3度目に、君を好きになったとき

なつぎりあお

文字の大きさ
30 / 72
第3章

隣の席-2

しおりを挟む
「結衣ー! お待たせ!」

 遠くから、手を振る未琴の姿が確認でき、先輩二人の軽口はいつの間にか中断していた。


「未琴、おはよう」

 手を振り返しながら、彼女の両隣にいる人に気づき、笑顔のまま固まる。


「あっ。白坂さん」

 すらりとスタイルの良い未琴よりも、さらに背の高い女の子――椎名さんが爽やかな笑顔で軽く手を上げる。

 そして……、半歩遅れて歩くのは。
 無愛想に肩に鞄を引っ掛けた、真鳥だった。


「結衣、真鳥と緋彩ひいろも誘っちゃった」

 仲良くなりたいと常々思っていた椎名さんは良いとして、なぜ真鳥も?


(真鳥は、呼んじゃ駄目だよ……)

 私の不満が顔に出ていたのか、すぐに未琴は説明してくれる。


「真鳥と緋彩も同じクラスになるらしいから、呼んだんだ。二人は小学校の頃からの幼なじみなんだって」
「……そっか。幼なじみ、なんだね」

 私は特に問題ないフリをして未琴に言葉を返した。

 ――真鳥を見ると、なぜか不安に駆られる。弱みを握られているような、そんな気になってくる。
 だからあまり、目が合わないように気をつけた。
 心を見透かされて、全てを暴かれてしまわないために。

 電車が到着し、自由席の車両に乗り込んだ私は、まず自分たちの席順で悩むはめになった。
 柏木先輩の近くがいいけれど、そんな図々しいことは皆の前で言い出せるわけがなく。空いている席を探す未琴の後に続いた。
 ちょうど奥の辺りに空席が目立ち、私たちはそこを選ぶことにする。


「白坂さん。窓際の席でいい?」

 さりげなく柏木先輩から話しかけられ、心臓がドクンと飛び跳ねる。


「はい。……ありがとうございます」

 まるで最初からそう決まっていたかのように、柏木先輩は私の隣のシートに座ることになった。

 進行方向とは反対に座席を回転させた千尋先輩は、私と向かい合わせで座り、未琴はその隣に落ち着く。
 通路を挟んだ右隣は、親しげに会話を続ける椎名さんと真鳥が腰を下ろした。

 すぐ隣にいる柏木先輩と肩が触れ合いそうな近距離に、緊張で体が強張る。


(どうしよう、心臓が壊れそう……)

 けれど先輩は平然としていて、私は女として見られていないのかもしれないと気づかされた。
 たとえば、私のことを妹のように思っているだけとか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。 王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。 『…本当にすまない、ジュンリヤ』 『謝らないで、覚悟はできています』 敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。 ――たった三年間の別れ…。 三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。 『王妃様、シャンナアンナと申します』 もう私の居場所はなくなっていた…。 ※設定はゆるいです。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

処理中です...