機動戦艦から始まる、現代の錬金術師

呑兵衛和尚

文字の大きさ
1 / 41
第一部・アマノムラクモ降臨

第1話・異世界トラック事故案件、待ったなし‼︎

しおりを挟む
 俺は……死んだ筈。

 冒頭から、こんな書き出しで始まる小説を、俺は何度も読んだことがある。
 まあ、俺 俺が死んだ理由も、その小説の内容と似たり寄ったりだったよ。
 残業残業の山、上司に媚びて部下を使い潰す課長。
 結婚適齢期を迎えた俺を、両親や親戚が放っておくはずもなく、連日連夜のお見合い騒動。
 よくいるでしょ?
 親戚の中に、仲人をするのが大好きな人。
 その人が、次のお見合いを成立させるとちょうど100組目らしく、今回のお見合いは是が非でも成立させたいとかで。

 その結果、白羽の矢が俺に突き刺さりましたよ。

 それで仕方なしに故郷に帰る途中、雪深い峠道でのカーブ。
 突然のホワイトアウト。
 前から走ってくる、運転手が居眠りしてたトラック。
 これでスリーアウト、この世の人生をゲームセット。
 ああ、トラックの運転手さんの、目が覚めて意識が戻ったらしい表情と口パクが、今でもはっきりと記憶にありますよ。

『やっべ、居眠りしてターゲット間違えたわ‼︎』

 え?
 なにそれ?
 そして突然の衝撃。
 俺の運転していた車は、哀れ崖下にダイビング。その前に、ちらっと見えたトラックの荷台の文字。
 畜生、生き残って、あんたの会社を訴えてやるって思ったよ。
 死の直前の意識って思ったよりもはっきりとしていますよね。
 でも、書いてあった会社名。
 あれは頂けません。

『有限会社・異世界トラック。どんな魂もお客様の元へ直送します』

 は?
 はぁ?
 はぁぁぁぁぁ?

 巫山戯るなよ、なんでここにきて、俺がラノベを体験しないとならないんだよ。

………
……


 白い空間。
 天も地もない、ただ真っ白な空間。
 その中に、俺は立っていた。

『……あ、いらっしゃいませ。ようこそ、天と地の狭間、魂の安息の地へ。貴方はこれから、天国と地獄、どちらに向かうのか診断を受けます』
「いやいや、そこは、閻魔大王の裁判があるんじゃなくて?」
『あは。閻魔大王はですね、今日は裁判が多すぎて手が回らないそうです。ですから、貴方のようなイレギュラーな方の魂の診断は、我々、統合管理神が行うことになっているのですよ』
「そうですかそうですか。それじゃあ、お願いします」

 俺が挨拶をすると、声の主らしき女性がス~ッと姿を表した。
 そして手にしたバインダーを俺に差し出すと、一言だけ。

『では、まずは簡単なアンケートです』

 まあ、なにが起こるのかと思ったら、アンケートですか。
 とりあえず、各項目を確認。
 普通に住所氏名とか各項目があるのですが、これってアンケートというよりも履歴書ですよね?
 賞罰とか職歴もありますし。
──ピッ
 あ、性別欄を間違えちまった。
 男なんだけど、女に丸つけちまったよ、なんで日本の書類とは別表示なんだよ? 女性が先ってあれか? フェミニスト対策なのか?
 天界もフェミニスト対策する時代とはなぁ。
 大体10分ほどで殆ど書き終わったので、最後の項目欄の記入。

『死亡原因』

 正直に書いてもいいか。
 トラックに追突されて、崖から落ちました。

 はい、これで完了。
 
「これでいいですか?」
『はい、確認します……』

 そう告げると、神様は自分の机に書類を持っていくと、パソコンを起動して作業を始めた。
 その机、いつ出したんだ?
 そしてしばらく経つと、神様が、何か乗っている小さなトレーを持ってきた。

「では、異世界転生ボーナスを決定しますね」

 右手を高らかに挙げる神様。

──ジャラララララ……ジャァァァン‼︎
 演出過多とも思える、華麗なドラム音が響く。
 すると彼女の真後ろに、巨大なダーツの的が浮かび上がった。
 よく見ると、的は細かく分割されており、そこに数字が記されている。
 いや、数字以外にもカタカナ三文字があちこちに見えるんだけど。

「これって、ダーツだよね? あの数字は多分、スキルに割り振られたものだとは思うんだけどさ、確率1/2にある『タワシ』って何?」
『タワシですよ。ほら、貴方たちの世界じゃ常識ですよね。遊び心ですよ』
「人の人生を左右するものに、タワシを入れられると困るんですが」
『……君みたいに、真面目な反応をする人も久しぶりだねぇ。大抵のやつは、この、タワシの部分に思いっきりツッコミを入れてきてね、それを楽しみにしていたのにさ』

 そんなことを不満げにつぶやかれても困るのだが。
 そして、トレイから手渡されたのは!金のダーツが三つ、銀のダーツが三つ、銅のダーツが三つ。

『それを投げて、当たったところの能力やアイテムがもらえる。因みに的を外すとペナルティスキルがランダムに当たるから、そのつもりでね』
「ペナルティって、例えば?」
「性転換。戻りたかったらわざと外さないとならないからね。つまり、それだけで二つ損するから』

 うわぁ。
 これは本気でやらないとならないぞ。
 気合を入れて……GO‼︎
 
 最初は銅のダーツから。
・初期異世界セット(自動翻訳スキルと初期装備)
・所持金ボーナス(銅なので、プラス一桁)
・基礎魔力   (銅なので、プラス一桁)

 続いて銀のダーツ。
・鑑定眼(銀なのでレベル5)
・錬金術(同、レベル5)
・錬金術(ダブったので+5、合計レベル10)

 最後が金のダーツ。
・能力値ボーナス(金なので、全てプラス二桁)
・錬金術 (さらにダブったのでオーバーリミット)

 そして最後の一本が、的のど真ん中に命中した。

『カラーンカラーン。おめでとうございます、ど真ん中はスーパーアビリティ。神にも等しいスーパーチートです‼︎』
「はぁ、それで何が貰えるのですか?」
『それはこちらです』

 そう叫ぶと、さらに細かく区分されているダーツの的が現れた。
 よく見ると、そこには『賢者の資質』とか、『神世の鍛治師』、他にも『伝説の聖剣』やら『公爵家の血筋』なんていうのも記されていた。

「これって?」
『それは、貴方の職業やアイテムです。一般的な人の職業、つまりジョブは村人とか、農民とか、生活スキルの中の最も高いものが自動的に与えられます。今のままですと、『錬金術師』か『冒険者』になりますねぇ』
「……イメージ的には中世ヨーロッパのような感じか。随分とファンタジー要素もあるようだが」
『お、そこは分かるのですね?』
「姉さんがゲームを持っていたので、聞き齧り程度なんだよ。それで、最後の的に投げればいいんだな?」
『はい、どうぞ。ちなみに外したら『タワシの伝道師』になりますので』
「なんだよ、そのタワシの伝道師って‼︎」

──ズドーン
 思わず全力で的に向かって投げたわ。
 そして的がゆっくりと止まると、見事にトリプルの的に命中。

『おめでとうございます‼︎ ゴッドアイテムの『機動戦艦』が貴方に付与されます。異世界最強の機動戦艦、これさえあれば列強国など恐るるに足らず、世界征服も夢じゃありません』
「……なんで、機動戦艦?」
『まあまあ、あとがつかえていますから、とりあえずこちらに受領印をお願いします。拇印でも構いませんよ』

 どこからともなく取り出した書類。
 確かに『付与スキル及びアイテムの受領書』と書いてある。
 まあ、変更なんてないだろうし、ここでゴネても碌なことにならないだろうから。

──ポン
 親指を出して朱肉をつける。
 そしてポン、と押したら、書類が光になり、俺の体の中に入ってきた。

『はい、これで完了です。それでは、これより貴方を異世界に送ります……ごほん、トラック事故で非業の死を遂げた貴方ですが、異世界ではきっと幸せが訪れフベシッ‼︎』

──スパァァァァァン
 突然、白い世界に亀裂が入ったかと思うと、目の前にさらに神々しい女神が姿を表した。
 両手装備のような、巨大なハリセンを持って。

『こらファスニール、この人の死因についてはちゃんと確認した? トラック事故でって書いてあるけど、さっき、異世界トラックの責任者が頭を下げにきたよ?』
『え? この人って、異世界トラック案件だったのですか?』
『ちっがうから。異世界トラックの運転手が居眠りして、別の、全く関係ない人を轢き殺したらしいのよ。しかも、それでノルマをクリアしようと誤魔化したらしくて、転送先の創造神が異世界トラックを訴えたのよ』

 なんだか、俺を無視して世知辛い話しているよなぁ……嫌な予感しかしないわ。
 
『そうなのですか‼︎ あ、まだこちらの『異世界転生許可書』のサインは貰っていません、では、戻しますね、バーイ・サンキュー‼︎』
『待て待て、まだ加護を引っ剥がして遅かったかぁぁぁ』

 あ、俺の身体が光ってるわ。
 まあ、元の世界に戻れるのなら、それはそれでよし。
 異世界転生も楽しそうだったけどさ、元の世界の方が好きだからね。

──シュウンンンン‼︎


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


『ピッ……ピッ……ピッ……』

 なんの音だ?
 電子音だよな。
 スマホのアラームか?
 もしそうだとすると、今までの話は、全て夢だよ。
 そっか。
 まあ、夢でも楽しかったわ。

「あ~。それじゃあ、今日もくだらないブラック企業に出社しま……す……かぁ?」

 ベッドから起きていつもの日課。
 そう考えていたのだけれど、目の前はなにかの部屋。
 よくあるアニメの、戦艦のブリッジ。
 ガバッと立ち上がって周りを見渡すけど、間違いはない。

「さっきの夢は、現実かぁぁぁぁ‼︎」

 思わず叫んだよ。
 甲高い声で。
 甲高い? はぁ?

「えええ、待て待て、現実を確認しよう。ここは戦艦なのか? さっきの話で出てきた機動戦艦なのか?」

『オペレーションセンターより。マスターの覚醒を確認。マザーシステムに移行します』
『了解、マザーシステムより魔導頭脳へ移行。これより先は、マスターの指示に従いなさい』
『了解。こちら魔導頭脳『オクタ・ワン』。マスターの登録を行います、マスターはキャプテンシートへ』

 部屋中から声がする。
 そして振り返ると、確かに部屋の中央にシートが浮かんでいる。

「これか?」

 恐る恐るシートに座ると、目の前にスクリーンが次々と浮かび上がったよ。

『ピッ……アストラルサーチ開始……マスターの魂を、機動戦艦に接続。これより、機動戦艦はマスターの所有物であり、マスターの分身となりました。マスターの名前を登録してください』

 ふむふむ。
 この目の前のスクリーンだな。
 これは異世界転生ものでよくある、ステータス表示か。
 名前はまだ未登録で、性別は女。
 え? 女?
 なんで女?

「ちょいとまて、なんで俺が女なんだ?」
『ピッ……登録された魂の履歴書『系譜』には、女性と登録されています。それに伴い、転生体を構成する際に、性別は女性に変換されています』
「……あの、もう変更は……」
『統合管理神ファスニールが、貴方の系譜を受諾しました。変更は不可能です』

 マジかぁ。
 いや、それならしゃーない、無理なものは無理なので諦めるか。
 別に身体が女になったからといって、俺が変わるわけでは……あるよなぁ。

「名前か。俺の名前が天童幸一郎だから、そのままというわけにもいかないか」
『ピッ……貴方の肉体は死亡し、現実世界での火葬も終わっています』
「つまり、俺の戸籍は存在しないと。それで、俺は女として生まれ変わり、この巨大戦艦を手に入れたんだな?」
『はい。名前の登録で完了です』
「名前……ミサキ。俺の名前は、ミサキ・テンドウ。漢字で書くと、天童美咲だ‼︎」

 昔、親父が話していた俺の名前。
 男だったら幸一郎、女だったら美咲だって話していたから。

『ピッ……登録完了。キャプテン・ミサキ。この機動戦艦の名前を登録してください』
「機動戦艦……』

 やべぇ、ナデシコって言いそうになった。
 他にもヤマモトヨーコとか、機動戦艦というとアニメの知識が爆走する。
 それじゃあ駄目だよ、オリジナリティがないからね。

『機動戦艦……名前……』

 神様から貰った機動戦艦。
 神様かぁ。
 そう考えると、ふと、一つの単語が頭をよぎった。

『この機動戦艦の名前は……天叢雲。機動戦艦アマノムラクモだ』

──フウィィィィィィン
 俺が名前を宣言すると、室内外一斉に輝いた。
 そして、頭の中に、この機動戦艦の扱い方、見取り図、装備、全てが入ってきた。
 俺のいた場所はメインブリッジ。
 
「モニター展開、外を映し出してくれ」
『了解。フルモニター、オープン‼︎』

 正面、側面、上下にモニターが広がる。そこに見えていたのは、札幌市の大通り公園。
 機動戦艦アマノムラクモは、札幌市上空に浮かび上がっていた……。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...