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蓮介
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頼介との面会が許された。
限られた人数と時間ではあるが。
頼介が育てたという俺の息子…将太が、当然ながら、一番に入った。
その将太は、涙を堪えるような様子で、ICUから出てきた。
そうして、次に指名されたのは銀司だ。
俺は頼介にどんな顔をして会って良いのかわからない。
いくら、頼介が今、意識のない状態だからと言って、顔を合わすのが怖かった。
だから、銀司が俺の方を見た時、思わず、視線を外してしまった。
すると、怒ったように、銀司は俺に冷たい口調で次は自分が頼介に会うと宣言した。
だが、俺も頼介に会いたくないわけではない。
正直言って、将太よりも頼介に会いたかったんだ。
緊急時という事もあるが、将太に会っても、あまり感激とか感慨とか、そういった感情は芽生えなかった。
多分、向こうも同じようなものだろう。
銀司が面会を終えた時、何やらぼんやりとした表情だった。
俺は思い切って、言ってみた。
「次は俺が入りたい」
銀司は面白くなさそうに、言い返してきた。
「さっきは入りたくなさそうだったじゃないか。相変わらず、気が変わるのが早い男だな」
だが、将太が間に入ってくれた。
「この人…は頼介を助けてくれたんですよ。当然の権利ですよ」
将太は、俺の事をなんて呼べば良いのか迷っているような感じだった。
そりゃ、そうだろうな。
俺だって、将太とも将太君とも呼びずらい。
だけど、そのおかげで、次は俺が入る事ができた。
久々に見た頼介の顔は、10年前と変わっていなかった。
もう少し大人っぽくなっていると思っていたんだが、寝顔のせいもあってか、まだ幼さを感じた。
と同時に、この幼さを残した頼介が、立派に将太を育てていた事に驚きを隠せなかった。
「すまない…頼介」
俺は思わず呟いていた。
ふと、頼介の顔が歪んだ。
今まで苦痛を感じている様子はなかったのに。
取り付けられている機械からも、音が鳴り始めた。
「おい!頼介!」
バタバタと医師が入ってくる。
「先生!」
慌てて助けを求めるように医師の顔を見たら、意外に医師はほっとしたような顔をしていた。
「頼介!?」
呼びかけると、ぼんやりと頼介が目を覚ました。
「将太?」
数十秒の時間をおいて、頼介が言葉を発した。
俺の顔を見つめていたが、俺とは違う人物の名前を呼んでいた。
まだ意識がはっきりとしていないのかもしれない。
「違う。俺だ」
俺はできるだけ脅かさないよう、優しくそう言葉をかけた。
「…兄ちゃん?」
「そうだ」
俺達の様子を見ながら、医師が頼介に名前や年齢などを尋ねた。
頼介はその質問に、正確に答える事ができた。
それに俺も医師もほっとして、医師は外の皆にこの事を伝えると言って、出て行った。
俺はまた頼介と2人きりになった。
「どこか痛むか?」
俺は頼介に尋ねた。
「全部痛い…」
「そうか…そりゃそうだろうな」
「兄ちゃん、来てくれたんだ」
「当たり前だろう。お前、もう少しで死ぬところだったんだぞ」
そこまで言うと会話が途切れた。
頼介は喋るのも辛そうだったし、俺も何を喋って良いかわからなかったし。
医師が呼びに来たのを幸いに、俺はICUから出て行った。
だけど、頼介の下から離れると、気が抜けたように涙が溢れた。
嬉しくて嬉しくて、堪らなかった。
限られた人数と時間ではあるが。
頼介が育てたという俺の息子…将太が、当然ながら、一番に入った。
その将太は、涙を堪えるような様子で、ICUから出てきた。
そうして、次に指名されたのは銀司だ。
俺は頼介にどんな顔をして会って良いのかわからない。
いくら、頼介が今、意識のない状態だからと言って、顔を合わすのが怖かった。
だから、銀司が俺の方を見た時、思わず、視線を外してしまった。
すると、怒ったように、銀司は俺に冷たい口調で次は自分が頼介に会うと宣言した。
だが、俺も頼介に会いたくないわけではない。
正直言って、将太よりも頼介に会いたかったんだ。
緊急時という事もあるが、将太に会っても、あまり感激とか感慨とか、そういった感情は芽生えなかった。
多分、向こうも同じようなものだろう。
銀司が面会を終えた時、何やらぼんやりとした表情だった。
俺は思い切って、言ってみた。
「次は俺が入りたい」
銀司は面白くなさそうに、言い返してきた。
「さっきは入りたくなさそうだったじゃないか。相変わらず、気が変わるのが早い男だな」
だが、将太が間に入ってくれた。
「この人…は頼介を助けてくれたんですよ。当然の権利ですよ」
将太は、俺の事をなんて呼べば良いのか迷っているような感じだった。
そりゃ、そうだろうな。
俺だって、将太とも将太君とも呼びずらい。
だけど、そのおかげで、次は俺が入る事ができた。
久々に見た頼介の顔は、10年前と変わっていなかった。
もう少し大人っぽくなっていると思っていたんだが、寝顔のせいもあってか、まだ幼さを感じた。
と同時に、この幼さを残した頼介が、立派に将太を育てていた事に驚きを隠せなかった。
「すまない…頼介」
俺は思わず呟いていた。
ふと、頼介の顔が歪んだ。
今まで苦痛を感じている様子はなかったのに。
取り付けられている機械からも、音が鳴り始めた。
「おい!頼介!」
バタバタと医師が入ってくる。
「先生!」
慌てて助けを求めるように医師の顔を見たら、意外に医師はほっとしたような顔をしていた。
「頼介!?」
呼びかけると、ぼんやりと頼介が目を覚ました。
「将太?」
数十秒の時間をおいて、頼介が言葉を発した。
俺の顔を見つめていたが、俺とは違う人物の名前を呼んでいた。
まだ意識がはっきりとしていないのかもしれない。
「違う。俺だ」
俺はできるだけ脅かさないよう、優しくそう言葉をかけた。
「…兄ちゃん?」
「そうだ」
俺達の様子を見ながら、医師が頼介に名前や年齢などを尋ねた。
頼介はその質問に、正確に答える事ができた。
それに俺も医師もほっとして、医師は外の皆にこの事を伝えると言って、出て行った。
俺はまた頼介と2人きりになった。
「どこか痛むか?」
俺は頼介に尋ねた。
「全部痛い…」
「そうか…そりゃそうだろうな」
「兄ちゃん、来てくれたんだ」
「当たり前だろう。お前、もう少しで死ぬところだったんだぞ」
そこまで言うと会話が途切れた。
頼介は喋るのも辛そうだったし、俺も何を喋って良いかわからなかったし。
医師が呼びに来たのを幸いに、俺はICUから出て行った。
だけど、頼介の下から離れると、気が抜けたように涙が溢れた。
嬉しくて嬉しくて、堪らなかった。
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