俺のオヤジはビジュアル系です。

ひよく

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将太

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「将太、将太。」

俺を呼ぶ声が聞こえて、目を覚ました。
昨日は、いつの間に寝たんだっけ?
よく覚えていない。

俺は身を起こした。

「もう学校の時間だが…行けそうか?どうしても辛いなら、今日は休んでもいいぞ。」

俺の顔を覗き込み、心配そうに訊いてくる。
そうだ。
昨日は泣きながら、寝ちゃったんだ。
この人が、俺を布団で寝かせてくれたのだろう。

「大丈夫です。行けます。もう随分、休んじゃって、出席日数もヤバイし。」
「そうか、わかった。でも、無理はするなよ。」

こういう事、昔もあった気がする。
オフクロが死んですぐの頃。
頼介の腕の中で、一晩中泣いて、気が付くとちゃんと布団で寝かされていた。
そんな昔の事が思い出される。

いつもは俺が用意している朝飯は、今日はこの人が用意してくれた。
ショックを受けたのは、この人も同じはずなのに。
自分も腫れぼったい目をしながら、俺の事を気遣ってくれる。

この人が作った味噌汁をすする。

ちくしょう…。
よく似た兄弟だと思っていたけれど、味噌汁の味まで頼介とそっくりだ。
どうしたって、頼介の事を考えてしまう。

なんで、こんな事になってしまったのだろう?

俺が頼介を‘捨てた’なんて…。
どうして、アイツはそんな風に…。

アイツはまだ若いから、俺さえ居なくなれば、好きな女と新しい家庭を持つ事だってできる。
‘親’を殴り倒すような‘息子’は、消えた方がいい。

俺はそう考えたんだ。

否、それだけじゃない。
もうひとつ、大きな理由があった。

俺は頼介に対して、本来、‘親’に抱くはずのない感情を抱いている事に気が付いた。
小さい頃、まだ純粋に頼介に甘えていただけの時にはなかった感情。
いつの頃からか、頼介に抱いていたこの気持ち。

それがはっきりとわかったのは、頼介が俺に殴られて怪我をして、自宅で療養していた時だった。

身体を拭いたり、着替えさせたり。
動けないアイツの身体に触れる度、俺の中にあってはならない衝動が沸き起こった。

こんな気持ちを隠し持ったまま、‘親子’として、暮らし続ける事はできない。

そう思って、俺は逃げ出した。
でも、行く当てなんてないから、実の父親であるこの人の所に逃げ込んだ。

今まで俺に何もしてくれなかった実父。

だからこそ、俺に引け目があるだろうと思った。
それに、付け込もうとした。
卑怯な考え方だ。

それなのに、この人は優しく俺を受け入れてくれた。

だけど、頼介の事はいつも頭から離れなかった。
それでも、こんな風になっているだなんて、思いもしなかった。
俺が居なくなっても、頼介は自分のペースで生活しているものとばかり思い込んでいたんだ。

話で聞いただけの、頼介の今の姿を想像してしまう。

薬でわざとボンヤリさせられて…。
身体もガリガリに痩せて…。
どれ程、痛ましい姿だろう。

頼介…。
俺はどうすればいいんだ?

すると、きつく握りしめて白くなった俺の拳の上に、あの人がそっと自分の手を置いてくれた。

「お前の気持ちは、いずれ頼介もわかってくれる。今、頼介の傍には銀司がいる。今は銀司に任せよう。」

俺は涙を拭きながら、黙って頷いた。
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