174 / 284
第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と
第252話・火事と喧嘩は港町の華……なのですか?
しおりを挟む
カバンのサンマルチノの一角をお借りして、臨時フェイール商店の営業開始となったのは良いのですが。
お客さんが一段落してきた夕方、むくつけき男たちが店内にズカズカとやってきまして。
なにやら責任者を出せと、ものすごい剣幕で怒鳴り散らしていたので、ソーゴさんが外に放り出しました。
現場からは以上です。
「クリス店長、ソーゴさんを止めなくていいのですか? あの人は商人であって冒険者でもなんでもないのですよね? もしもあの方が怪我でもしたら……」
「あ……そういえばそうなのですけれど。確か、そこそこ強かったのはクレアさんもご存知ですよね?」
「それでも、心配なのは事実ですから!」
不安そうな表情を浮かべながら、クレアさんが窓の外を眺めています。
たしかにあの人は商人ですけれど、自分から護衛を買って出たのですよ。
つまり腕っぷしには自信があるということではないでしょうか?
そう思って私もお客さんと一緒に入り口から外を眺めていますと、暴漢3人を相手に互角に喧嘩をしていますよ。武器は使わず、素手で戦っているというのはなんというか、凄いの一言に尽きますね。
「あっ、ソーゴさま後ろですっ!!」
「オーケイ。ありがとうクレアちゃんっと」
――ドッゴォォォッ
後ろから襲い来る暴漢の右パンチをしゃがんで躱すと、そのまま右足を大きく踏み込んで暴漢の左わき腹に拳を叩き込みました。
「ゴブッ……」
体をくの字に曲げつつ、口から何かを吐き出して倒れる暴漢2号さん。さらに近くにあった角材を手に、もう一人が走り込んできましたけれど。ソーゴさんは慌てることなく、上から振り下ろされる角材を左回し蹴りで横に蹴り飛ばすと、角材はたまたまその場にいた暴漢1号さんの顔面を痛打。
――ゴイィィィィィン
「あ、あれは痛いです、痛いなんてものじゃありませんよ」
「体を鍛えていなかったら、下手すりゃ瀕死だぞ……ソーゴさん、もうその辺で大丈夫だよ」
イブさんが私たちの後ろから声を掛けました。
その直後、路地から巡回騎士たちが飛んできて、暴漢たちをふんじばっていますけれど。
ソーゴさんの近くまで騎士たちが向かうと、なにやら話し合いが始まったようです。
それになにやら、雲行きが怪しくなってきたようにも見えますよ。
「お、おいおい。俺は被害者の方なんだが?」
「とりあえず、状況的には貴方が一方的に3人の無抵抗な男たちに暴力をふるっていたというふうに見えましたが」
「ちょっと待ってください、こちらの状況をご説明しますので」
急ぎ足で店から出て、目の前で押し問答のようになっているソーゴさんと騎士の元に駆け寄ります。
「君は?」
「私は、そこの『カバンのサンマルチノ』の店内で間借りしているフェイール商店の責任者です。こちらが商人ギルドの商会章と、これが身分証です。代表者名は私、クリスティナ・フェイールです、ご確認を」
そう説明している最中にも、別の騎士たちによって取り押さえられている暴漢たちがなやら文句を垂れています。やれ自分たちが被害者だの、客として店に来たのにいきなり外に放り出されて一方的に暴行されただのと。
これだけ目撃者がいるのですから、そのような嘘が通用するはずはありませんよ。
「隊長、目撃者から聞き取った話と、そこの男の状況が一致しました」
別の騎士が店の入り口付近にいたお客さんに事情を聴いてきたらしく、私の目の前にいる隊長らしい騎士に報告を行っています。これで誤解が解ければ問題はないのですけれど。
「ふぅむ。まあ、護衛としての仕事をしただけ、武器は使っていない。数は3人で多勢に無勢、目撃者の説明と状況も一致か……よし、そこの3人を牢にぶちこんでおけ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺たちはさ、ライト男爵に雇われている冒険者ですよ、主人の命令でそこのお嬢さんを連れて来いって言われただけなんだって」
「そうしたら、いきなりその男が俺たちを外に放り出したんだぜ? 悪いのはそっちだよな?」
それまでおどおどしていた暴漢たちが、ここにきて態度を一変。
堂々と自分たちの無罪を主張し始めましたが。
「ライト男爵……ああ、タイキッカ商会の会長か。まあ、その名前を出せば自分たちが有利になるとでも考えているのだろうが……名前を出した以上は、この件については詳しく調査させてもらうよ。迂闊に名前を出したら、タイキッカ商会まで確認に行く必要があるっていうことまでは、頭は回っていないようだな」
「「「ああっ!!」」」
はい、三人とも、アウトーです。
ゴロツキや不良雇われ冒険者が背後にいる親分の名前を出した場合。
容易く権力に屈して無罪放免となるか、それともこのタイミングで細かいところまで調査されるかの二択しかないんですけれどね。
実家であるアーレスト商会でも、まったく関わりのないチンピラがうちの名前を出したということがありまして。王都の巡回騎士が本店まで来たことがあるのですよ。
その件はまあ、置いておくとして。
暴漢たちは真っ青な顔になって、そのまま連行されていきました。
はぁ、それでは急いで店に戻りましょうか。
………
……
…
店内に戻ると、クレアさんとキリコさんがお客さんの応対をしてくれていました。
「店長、急ぎ雑貨コーナーの応対を!! キリコさんが目を回しそうですよ」
「ふぁぁぁい。このナイフとフォークはセットなので一つの商品だったような……はい、えぇっと、では5つずつで5セットですね? こっちのタオルもセットだろうって? て、てんちょぉぉぉぉぉぉ!!」
「はいはい、今、代わりますね。お疲れ様でした」
私を見たキリコさんが涙目で助けを求めていますので、急ぎ裏から臨時カウンターの中に潜り込みましたよ
「ごめんなさい。あとは私が引き受けますので、キリコさんは試飲コーナー戻っていただいて結構ですよ。まずはいっぱい、自分が飲んで体を休めてくださいね。あのハーブティーは疲れた心も癒す効果があるって説明に書いてありましたから」
「ふぁ、ふぁぁぁぁい」
試飲コーナーに移動したキリコさんは、さっそくカモミールとローズマリーのブレンドされたハーブティーを飲んでいます。その香りに引き寄せられるように、数名のお客さんもフラフラと試飲コーナーへと移動していきました。
さて、それではお客さんのご迷惑をお掛けした分、サービス向上に努めなくてはなりませんね。
「はい、大変ご迷惑をお掛けしました。皆さまの楽しいひと時を奪ってしまった償いとして、今から夕方6つの鐘が鳴るまで、全商品2割引きとさせていただきます!!」
「「て、店長!!」」
ああっ、キリコさんとクレアさんの絶叫が聞こえます。
でも、2割引きで目をキラーンと輝かせているお客さんにとっては、クレアさんの担当の衣料品やキリコさんの試飲コーナーはあまり関係がないようで。
むしろ二割引きならばと、私が担当している日用雑貨にお客が殺到しています。
さあ、ここからが私のターンです。
――バッグのサンマルチノ・カウンター
「ねぇイブさん。あっちのお店は2割引きだってさ。こっちは?」
「そんなはずがないでしょうが。そもそも、タイキッカ商会の連中は喧嘩っ早くて口が回るっていうぐらい、あんたたちも知っているじゃないか。だから外で喧嘩が起きても、それを眺めているだけで逃げも隠れもしなかったでしょうが」
いっつも冷やかしにやってくる主婦の一人が、そう私に話しかけて来る。
今、彼女が使っているバッグもうちの商品だし、ご近所のひとたちはうちの籐製バッグを愛用してくれているんだけれど。
うちがいつも暇なので、店の前にある広場でお茶を飲んでは、ひやかしに入ってくる。
でも、今日はフェイール商店が店内で臨時開店したため、いち早く駆けつけては色々な商品を購入していたらしい。
「あはは。確かにねぇ。でもさ、あの子は大丈夫なのかい? ライト男爵に目を付けられたら、個人商店なんて仕入れ先や荷馬車が潰されるんじゃないかい?」
「まあ、彼女がここにいるのは臨時店舗で、このあとは王都に向かうんだってさ。だから大丈夫じゃないかい?」
「それならいいんだけれどさ……でも、あれだけの品ぞろえだったら、ずっとこの街にいて貰いたいんだけれどねぇ」
うーん。
それは難しいだろうなぁ。
彼女は海向こうのハーバリオス王国から来たっていう話だったし、どうせ王都で商売を終えたら本国に帰還するだろうからさ。
「あはは、まあ、確かに彼女の扱っている商品は、このあたりでは流通していないぐらい珍しいし、高級品もあるからねぇ……私も、色々と買わせてもらいたいんだけれどさ」
「だったら、買ってあげればいいじゃない?」
「そのためにも、うちの商品を販売しないとだめなんだよねぇ……」
「あら。そろそろ帰って食事の準備しないと……それじゃあね~」
そういつもの口調で帰っていく奥さん。
うん、ここから見えるだけでも、フェイールさんはお客さんをしっかりと捕まえたようだし。
でも、ライト男爵が動いている……ねぇ。
少し警戒するように、ソーゴさんにも話を通しておいた方がよさそうだね。
お客さんが一段落してきた夕方、むくつけき男たちが店内にズカズカとやってきまして。
なにやら責任者を出せと、ものすごい剣幕で怒鳴り散らしていたので、ソーゴさんが外に放り出しました。
現場からは以上です。
「クリス店長、ソーゴさんを止めなくていいのですか? あの人は商人であって冒険者でもなんでもないのですよね? もしもあの方が怪我でもしたら……」
「あ……そういえばそうなのですけれど。確か、そこそこ強かったのはクレアさんもご存知ですよね?」
「それでも、心配なのは事実ですから!」
不安そうな表情を浮かべながら、クレアさんが窓の外を眺めています。
たしかにあの人は商人ですけれど、自分から護衛を買って出たのですよ。
つまり腕っぷしには自信があるということではないでしょうか?
そう思って私もお客さんと一緒に入り口から外を眺めていますと、暴漢3人を相手に互角に喧嘩をしていますよ。武器は使わず、素手で戦っているというのはなんというか、凄いの一言に尽きますね。
「あっ、ソーゴさま後ろですっ!!」
「オーケイ。ありがとうクレアちゃんっと」
――ドッゴォォォッ
後ろから襲い来る暴漢の右パンチをしゃがんで躱すと、そのまま右足を大きく踏み込んで暴漢の左わき腹に拳を叩き込みました。
「ゴブッ……」
体をくの字に曲げつつ、口から何かを吐き出して倒れる暴漢2号さん。さらに近くにあった角材を手に、もう一人が走り込んできましたけれど。ソーゴさんは慌てることなく、上から振り下ろされる角材を左回し蹴りで横に蹴り飛ばすと、角材はたまたまその場にいた暴漢1号さんの顔面を痛打。
――ゴイィィィィィン
「あ、あれは痛いです、痛いなんてものじゃありませんよ」
「体を鍛えていなかったら、下手すりゃ瀕死だぞ……ソーゴさん、もうその辺で大丈夫だよ」
イブさんが私たちの後ろから声を掛けました。
その直後、路地から巡回騎士たちが飛んできて、暴漢たちをふんじばっていますけれど。
ソーゴさんの近くまで騎士たちが向かうと、なにやら話し合いが始まったようです。
それになにやら、雲行きが怪しくなってきたようにも見えますよ。
「お、おいおい。俺は被害者の方なんだが?」
「とりあえず、状況的には貴方が一方的に3人の無抵抗な男たちに暴力をふるっていたというふうに見えましたが」
「ちょっと待ってください、こちらの状況をご説明しますので」
急ぎ足で店から出て、目の前で押し問答のようになっているソーゴさんと騎士の元に駆け寄ります。
「君は?」
「私は、そこの『カバンのサンマルチノ』の店内で間借りしているフェイール商店の責任者です。こちらが商人ギルドの商会章と、これが身分証です。代表者名は私、クリスティナ・フェイールです、ご確認を」
そう説明している最中にも、別の騎士たちによって取り押さえられている暴漢たちがなやら文句を垂れています。やれ自分たちが被害者だの、客として店に来たのにいきなり外に放り出されて一方的に暴行されただのと。
これだけ目撃者がいるのですから、そのような嘘が通用するはずはありませんよ。
「隊長、目撃者から聞き取った話と、そこの男の状況が一致しました」
別の騎士が店の入り口付近にいたお客さんに事情を聴いてきたらしく、私の目の前にいる隊長らしい騎士に報告を行っています。これで誤解が解ければ問題はないのですけれど。
「ふぅむ。まあ、護衛としての仕事をしただけ、武器は使っていない。数は3人で多勢に無勢、目撃者の説明と状況も一致か……よし、そこの3人を牢にぶちこんでおけ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺たちはさ、ライト男爵に雇われている冒険者ですよ、主人の命令でそこのお嬢さんを連れて来いって言われただけなんだって」
「そうしたら、いきなりその男が俺たちを外に放り出したんだぜ? 悪いのはそっちだよな?」
それまでおどおどしていた暴漢たちが、ここにきて態度を一変。
堂々と自分たちの無罪を主張し始めましたが。
「ライト男爵……ああ、タイキッカ商会の会長か。まあ、その名前を出せば自分たちが有利になるとでも考えているのだろうが……名前を出した以上は、この件については詳しく調査させてもらうよ。迂闊に名前を出したら、タイキッカ商会まで確認に行く必要があるっていうことまでは、頭は回っていないようだな」
「「「ああっ!!」」」
はい、三人とも、アウトーです。
ゴロツキや不良雇われ冒険者が背後にいる親分の名前を出した場合。
容易く権力に屈して無罪放免となるか、それともこのタイミングで細かいところまで調査されるかの二択しかないんですけれどね。
実家であるアーレスト商会でも、まったく関わりのないチンピラがうちの名前を出したということがありまして。王都の巡回騎士が本店まで来たことがあるのですよ。
その件はまあ、置いておくとして。
暴漢たちは真っ青な顔になって、そのまま連行されていきました。
はぁ、それでは急いで店に戻りましょうか。
………
……
…
店内に戻ると、クレアさんとキリコさんがお客さんの応対をしてくれていました。
「店長、急ぎ雑貨コーナーの応対を!! キリコさんが目を回しそうですよ」
「ふぁぁぁい。このナイフとフォークはセットなので一つの商品だったような……はい、えぇっと、では5つずつで5セットですね? こっちのタオルもセットだろうって? て、てんちょぉぉぉぉぉぉ!!」
「はいはい、今、代わりますね。お疲れ様でした」
私を見たキリコさんが涙目で助けを求めていますので、急ぎ裏から臨時カウンターの中に潜り込みましたよ
「ごめんなさい。あとは私が引き受けますので、キリコさんは試飲コーナー戻っていただいて結構ですよ。まずはいっぱい、自分が飲んで体を休めてくださいね。あのハーブティーは疲れた心も癒す効果があるって説明に書いてありましたから」
「ふぁ、ふぁぁぁぁい」
試飲コーナーに移動したキリコさんは、さっそくカモミールとローズマリーのブレンドされたハーブティーを飲んでいます。その香りに引き寄せられるように、数名のお客さんもフラフラと試飲コーナーへと移動していきました。
さて、それではお客さんのご迷惑をお掛けした分、サービス向上に努めなくてはなりませんね。
「はい、大変ご迷惑をお掛けしました。皆さまの楽しいひと時を奪ってしまった償いとして、今から夕方6つの鐘が鳴るまで、全商品2割引きとさせていただきます!!」
「「て、店長!!」」
ああっ、キリコさんとクレアさんの絶叫が聞こえます。
でも、2割引きで目をキラーンと輝かせているお客さんにとっては、クレアさんの担当の衣料品やキリコさんの試飲コーナーはあまり関係がないようで。
むしろ二割引きならばと、私が担当している日用雑貨にお客が殺到しています。
さあ、ここからが私のターンです。
――バッグのサンマルチノ・カウンター
「ねぇイブさん。あっちのお店は2割引きだってさ。こっちは?」
「そんなはずがないでしょうが。そもそも、タイキッカ商会の連中は喧嘩っ早くて口が回るっていうぐらい、あんたたちも知っているじゃないか。だから外で喧嘩が起きても、それを眺めているだけで逃げも隠れもしなかったでしょうが」
いっつも冷やかしにやってくる主婦の一人が、そう私に話しかけて来る。
今、彼女が使っているバッグもうちの商品だし、ご近所のひとたちはうちの籐製バッグを愛用してくれているんだけれど。
うちがいつも暇なので、店の前にある広場でお茶を飲んでは、ひやかしに入ってくる。
でも、今日はフェイール商店が店内で臨時開店したため、いち早く駆けつけては色々な商品を購入していたらしい。
「あはは。確かにねぇ。でもさ、あの子は大丈夫なのかい? ライト男爵に目を付けられたら、個人商店なんて仕入れ先や荷馬車が潰されるんじゃないかい?」
「まあ、彼女がここにいるのは臨時店舗で、このあとは王都に向かうんだってさ。だから大丈夫じゃないかい?」
「それならいいんだけれどさ……でも、あれだけの品ぞろえだったら、ずっとこの街にいて貰いたいんだけれどねぇ」
うーん。
それは難しいだろうなぁ。
彼女は海向こうのハーバリオス王国から来たっていう話だったし、どうせ王都で商売を終えたら本国に帰還するだろうからさ。
「あはは、まあ、確かに彼女の扱っている商品は、このあたりでは流通していないぐらい珍しいし、高級品もあるからねぇ……私も、色々と買わせてもらいたいんだけれどさ」
「だったら、買ってあげればいいじゃない?」
「そのためにも、うちの商品を販売しないとだめなんだよねぇ……」
「あら。そろそろ帰って食事の準備しないと……それじゃあね~」
そういつもの口調で帰っていく奥さん。
うん、ここから見えるだけでも、フェイールさんはお客さんをしっかりと捕まえたようだし。
でも、ライト男爵が動いている……ねぇ。
少し警戒するように、ソーゴさんにも話を通しておいた方がよさそうだね。
194
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
楠ノ木雫
恋愛
朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。
テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。
「お前との婚約は破棄だ」
ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)
婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?
歩芽川ゆい
ファンタジー
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」
コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。
プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。
思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。
声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」
みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。
というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。
なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。
そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。
何か裏がある――
相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。
でも、非力なリコリスには何も手段がない。
しかし、そんな彼女にも救いの手が……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。