型録通販から始まる、追放令嬢のスローライフ

呑兵衛和尚

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第8章・海洋国家へ向かう道

第355話・予想以上に善戦しています、敵ですがあっぱれということで(さあ、お楽しみはこれからです!!)

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 ガンバナニーワ王国王城で始められた、レラニトリ嬢の婚姻に関する話し合い。
 
 さっそく開始早々ひと悶着がありましたが、まずは柚月さんが用意してくれた『国王陛下直筆の許可証明』が火を噴きました。
 あ、火を噴くというのは勇者語録にあった言葉で、ここ一番の切り札が切られたときに使う言葉だそうです。んんん、ブランシュさんとノワールさんが首を傾げていますが、これはアウトとセーフの狭間なのでしょう。

「それでは、早速ですが話し合いを始めたいと思います。ではまずは、わが娘フランが欲していたものを各家から順に提出していただきます。それを見て、最終判断はフランに託したいと思っています。では、まずはコンデンサ伯爵家からよろしくお願いします」

 レラニトリ侯爵の声が大広間に響きます。
 それと同時に、コンデンサ伯爵が侍女に指示を出して、大きな荷物を室内に運ばせました。
 そしてその荷物の前に立つと、丁寧に頭を下げたのち伯爵が口を開きます。

「今回、わがコンデンサ家がご用意したものは、『伝承の騎士の彫像』です。これは勇者物語に記されている、勇者ケンゴ・カミイズミに仕えていたエセリアル・ナイト、その彫像を偶然入手することができました」
 
――バッ
 彫像に掛けられていた緋色の布が取り払われ、中から水晶を削ったような美しい彫像が姿を現します。
 竜の文様が施された聖剣と、一角獣の頭部のような彫刻があしらわれた盾を持つ、武骨な鎧に身を包んだ美形の青年。
 それが姿を現したとき、フラン嬢の傍らで護衛を務めているクリムゾンさんが必死に笑いをこらえ、私の横で拳を握って震えているブランシュさんの姿があります。
 あ、ノワールさん、氷のような冷笑を浮かべるのは勘弁してください、寒さで死んでしまいます。

「ま、まあ、あの彫刻は初代勇者であるカミイズミの従者、ヨルベの残した勇者像ですから、本物といえば本物ですが」
「まさか、これを持ってくるとはなぁ。あれって確か、カマンベール王国の王城に安置してあったはずだろ」
「ええ、あの女王が大切にしていた彫像ですから。それがここにあるということは」

 まさか……。

「「盗品です」」

 あっちゃー、そう来ましたか。
 ま、まあ、あのカマンベール王国動乱の際に運び出されたというのが、多分正しいのではないかと思います。だって、あの彫像、わずかながら魔力を感じますから。

「おお、これは見事な」
「はい。かの有名な彫刻家であるヨルベ・ヒルゲ様の残した勇者の彫像です。とあるつてで入手しました」
「ふむ……では、ちょっと確認させてもらうがよいかね?」
「構いません」

 そう告げたのち、レラニトリ侯爵の後ろで待機していた魔術師が前に進み出て、彫像の鑑定を始めました。
 
「ふむふむ。確かにこれは、勇者カミイズミさまに付き従っていた従者ヨルベ氏の作品に間違いはありません。ですが……所有者はカマンベール王家のものであり、これは盗品となっていますが」
「な、なんだと!! s@4dwck94unbst@0t.se4kq@!!」

 あ、あまりの興奮状態に後の言葉が聞き取れませんでしたが。
 離れた場所でギャラル伯爵たちがニマニマ笑っているという事は、あれが盗品であることを知っていたのでしょう。

「残念ですが、盗品を持ち込まれては我が侯爵家の名誉にもかかわってきます。ということですので、残念ですがコンデンサ伯爵家は資格なしということで」
「い、いえ、これはなにかの間違いで……」
「お見苦しい。では、次の方どうぞ」

 護衛の騎士に詰め寄られ、コンデンサ伯爵は自席に戻り肩をがっくりと落としています。

「では……我が家は……」

 二番目にサントワール男爵家が貢物を持ち込んできました。
 ちなみに男爵家が持ってきたのは『勇者世界の黒き嗜好品』。
 ええ、あのビーショックで行われたフードフェスティバル、あのときライバル店というか、いちゃもんをつけてきた店が用意していたというチョコレートです。
 それも、しっかりと加工してありまして、なんというかうちで取り扱っているチョコレートのような……。

「クリスティナさま、あれは【型録通販のシャーリィ】で取り寄せたチョコレートギフトを参考に作られたものですわ。残念なのは完成度が低いこと、間に合わせの材料で体裁だけを取り繕った感じであるという事。まあ、チョコレートとしての価値は、あのビーショックでの大会のものと同程度です」
「うわぁ……ちょっとだけ食べてみたい気がします。でも、よくこの短期間で用意できたものですね」

 思わず感心してしまいます。
 だって、あれを再現するのはかなり難しいのですよ。
 そして侯爵さまの反応はといいますと、しっかりと鑑定を行い害がないと判断してから、フラン嬢が一つを手に取り、口に運んでいます。
 ですが。

「これは違いますわ」

 というフラン嬢の一言で轟沈。
 
「な、なぜですか、それはガンバナニーワ王国でも10指に入る菓子職人に再現してもらったものですぞ。かの有名なハーバリオス王国の菓子職人コレール・リッチモンド氏が手掛けたという伝説のレシピ、それを再現してもらったのです」
「ええ。確かにガンバナニーワ王国では見たこともない方が多いかと思います。ですが、私はこの黒い嗜好品のオリジナルを知っていますので……」

――ゲッ……ガーン!!
「ありゃあ、これは予想外。でも、フラン嬢は、いつ、どこでチョコレートを知ったのでしょうね」
「おそらくですが。クリスティナ様がレラニトリ家に向かったとき、お土産としておいてきたクッキーアソートの中にチョコレートを使ったものが混ざっていたのではないでしょうか。その時の話については、紅から聞かされていますので」
「んんん?」

 おっと、そうでした。
 あの時お土産に置いてきたクッキーアソート。あの中には、チョコレートの飾りが施されているクッキーもあったのでした。
 それを食べているからこそ、フラン嬢はあのようなことをおっしゃったのでしょう。
 恐るべき、味覚というしかありません。
 
 そして次は三人目。
 カールバン子爵家は、どのようなものを持ってきたのでしょうか。

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