異世界<おせっかい>人情ラプソディ~いや、『おせっかいスキル』で無双って何⁉️~

立沢るうど

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第三話……旅の始まり!

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 実はまだ、たすくに聞いていないことがあった。
 ただ、これは私からは聞けないことだ。流石の私でも分かる。

 あの時のたすくには説得力があった。
 『時間しか癒せない』と言った時の表情とニュアンスから、親しい人を間違いなく失っていると分かったから。
 興味本位で聞いても意味はないし、それこそ、せっかくの時間を巻き戻してしまい、苦痛を思い出させるだけだ。

 しかし私は、いつかその話を聞けるだろうという確信があった。これから始まる旅の中で。

「とりあえず、ラピスが言っていた村か町に行ってみないか? この世界のことも知りたいし、これからの生活がどうなるのかも検討が付けられる」
「いいよ、それで。服も乾いたし。あ、でも、この森って他にもラピスみたいな動物……って言うか、私達からすればモンスターなんだけど、そういうのいるんじゃないの? 危険じゃない?」
「いるけど、私の前には出てこないよ。怖がられてるのかも。私、結構強いらしいし」

「そうなのか。じゃあ、ラピスを先頭に、俺がシンガリで周囲に注意を払いながら、進もうか。ラピスとみかも何か見えたら、すぐに知らせてくれ」

 どうやら、色々話している間に、たすくはラピスの声を聞ける『モード』に入ったらしい。会話の中で満たした条件があるのだろうか。

「お、ゲームの冒険者パーティーっぽい隊列だね」
「楽しそう! ……って言った側から誰か来るみたいだよ!」

 泉からの道は、少し山なりになっているので、私からはすぐに見えなかったが、ラピスの虎の体は大きく、高さもあるので、先が見えやすいようだ。

「あー、私もようやく見えてきた。確かに人影が……って……な、何アレ⁉️ 正真正銘のグロテスクな化物が来たよ! 人間も一人いるけど……もしかしたら従わされてるのかも!」
「ほ、本当か⁉️ だったら、助けないと……」
「ちょ、ちょっと待って! 全員人間だよ!」

「え⁉️ いや、どう見ても化物でしょ! ……ってもしかして、私だけそう見えてるってこと?」
「……そうだな。俺にも『四人全員』が人間に見える……。ちなみに、さっきの言い方から察するに、先頭の剣士だけが人間に見えるってことでいいか?」

「う、うん……」
「仮に、みかの能力が対象の本質を映し出すものだとしたら、他の三人は、人間に変身したモンスターか、あるいは相応の極悪人ということになる」
「私、みかお姉ちゃんが言う『グロテスク』がどのぐらいかは分からないけど、そういうモンスターは見たことないよ。大体が動物とか普通の生物に毛が生えた感じだから。
 それが三体も同時に現れるなんて、あんまり起こり得ないよね」

「じゃあ、やっぱり心が濁り切った極悪人なのかな……。でも、見てるだけで怖いよ……。震えが止まらない……。本当に止まらないよ……!」
「これが制約か……。心が汚れた人間の本質を見ると、恐怖で居ても立っても居られなくなる……」

 ガクガクと全身を震わせる私をたすくが抱き締めてくれたが、心も体も正常を保てない。

「やめてよ……! こんなの……制約だったら、どうしようもないってことぐらい分かるでしょ⁉️ おせっかい!」
「……。みか、考え方を変えられないか? 恐怖を覚えるということは、その危機を事前に回避できるということだ。
 今の能力があれば、君に危害を加えていた連中も、きっと化物に見えただろう。そしたら、決してソイツらと関わり合いにならなかったし、友達ごっこをすることもなかった」

「……」
「だが、今は俺達がいる。この場で唯一、君が怖くない、それどころか、頼ることもできる存在が。しかも、その俺達を守れるんだよ。自分だけじゃないんだ。パーティー全体を守れるんだ! こんなにすごいことはないと言い切れる!」

「……」
「さっきも言ったが、俺はこの制約、本当の制約じゃない気がするんだ。克服できる制約とでも言うべきか。そうじゃなかったら、『罰』と呼ばれるはずだ。
 自殺により生じた制約だとすれば、君は世界を悲観し、未来に絶望し、世界の誰一人信じられなくなった女の子だから、その考えの逆、『もしかしたら、世の中そんなに捨てたもんじゃないかも』、と思える思考回路が大切なんじゃないか? あるいは、自分達がそれを実現してみせるという考えとか。
 最初だけは、怖くなっても仕方がない。でも、これは『恐怖を抑えるスキル』を適用できるんじゃないだろうか。時間が癒してくれるまで耐えられるように、怒りを抑えて感情をコントロールできるように」

「……。ありがとう、たすく。もし、私がこの恐怖に打ち克てなかったら、この世界でも自殺してたのかな……」
「ということは……」

「うん……。少なくとも、精神的な方は大丈夫になった」
「良かったよ……本当に……。優しい神様なんだな。俺達のことを、ちゃんと考えてくれてるよ。一歩一歩、先に進めるように」

「そうだね。ありがとうございます、神様。私は死なないよ。このパーティーにいる限りは」
「ふふっ。まぁ、今はそれで良しとしておこう」

「ねぇ……また抱き締めてくれる……? 震えは止まらなくても……恐怖を乗り越えた後でも、なんか……すごく安心できるから……」
「いいよ、いつでも。これまで甘えられなかった分、たくさん甘えるといい。俺をお兄ちゃんだと思って」
「お兄ちゃんかぁ……。まぁ、今はそれでいいか」

 そう言って、私は彼に抱き付いた。頭をぐりぐりと彼の胸に押し付けるように。
 涙と笑顔が混ざって、自分でもよく分からない表情になっているだろう。
 でも、この先の『道』は、きっとよく見えるようになったと思う。それがこの『おせっかいパーティー』での私の役割だ。

「ラピス、もし危ない状況になったら、後ろの三人を倒してくれる? 剣士の人は、話せば分かってくれそうな気がするから、積極的には攻撃を仕掛けないようにするとか。たすくはどう思う?」

 少なくとも心が落ち着いた私は、これからのことを二人に提案した。

「賛成だ。ただ、倒すと言っても殺さないようにしてほしいかな。何か情報を聞き出せるかもしれないし。加減できないようなら仕方がないけど」
「うん、分かった。剣士の人は結構強そうだね。私の方が強いと思うけど」

「へぇ、そんなにハッキリと強弱が分かるんだ。だから他のモンスターはラピスの前に現さないのかぁ」
「うん。モンスターから他の人間やモンスターを見ると、オーラみたいなのが見えるんだよね。それで圧倒的なオーラを放っていると、ビクついちゃうみたい」
「それは、潜在的な強さも測れていると思っていいのか?」

「大丈夫だと思うよ。私、この森で人間が戦って死ぬところを見たことあるけど、最初から最後まで、そのオーラの『質』は変わらなかったから。量は、やる気によって変わるんだけどね」
「ラピスって、人間を殺したことあるの?」

「うん、あるよ。でも、それは私がどれだけ戦う意志を見せなくても襲ってきた人達だからね。しかも、命乞いをしたあとに、不意打ちする卑怯者集団だったから、流石の私も怒って殺しちゃった。
 死体はその辺の動物が食べたんじゃないかな。モンスターは特に何も食べなくても生きていけるからね」
「ラピスが淡々と、いや、むしろ明るくエグイ話をしてるのは、やっぱり人間とは感性が違う感じがするね……」
「特に、みかから見れば、かわいい女の子だもんなぁ……。
 おっと、そろそろ気を引き締めるか。もうかなり近いぞ」

 たすくが言うように、例の四人は、話し声が聞こえるほどの位置まで近づいてきていた。
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