型録通販から始まる、追放令嬢のスローライフ

呑兵衛和尚

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第8章・海洋国家へ向かう道

第360話・ハマスタ王国は新年を迎えていました

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 ハマスタ王国の中継都市のひとつ『地方都市ミライ・ミナト』。

 私たちを乗せたエセリアル馬車は無事にミライ・ミナトの城門前に到着しましたが。
 予想以上に長い行列に、ちょっと頭が痛くなってきそうです。

「はぁ。これはまた、とんでもなく長い行列ですね。なにかあったのでしょうか?」
「ん~、ちょっと待つし……と、ああ、クリスっち、あと3日で寿葉が終わるし!!」
「え、うそでしょ?」

 慌てて【型録通販のシャーリィ】を取り出して開きます。
 ああ、ついこの前ペルソナさんが持ってきてくれた『期間限定の新商品型録』、これって新年を祝う商品ではないですか、やだもう~。
 すっかりガンバナニーワ王国で時間を取られただけでなく、そのあとの旅程ではほとんど町には立ち寄っていませんでしたから。
 そうですか、もうそんな時期なのですね。

「こ、こうしてはいられませんわ、新年といえば」
「福袋だし!! でも、今年はそんなの用意する余裕なんてないし。あとはおせち料理とか?」
「それです!! 期間限定のおせち料理や縁起物グッズの数々が待っています……待っていませんでした、噓ですよね、申し込み期限が切れていますわ……ああ、終わりました」

 はい、今年度のフェイール商店の年末年始大セールは、無事に幕を閉じました。
 はぁ。いろいろと忙しすぎて、証人としての責務をすっかり忘れていましたわ。
 でも、その代わり未来ある二人が幸せになることができたので、それでよしとしておきましょう。

「んんん、お嬢や。ハマスタ王国には、旧正月という風習があってだな。新年ほど大々的には祝う事はないのだが、それも大切な行事として力強く根付いておるぞ。今の我々が使っている歴は『精霊歴』じゃが、このハマスタ王国では『地球歴』というものも使われている。これは勇者たちの世界の暦を参考に作られたものでな、ちょっとしたお祝いなどはこの地球歴というものを使用している」
「な、な、なんと!!」

 それならば、まだ頑張れます。
 ええ、今のうちに型録をチェックして、発注書を用意しなくてはなりませんね。

「クリスって、定番商品はあ~しが伝票を用意するから、クリスっちは限定商品を調べて発注するし。数は少し多めで、多少の在庫は覚悟の上で」
「そ、そうですね。ではこちらの型録をチェックしてください。私はこの期間限定商品を調べますので」

 ええ、実にいいタイミングです。
 この長い行列が途切れて、私たちの入国手続きが始まる前に発注書を用意しましょう。
 それに年末年始のプレゼントも用意しておかなくてはなりませんね。

………
……


――中継都市ミライ・ミナト
 無事に発注も完了。明日の朝には大量の商品が到着します。
 そして入国手続きもスムーズに終わり、私たちはようやく、ハマスタ王国の中継都市であるミライ・ミナトに到着しました。
 初めて見るハマスタ王国の風景。
 それは一言で表すと……

「うん、横浜中華街だし」
「え、なんでしょうか、そのヨコハマ超加害って」
「超加害じゃなくて、中華街だし。あ~しの故郷、勇者の国にある都市のひとつで、なんていうかとってもオリエンタルで料理がおいしい街だし」
「そうなのですかぁ……」

 城門を抜けて街道沿いに進みますと、巨大な門が姿を現しました。
 なんというか素敵な彫刻が施されていまして、実にスリムでシュッとしたドラゴンが絡みついているのは実に素敵です。

「んんん、あれが青龍を表している門ということは、朝陽門と同じ意味合いを持っているとおもうし。町の中の飾りつけも新年を祝う中華街に似たような雰囲気で、すっごく楽しいし!!」
「そうですね。人も大勢出ていますし、なにより露店がたくさんありますよ。街道沿いにびっしりと露店が並んでいるじゃありません……か……って、あれ、ひょっとして私、露店を出せない?」

 なんでしょう、このいやーな予感は。
 ひょっとして私、この国に呪われていませんか?

「あ~、年末年始の露店は、多分もう場所が埋まっているような気がしますし」
「く、クリムゾンさん、まっすぐに商業組合に向かってください、まずは露店の場所の確保、そして次が宿です」
「これだけ大勢の人がいるっていう事は、きっと宿も危ないし……」
「ま、まあ、そもそもの目的が露店ではなく、妖精王シアンさんに会うためですからね。露店は二の次ですよ、うんうん」
「それじゃあ、商業組合には寄らなくてよいのか?」
「うっ」

 いいですか、クリスティナ・フェイール、まずは落ち着きなさい。
 ここに来た目的は理解しています、一刻も早く妖精王シアンさんに会い、アリサちゃんの呪い……というか、魔王紋を解呪してもらわなくてはなりません。

「そういえばクリムゾンさん、妖精王シアンさんはどこにいるのでしょうか?」

 まずは最優先でシアンさんに会いましょう。
 
「ん~、ここに来たら大体の場所が分ると思っていたのじゃが……まあ、分かったといえば分かったが」

 そう告げて空を見上げています。
 なるほど、つまり妖精王シアンさんは、空にいるのですか。

「つまり妖精王シアンさんは空の上、浮遊都市ハマスタにいるのですね。ということはまず向かう先は国務庁舎ということですか」
「そういうことじゃな。ということで、このままミライ・ミナトを抜けて王都カ・ナガーワへと向かう事となるが、それでよいかな?」
「えぇっと、まず一晩でもいいので休みませんか? さすがに長旅でずっと馬車の中でしたから」

 とはいえ、このエセリアル馬車この中は快適空間です。
 空間拡張されているのでとても広く、宿泊設備も完璧です。
 ええ、そうですよ、久しぶりの街なので、ちょっとだけ羽を伸ばしたいのですよ。

「ふぅむ。お嬢はそう言っているが、柚木殿はどうかな?」
「食べ歩きしたいっし!! ということで、ミライ・ミナトで一泊したほうが良いと思うし。明日の朝、配達のペルソナっちに様子を聞けばいいんじゃないかなぁ」
「それもそうじゃな。では、まずは宿を探すとしようか」

 賛成でーす。
 ということで、ようやく馬車以外の場所で体を休めることができそうです。
 はあ、ほんと、早くすべてを終わらせて、アリサちゃんを解放してあげたいですよねぇ。
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