20 / 72
第2章
雨空に焦がれて-1
しおりを挟む
*
次の授業のため音楽室へ行こうとしたとき、廊下の向こうから神々しいオーラを放って悠然と歩く一人の男子生徒の姿が見えた。
生徒会長の、藤川先輩だ。
背も高いしスタイルが良いので、本人にそのつもりはなくとも嫌でも目立つ。
目があってはいけないと思った私は若干下を向き、教科書を抱きしめ廊下の端の方を歩いた。
積極的な女子は、廊下の窓からキラキラと降り注ぐ太陽光を浴びた彼を、じっと熱い目差しで見つめている。
いい香りまで漂ってきそうな藤川先輩とすれ違いかけたとき。
なぜか彼はちょうど斜め前で立ち止まり、私のことを見下ろしてきた。
突然の事態にパニックになる私。冷や汗までもが出そうになってくる。
彼のような人が私に用事などあるわけがない。
お辞儀をしてそのまま去ろうとしたのに、藤川先輩の手が私の二の腕を掴んだ。
「ちょっと待って」
低めの甘い声が耳をくすぐる。
軽く腰をかがめ、私の顔を検品するかのようにじっくりと眺めてくる。
間近で見た藤川先輩は、柔らかく微笑みながらも鋭い目尻が特徴的な、冷たくて近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
例えば。表の顔は真面目で優しいけれど、心の底では残酷なことを密かに企んでいる、腹黒なタイプに思えた。
「ねえ、君。生徒会に興味ある?」
「え……?」
あくまで相手を怖がらせないためか、柔らかく喋りかける生徒会長。
でもあいにく、私は生徒会に興味はない。美術部のことで精一杯だから。
「良かったら、一緒に生徒会やらない? 人手不足で困ってるんだ」
「えっと、あの……私は……」
どうやって穏便に断ろうか、考えを巡らせていたとき。
「藤川。白坂さんに何の用?」
背後から声がかかり、振り向くと斜め後ろの位置に柏木先輩が立っていた。
「……その手、離してくれる?」
ゆっくりとした低い声がさらに近づき、藤川先輩に掴まれていた腕はその声により自然と緩む。
その隙に柏木先輩が私の手首を引き、藤川先輩との距離が開いた。
バランスを崩した私の体は、微かに柏木先輩の制服に触れ、ドキリとする。
次の授業のため音楽室へ行こうとしたとき、廊下の向こうから神々しいオーラを放って悠然と歩く一人の男子生徒の姿が見えた。
生徒会長の、藤川先輩だ。
背も高いしスタイルが良いので、本人にそのつもりはなくとも嫌でも目立つ。
目があってはいけないと思った私は若干下を向き、教科書を抱きしめ廊下の端の方を歩いた。
積極的な女子は、廊下の窓からキラキラと降り注ぐ太陽光を浴びた彼を、じっと熱い目差しで見つめている。
いい香りまで漂ってきそうな藤川先輩とすれ違いかけたとき。
なぜか彼はちょうど斜め前で立ち止まり、私のことを見下ろしてきた。
突然の事態にパニックになる私。冷や汗までもが出そうになってくる。
彼のような人が私に用事などあるわけがない。
お辞儀をしてそのまま去ろうとしたのに、藤川先輩の手が私の二の腕を掴んだ。
「ちょっと待って」
低めの甘い声が耳をくすぐる。
軽く腰をかがめ、私の顔を検品するかのようにじっくりと眺めてくる。
間近で見た藤川先輩は、柔らかく微笑みながらも鋭い目尻が特徴的な、冷たくて近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
例えば。表の顔は真面目で優しいけれど、心の底では残酷なことを密かに企んでいる、腹黒なタイプに思えた。
「ねえ、君。生徒会に興味ある?」
「え……?」
あくまで相手を怖がらせないためか、柔らかく喋りかける生徒会長。
でもあいにく、私は生徒会に興味はない。美術部のことで精一杯だから。
「良かったら、一緒に生徒会やらない? 人手不足で困ってるんだ」
「えっと、あの……私は……」
どうやって穏便に断ろうか、考えを巡らせていたとき。
「藤川。白坂さんに何の用?」
背後から声がかかり、振り向くと斜め後ろの位置に柏木先輩が立っていた。
「……その手、離してくれる?」
ゆっくりとした低い声がさらに近づき、藤川先輩に掴まれていた腕はその声により自然と緩む。
その隙に柏木先輩が私の手首を引き、藤川先輩との距離が開いた。
バランスを崩した私の体は、微かに柏木先輩の制服に触れ、ドキリとする。
0
あなたにおすすめの小説
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる