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第3章
隣の席-2
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「結衣ー! お待たせ!」
遠くから、手を振る未琴の姿が確認でき、先輩二人の軽口はいつの間にか中断していた。
「未琴、おはよう」
手を振り返しながら、彼女の両隣にいる人に気づき、笑顔のまま固まる。
「あっ。白坂さん」
すらりとスタイルの良い未琴よりも、さらに背の高い女の子――椎名さんが爽やかな笑顔で軽く手を上げる。
そして……、半歩遅れて歩くのは。
無愛想に肩に鞄を引っ掛けた、真鳥だった。
「結衣、真鳥と緋彩も誘っちゃった」
仲良くなりたいと常々思っていた椎名さんは良いとして、なぜ真鳥も?
(真鳥は、呼んじゃ駄目だよ……)
私の不満が顔に出ていたのか、すぐに未琴は説明してくれる。
「真鳥と緋彩も同じクラスになるらしいから、呼んだんだ。二人は小学校の頃からの幼なじみなんだって」
「……そっか。幼なじみ、なんだね」
私は特に問題ないフリをして未琴に言葉を返した。
――真鳥を見ると、なぜか不安に駆られる。弱みを握られているような、そんな気になってくる。
だからあまり、目が合わないように気をつけた。
心を見透かされて、全てを暴かれてしまわないために。
電車が到着し、自由席の車両に乗り込んだ私は、まず自分たちの席順で悩むはめになった。
柏木先輩の近くがいいけれど、そんな図々しいことは皆の前で言い出せるわけがなく。空いている席を探す未琴の後に続いた。
ちょうど奥の辺りに空席が目立ち、私たちはそこを選ぶことにする。
「白坂さん。窓際の席でいい?」
さりげなく柏木先輩から話しかけられ、心臓がドクンと飛び跳ねる。
「はい。……ありがとうございます」
まるで最初からそう決まっていたかのように、柏木先輩は私の隣のシートに座ることになった。
進行方向とは反対に座席を回転させた千尋先輩は、私と向かい合わせで座り、未琴はその隣に落ち着く。
通路を挟んだ右隣は、親しげに会話を続ける椎名さんと真鳥が腰を下ろした。
すぐ隣にいる柏木先輩と肩が触れ合いそうな近距離に、緊張で体が強張る。
(どうしよう、心臓が壊れそう……)
けれど先輩は平然としていて、私は女として見られていないのかもしれないと気づかされた。
たとえば、私のことを妹のように思っているだけとか。
遠くから、手を振る未琴の姿が確認でき、先輩二人の軽口はいつの間にか中断していた。
「未琴、おはよう」
手を振り返しながら、彼女の両隣にいる人に気づき、笑顔のまま固まる。
「あっ。白坂さん」
すらりとスタイルの良い未琴よりも、さらに背の高い女の子――椎名さんが爽やかな笑顔で軽く手を上げる。
そして……、半歩遅れて歩くのは。
無愛想に肩に鞄を引っ掛けた、真鳥だった。
「結衣、真鳥と緋彩も誘っちゃった」
仲良くなりたいと常々思っていた椎名さんは良いとして、なぜ真鳥も?
(真鳥は、呼んじゃ駄目だよ……)
私の不満が顔に出ていたのか、すぐに未琴は説明してくれる。
「真鳥と緋彩も同じクラスになるらしいから、呼んだんだ。二人は小学校の頃からの幼なじみなんだって」
「……そっか。幼なじみ、なんだね」
私は特に問題ないフリをして未琴に言葉を返した。
――真鳥を見ると、なぜか不安に駆られる。弱みを握られているような、そんな気になってくる。
だからあまり、目が合わないように気をつけた。
心を見透かされて、全てを暴かれてしまわないために。
電車が到着し、自由席の車両に乗り込んだ私は、まず自分たちの席順で悩むはめになった。
柏木先輩の近くがいいけれど、そんな図々しいことは皆の前で言い出せるわけがなく。空いている席を探す未琴の後に続いた。
ちょうど奥の辺りに空席が目立ち、私たちはそこを選ぶことにする。
「白坂さん。窓際の席でいい?」
さりげなく柏木先輩から話しかけられ、心臓がドクンと飛び跳ねる。
「はい。……ありがとうございます」
まるで最初からそう決まっていたかのように、柏木先輩は私の隣のシートに座ることになった。
進行方向とは反対に座席を回転させた千尋先輩は、私と向かい合わせで座り、未琴はその隣に落ち着く。
通路を挟んだ右隣は、親しげに会話を続ける椎名さんと真鳥が腰を下ろした。
すぐ隣にいる柏木先輩と肩が触れ合いそうな近距離に、緊張で体が強張る。
(どうしよう、心臓が壊れそう……)
けれど先輩は平然としていて、私は女として見られていないのかもしれないと気づかされた。
たとえば、私のことを妹のように思っているだけとか。
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