだことがある。
まあ、俺 俺が死んだ理由も、その小説の内容と似たり寄ったりだったよ。
残業残業の山、上司に媚びて部下を使い潰す課長。
結婚適齢期を迎えた俺を、両親や親戚が放っておくはずもなく、連日連夜のお見合い騒動。
よくいるでしょ?
親戚の中に、仲人をするのが大好きな人。
その人が、次のお見合いを成立させるとちょうど100組目らしく、今回のお見合いは是が非でも成立させたいとかで。
その結果、白羽の矢が俺に突き刺さりましたよ。
それで仕方なしに故郷に帰る途中、雪深い峠道でのカーブ。
突然のホワイトアウト。
前から走ってくる、運転手が居眠りしてたトラック。
これでスリーアウト、この世の人生をゲームセット。
ああ、トラックの運転手さんの、目が覚めて意識が戻ったらしい表情と口パクが、今でもはっきりと記憶にありますよ。
『やっべ、居眠りしてターゲット間違えたわ‼︎』
え?
なにそれ?
そして突然の衝撃。
俺の運転していた車は、哀れ崖下にダイビング。その前に、ちらっと見えたトラックの荷台の文字。
畜生、生き残って、あんたの会社を訴えてやるって思ったよ。
死の直前の意識って思ったよりもはっきりとしていますよね。
でも、書いてあった会社名。
あれは頂けません。
『有限会社・異世界トラック。どんな魂もお客様の元へ直送します』
は?
はぁ?
はぁぁぁぁぁ?
巫山戯るなよ、なんでここにきて、俺がラノベを体験しないとならないんだよ。
………
……
…
白い空間。
天も地もない、ただ真っ白な空間。
その中に、俺は立っていた。
『……あ、いらっしゃいませ。ようこそ、天と地の狭間、魂の安息の地へ。貴方はこれから、天国と地獄、どちらに向かうのか診断を受けます』
「いやいや、そこは、閻魔大王の裁判があるんじゃなくて?」
『あは。閻魔大王はですね、今日は裁判が多すぎて手が回らないそうです。ですから、貴方のようなイレギュラーな方の魂の診断は、我々、統合管理神が行うことになっているのですよ』
「そうですかそうですか。それじゃあ、お願いします」
俺が挨拶をすると、声の主らしき女性がス~ッと姿を表した。
そして手にしたバインダーを俺に差し出すと、一言だけ。
『では、まずは簡単なアンケートです』
まあ、なにが起こるのかと思ったら、アンケートですか。
とりあえず、各項目を確認。
普通に住所氏名とか各項目があるのですが、これってアンケートというよりも履歴書ですよね?
賞罰とか職歴もありますし。
──ピッ
あ、性別欄を間違えちまった。
男なんだけど、女に丸つけちまったよ、なんで日本の書類とは別表示なんだよ? 女性が先ってあれか? フェミニスト対策なのか?
天界もフェミニスト対策する時代とはなぁ。
大体10分ほどで殆ど書き終わったので、最後の項目欄の記入。
『死亡原因』
正直に書いてもいいか。
トラックに追突されて、崖から落ちました。
はい、これで完了。
「これでいいですか?」
『はい、確認します……』
そう告げると、神様は自分の机に書類を持っていくと、パソコンを起動して作業を始めた。
その机、いつ出したんだ?
そしてしばらく経つと、神様が、何か乗っている小さなトレーを持ってきた。
「では、異世界転生ボーナスを決定しますね」
右手を高らかに挙げる神様。
──ジャラララララ……ジャァァァン‼︎
演出過多とも思える、華麗なドラム音が響く。
すると彼女の真後ろに、巨大なダーツの的が浮かび上がった。
よく見ると、的は細かく分割されており、そこに数字が記されている。
いや、数字以外にもカタカナ三文字があちこちに見えるんだけど。
「これって、ダーツだよね? あの数字は多分、スキルに割り振られたものだとは思うんだけどさ、確率1/2にある『タワシ』って何?」
『タワシですよ。ほら、貴方たちの世界じゃ常識ですよね。遊び心ですよ』
「人の人生を左右するものに、タワシを入れられると困るんですが」
『……君みたいに、真面目な反応をする人も久しぶりだねぇ。大抵のやつは、この、タワシの部分に思いっきりツッコミを入れてきてね、それを楽しみにしていたのにさ』
そんなことを不満げにつぶやかれても困るのだが。
そして、トレイから手渡されたのは!金のダーツが三つ、銀のダーツが三つ、銅のダーツが三つ。
『それを投げて、当たったところの能力やアイテムがもらえる。因みに的を外すとペナルティスキルがランダムに当たるから、そのつもりでね』
「ペナルティって、例えば?」
「性転換。戻りたかったらわざと外さないとならないからね。つまり、それだけで二つ損するから』
うわぁ。
これは本気でやらないとならないぞ。
気合を入れて……GO‼︎
最初は銅のダーツから。
・初期異世界セット(自動翻訳スキルと初期装備)
・所持金ボーナス(銅なので、プラス一桁)
・基礎魔力 (銅なので、プラス一桁)
続いて銀のダーツ。
・鑑定眼(銀なのでレベル5)
・錬金術(同、レベル5)
・錬金術(ダブったので+5、合計レベル10)
最後が金のダーツ。
・能力値ボーナス(金なので、全てプラス二桁)
・錬金術 (さらにダブったのでオーバーリミット)
そして最後の一本が、的のど真ん中に命中した。
『カラーンカラーン。おめでとうございます、ど真ん中はスーパーアビリティ。神にも等しいスーパーチートです‼︎』
「はぁ、それで何が貰えるのですか?」
『それはこちらです』
そう叫ぶと、さらに細かく区分されているダーツの的が現れた。
よく見ると、そこには『賢者の資質』とか、『神世の鍛治師』、他にも『伝説の聖剣』やら『公爵家の血筋』なんていうのも記されていた。
「これって?」
『それは、貴方の職業やアイテムです。一般的な人の職業、つまりジョブは村人とか、農民とか、生活スキルの中の最も高いものが自動的に与えられます。今のままですと、『錬金術師』か『冒険者』になりますねぇ』
「……イメージ的には中世ヨーロッパのような感じか。随分とファンタジー要素もあるようだが」
『お、そこは分かるのですね?』
「姉さんがゲームを持っていたので、聞き齧り程度なんだよ。それで、最後の的に投げればいいんだな?」
『はい、どうぞ。ちなみに外したら『タワシの伝道師』になりますので』
「なんだよ、そのタワシの伝道師って‼︎」
──ズドーン
思わず全力で的に向かって投げたわ。
そして的がゆっくりと止まると、見事にトリプルの的に命中。
『おめでとうございます‼︎ ゴッドアイテムの『機動戦艦』が貴方に付与されます。異世界最強の機動戦艦、これさえあれば列強国など恐るるに足らず、世界征服も夢じゃありません』
「……なんで、機動戦艦?」
『まあまあ、あとが支えていますから、とりあえずこちらに受領印をお願いします。拇印でも構いませんよ』
どこからともなく取り出した書類。
確かに『付与スキル及びアイテムの受領書』と書いてある。
まあ、変更なんてないだろうし、ここでゴネても碌なことにならないだろうから。
──ポン
親指を出して朱肉をつける。
そしてポン、と押したら、書類が光になり、俺の体の中に入ってきた。
『はい、これで完了です。それでは、これより貴方を異世界に送ります……ごほん、トラック事故で非業の死を遂げた貴方ですが、異世界ではきっと幸せが訪れフベシッ‼︎』
──スパァァァァァン
突然、白い世界に亀裂が入ったかと思うと、目の前にさらに神々しい女神が姿を表した。
両手装備のような、巨大なハリセンを持って。
『こらファスニール、この人の死因についてはちゃんと確認した? トラック事故でって書いてあるけど、さっき、異世界トラックの責任者が頭を下げにきたよ?』
『え? この人って、異世界トラック案件だったのですか?』
『ちっがうから。異世界トラックの運転手が居眠りして、別の、全く関係ない人を轢き殺したらしいのよ。しかも、それでノルマをクリアしようと誤魔化したらしくて、転送先の創造神が異世界トラックを訴えたのよ』
なんだか、俺を無視して世知辛い話しているよなぁ……嫌な予感しかしないわ。
『そうなのですか‼︎ あ、まだこちらの『異世界転生許可書』のサインは貰っていません、では、戻しますね、バーイ・サンキュー‼︎』
『待て待て、まだ加護を引っ剥がして遅かったかぁぁぁ』
あ、俺の身体が光ってるわ。
まあ、元の世界に戻れるのなら、それはそれでよし。
異世界転生も楽しそうだったけどさ、元の世界の方が好きだからね。
──シュウンンンン‼︎
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
『ピッ……ピッ……ピッ……』
なんの音だ?
電子音だよな。
スマホのアラームか?
もしそうだとすると、今までの話は、全て夢だよ。
そっか。
まあ、夢でも楽しかったわ。
「あ~。それじゃあ、今日もくだらないブラック企業に出社しま……す……かぁ?」
ベッドから起きていつもの日課。
そう考えていたのだけれど、目の前はなにかの部屋。
よくあるアニメの、戦艦のブリッジ。
ガバッと立ち上がって周りを見渡すけど、間違いはない。
「さっきの夢は、現実かぁぁぁぁ‼︎」
思わず叫んだよ。
甲高い声で。
甲高い? はぁ?
「えええ、待て待て、現実を確認しよう。ここは戦艦なのか? さっきの話で出てきた機動戦艦なのか?」
『オペレーションセンターより。マスターの覚醒を確認。マザーシステムに移行します』
『了解、マザーシステムより魔導頭脳へ移行。これより先は、マスターの指示に従いなさい』
『了解。こちら魔導頭脳『オクタ・ワン』。マスターの登録を行います、マスターはキャプテンシートへ』
部屋中から声がする。
そして振り返ると、確かに部屋の中央にシートが浮かんでいる。
「これか?」
恐る恐るシートに座ると、目の前にスクリーンが次々と浮かび上がったよ。
『ピッ……アストラルサーチ開始……マスターの魂を、機動戦艦に接続。これより、機動戦艦はマスターの所有物であり、マスターの分身となりました。マスターの名前を登録してください』
ふむふむ。
この目の前のスクリーンだな。
これは異世界転生ものでよくある、ステータス表示か。
名前はまだ未登録で、性別は女。
え? 女?
なんで女?
「ちょいとまて、なんで俺が女なんだ?」
『ピッ……登録された魂の履歴書『系譜』には、女性と登録されています。それに伴い、転生体を構成する際に、性別は女性に変換されています』
「……あの、もう変更は……」
『統合管理神ファスニールが、貴方の系譜を受諾しました。変更は不可能です』
マジかぁ。
いや、それならしゃーない、無理なものは無理なので諦めるか。
別に身体が女になったからといって、俺が変わるわけでは……あるよなぁ。
「名前か。俺の名前が天童幸一郎だから、そのままというわけにもいかないか」
『ピッ……貴方の肉体は死亡し、現実世界での火葬も終わっています』
「つまり、俺の戸籍は存在しないと。それで、俺は女として生まれ変わり、この巨大戦艦を手に入れたんだな?」
『はい。名前の登録で完了です』
「名前……ミサキ。俺の名前は、ミサキ・テンドウ。漢字で書くと、天童美咲だ‼︎」
昔、親父が話していた俺の名前。
男だったら幸一郎、女だったら美咲だって話していたから。
『ピッ……登録完了。キャプテン・ミサキ。この機動戦艦の名前を登録してください』
「機動戦艦……』
やべぇ、ナデシコって言いそうになった。
他にもヤマモトヨーコとか、機動戦艦というとアニメの知識が爆走する。
それじゃあ駄目だよ、オリジナリティがないからね。
『機動戦艦……名前……』
神様から貰った機動戦艦。
神様かぁ。
そう考えると、ふと、一つの単語が頭をよぎった。
『この機動戦艦の名前は……天叢雲。機動戦艦アマノムラクモだ』
──フウィィィィィィン
俺が名前を宣言すると、室内外一斉に輝いた。
そして、頭の中に、この機動戦艦の扱い方、見取り図、装備、全てが入ってきた。
俺のいた場所はメインブリッジ。
「モニター展開、外を映し出してくれ」
『了解。フルモニター、オープン‼︎』
正面、側面、上下にモニターが広がる。そこに見えていたのは、札幌市の大通り公園。
機動戦艦アマノムラクモは、札幌市上空に浮かび上がっていた……。
冒頭から、こんな書き出しで始まる小説を、俺は何度も読んだことがある。
まあ、俺 俺が死んだ理由も、その小説の内容と似たり寄ったりだったよ。
残業残業の山、上司に媚びて部下を使い潰す課長。
結婚適齢期を迎えた俺を、両親や親戚が放っておくはずもなく、連日連夜のお見合い騒動。
よくいるでしょ?
親戚の中に、仲人をするのが大好きな人。
その人が、次のお見合いを成立させるとちょうど100組目らしく、今回のお見合いは是が非でも成立させたいとかで。
その結果、白羽の矢が俺に突き刺さりましたよ。
それで仕方なしに故郷に帰る途中、雪深い峠道でのカーブ。
突然のホワイトアウト。
前から走ってくる、運転手が居眠りしてたトラック。
これでスリーアウト、この世の人生をゲームセット。
ああ、トラックの運転手さんの、目が覚めて意識が戻ったらしい表情と口パクが、今でもはっきりと記憶にありますよ。
『やっべ、居眠りしてターゲット間違えたわ‼︎』
え?
なにそれ?
そして突然の衝撃。
俺の運転していた車は、哀れ崖下にダイビング。その前に、ちらっと見えたトラックの荷台の文字。
畜生、生き残って、あんたの会社を訴えてやるって思ったよ。
死の直前の意識って思ったよりもはっきりとしていますよね。
でも、書いてあった会社名。
あれは頂けません。
『有限会社・異世界トラック。どんな魂もお客様の元へ直送します』
は?
はぁ?
はぁぁぁぁぁ?
巫山戯るなよ、なんでここにきて、俺がラノベを体験しないとならないんだよ。
………
……
…
白い空間。
天も地もない、ただ真っ白な空間。
その中に、俺は立っていた。
『……あ、いらっしゃいませ。ようこそ、天と地の狭間、魂の安息の地へ。貴方はこれから、天国と地獄、どちらに向かうのか診断を受けます』
「いやいや、そこは、閻魔大王の裁判があるんじゃなくて?」
『あは。閻魔大王はですね、今日は裁判が多すぎて手が回らないそうです。ですから、貴方のようなイレギュラーな方の魂の診断は、我々、統合管理神が行うことになっているのですよ』
「そうですかそうですか。それじゃあ、お願いします」
俺が挨拶をすると、声の主らしき女性がス~ッと姿を表した。
そして手にしたバインダーを俺に差し出すと、一言だけ。
『では、まずは簡単なアンケートです』
まあ、なにが起こるのかと思ったら、アンケートですか。
とりあえず、各項目を確認。
普通に住所氏名とか各項目があるのですが、これってアンケートというよりも履歴書ですよね?
賞罰とか職歴もありますし。
──ピッ
あ、性別欄を間違えちまった。
男なんだけど、女に丸つけちまったよ、なんで日本の書類とは別表示なんだよ? 女性が先ってあれか? フェミニスト対策なのか?
天界もフェミニスト対策する時代とはなぁ。
大体10分ほどで殆ど書き終わったので、最後の項目欄の記入。
『死亡原因』
正直に書いてもいいか。
トラックに追突されて、崖から落ちました。
はい、これで完了。
「これでいいですか?」
『はい、確認します……』
そう告げると、神様は自分の机に書類を持っていくと、パソコンを起動して作業を始めた。
その机、いつ出したんだ?
そしてしばらく経つと、神様が、何か乗っている小さなトレーを持ってきた。
「では、異世界転生ボーナスを決定しますね」
右手を高らかに挙げる神様。
──ジャラララララ……ジャァァァン‼︎
演出過多とも思える、華麗なドラム音が響く。
すると彼女の真後ろに、巨大なダーツの的が浮かび上がった。
よく見ると、的は細かく分割されており、そこに数字が記されている。
いや、数字以外にもカタカナ三文字があちこちに見えるんだけど。
「これって、ダーツだよね? あの数字は多分、スキルに割り振られたものだとは思うんだけどさ、確率1/2にある『タワシ』って何?」
『タワシですよ。ほら、貴方たちの世界じゃ常識ですよね。遊び心ですよ』
「人の人生を左右するものに、タワシを入れられると困るんですが」
『……君みたいに、真面目な反応をする人も久しぶりだねぇ。大抵のやつは、この、タワシの部分に思いっきりツッコミを入れてきてね、それを楽しみにしていたのにさ』
そんなことを不満げにつぶやかれても困るのだが。
そして、トレイから手渡されたのは!金のダーツが三つ、銀のダーツが三つ、銅のダーツが三つ。
『それを投げて、当たったところの能力やアイテムがもらえる。因みに的を外すとペナルティスキルがランダムに当たるから、そのつもりでね』
「ペナルティって、例えば?」
「性転換。戻りたかったらわざと外さないとならないからね。つまり、それだけで二つ損するから』
うわぁ。
これは本気でやらないとならないぞ。
気合を入れて……GO‼︎
最初は銅のダーツから。
・初期異世界セット(自動翻訳スキルと初期装備)
・所持金ボーナス(銅なので、プラス一桁)
・基礎魔力 (銅なので、プラス一桁)
続いて銀のダーツ。
・鑑定眼(銀なのでレベル5)
・錬金術(同、レベル5)
・錬金術(ダブったので+5、合計レベル10)
最後が金のダーツ。
・能力値ボーナス(金なので、全てプラス二桁)
・錬金術 (さらにダブったのでオーバーリミット)
そして最後の一本が、的のど真ん中に命中した。
『カラーンカラーン。おめでとうございます、ど真ん中はスーパーアビリティ。神にも等しいスーパーチートです‼︎』
「はぁ、それで何が貰えるのですか?」
『それはこちらです』
そう叫ぶと、さらに細かく区分されているダーツの的が現れた。
よく見ると、そこには『賢者の資質』とか、『神世の鍛治師』、他にも『伝説の聖剣』やら『公爵家の血筋』なんていうのも記されていた。
「これって?」
『それは、貴方の職業やアイテムです。一般的な人の職業、つまりジョブは村人とか、農民とか、生活スキルの中の最も高いものが自動的に与えられます。今のままですと、『錬金術師』か『冒険者』になりますねぇ』
「……イメージ的には中世ヨーロッパのような感じか。随分とファンタジー要素もあるようだが」
『お、そこは分かるのですね?』
「姉さんがゲームを持っていたので、聞き齧り程度なんだよ。それで、最後の的に投げればいいんだな?」
『はい、どうぞ。ちなみに外したら『タワシの伝道師』になりますので』
「なんだよ、そのタワシの伝道師って‼︎」
──ズドーン
思わず全力で的に向かって投げたわ。
そして的がゆっくりと止まると、見事にトリプルの的に命中。
『おめでとうございます‼︎ ゴッドアイテムの『機動戦艦』が貴方に付与されます。異世界最強の機動戦艦、これさえあれば列強国など恐るるに足らず、世界征服も夢じゃありません』
「……なんで、機動戦艦?」
『まあまあ、あとが支えていますから、とりあえずこちらに受領印をお願いします。拇印でも構いませんよ』
どこからともなく取り出した書類。
確かに『付与スキル及びアイテムの受領書』と書いてある。
まあ、変更なんてないだろうし、ここでゴネても碌なことにならないだろうから。
──ポン
親指を出して朱肉をつける。
そしてポン、と押したら、書類が光になり、俺の体の中に入ってきた。
『はい、これで完了です。それでは、これより貴方を異世界に送ります……ごほん、トラック事故で非業の死を遂げた貴方ですが、異世界ではきっと幸せが訪れフベシッ‼︎』
──スパァァァァァン
突然、白い世界に亀裂が入ったかと思うと、目の前にさらに神々しい女神が姿を表した。
両手装備のような、巨大なハリセンを持って。
『こらファスニール、この人の死因についてはちゃんと確認した? トラック事故でって書いてあるけど、さっき、異世界トラックの責任者が頭を下げにきたよ?』
『え? この人って、異世界トラック案件だったのですか?』
『ちっがうから。異世界トラックの運転手が居眠りして、別の、全く関係ない人を轢き殺したらしいのよ。しかも、それでノルマをクリアしようと誤魔化したらしくて、転送先の創造神が異世界トラックを訴えたのよ』
なんだか、俺を無視して世知辛い話しているよなぁ……嫌な予感しかしないわ。
『そうなのですか‼︎ あ、まだこちらの『異世界転生許可書』のサインは貰っていません、では、戻しますね、バーイ・サンキュー‼︎』
『待て待て、まだ加護を引っ剥がして遅かったかぁぁぁ』
あ、俺の身体が光ってるわ。
まあ、元の世界に戻れるのなら、それはそれでよし。
異世界転生も楽しそうだったけどさ、元の世界の方が好きだからね。
──シュウンンンン‼︎
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
『ピッ……ピッ……ピッ……』
なんの音だ?
電子音だよな。
スマホのアラームか?
もしそうだとすると、今までの話は、全て夢だよ。
そっか。
まあ、夢でも楽しかったわ。
「あ~。それじゃあ、今日もくだらないブラック企業に出社しま……す……かぁ?」
ベッドから起きていつもの日課。
そう考えていたのだけれど、目の前はなにかの部屋。
よくあるアニメの、戦艦のブリッジ。
ガバッと立ち上がって周りを見渡すけど、間違いはない。
「さっきの夢は、現実かぁぁぁぁ‼︎」
思わず叫んだよ。
甲高い声で。
甲高い? はぁ?
「えええ、待て待て、現実を確認しよう。ここは戦艦なのか? さっきの話で出てきた機動戦艦なのか?」
『オペレーションセンターより。マスターの覚醒を確認。マザーシステムに移行します』
『了解、マザーシステムより魔導頭脳へ移行。これより先は、マスターの指示に従いなさい』
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部屋中から声がする。
そして振り返ると、確かに部屋の中央にシートが浮かんでいる。
「これか?」
恐る恐るシートに座ると、目の前にスクリーンが次々と浮かび上がったよ。
『ピッ……アストラルサーチ開始……マスターの魂を、機動戦艦に接続。これより、機動戦艦はマスターの所有物であり、マスターの分身となりました。マスターの名前を登録してください』
ふむふむ。
この目の前のスクリーンだな。
これは異世界転生ものでよくある、ステータス表示か。
名前はまだ未登録で、性別は女。
え? 女?
なんで女?
「ちょいとまて、なんで俺が女なんだ?」
『ピッ……登録された魂の履歴書『系譜』には、女性と登録されています。それに伴い、転生体を構成する際に、性別は女性に変換されています』
「……あの、もう変更は……」
『統合管理神ファスニールが、貴方の系譜を受諾しました。変更は不可能です』
マジかぁ。
いや、それならしゃーない、無理なものは無理なので諦めるか。
別に身体が女になったからといって、俺が変わるわけでは……あるよなぁ。
「名前か。俺の名前が天童幸一郎だから、そのままというわけにもいかないか」
『ピッ……貴方の肉体は死亡し、現実世界での火葬も終わっています』
「つまり、俺の戸籍は存在しないと。それで、俺は女として生まれ変わり、この巨大戦艦を手に入れたんだな?」
『はい。名前の登録で完了です』
「名前……ミサキ。俺の名前は、ミサキ・テンドウ。漢字で書くと、天童美咲だ‼︎」
昔、親父が話していた俺の名前。
男だったら幸一郎、女だったら美咲だって話していたから。
『ピッ……登録完了。キャプテン・ミサキ。この機動戦艦の名前を登録してください』
「機動戦艦……』
やべぇ、ナデシコって言いそうになった。
他にもヤマモトヨーコとか、機動戦艦というとアニメの知識が爆走する。
それじゃあ駄目だよ、オリジナリティがないからね。
『機動戦艦……名前……』
神様から貰った機動戦艦。
神様かぁ。
そう考えると、ふと、一つの単語が頭をよぎった。
『この機動戦艦の名前は……天叢雲。機動戦艦アマノムラクモだ』
──フウィィィィィィン
俺が名前を宣言すると、室内外一斉に輝いた。
そして、頭の中に、この機動戦艦の扱い方、見取り図、装備、全てが入ってきた。
俺のいた場所はメインブリッジ。
「モニター展開、外を映し出してくれ」
『了解。フルモニター、オープン‼︎』
正面、側面、上下にモニターが広がる。そこに見えていたのは、札幌市の大通り公園。
機動戦艦アマノムラクモは、札幌市上空に浮かび上がっていた……。
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