異世界<おせっかい>人情ラプソディ~いや、『おせっかいスキル』で無双って何⁉️~

立沢るうど

文字の大きさ
73 / 123

第七十三話……公開処刑の完了と共に

しおりを挟む
「皆も感じていることかもしれないが、終わってみれば実に不思議な感覚だ。長いようで短く、短いようで長かった。慣れない感覚の中で、私を含めて、この場の全員が、肉体的にも精神的にも限界を迎えていることだろう。
 そのような中でも、最初から最後まで、しっかりと重大な職務を遂行した執行人達には、最大の敬意を払いたい。感謝する。皆も是非、称えてあげてほしい!」

 私達も観覧者も、全員がコーディーさん含む五人の執行人と魔導兵士達に盛大な拍手を送った。
 彼らは深々と礼をし、みんなからの温かい思いと自らの安堵に、涙を流していた。

「また、非常に短納期にもかかわらず、この誇るべき処刑台を建築してくれた素晴らしい職人達、数多くの特等席や嘔吐箱を作成してくれた素晴らしい職人達にも、改めて感謝したい。ただ、その素晴らしい物を今回は全て焼却処分してしまい、申し訳なくも思う。
 皆は、まさに国の柱である。柱が脆くなれば、そして折れてしまえば、国家は傾いてしまう。そのような事態にしないためにも、今後も政府からの発注は絶え間なく行っていくと約束しよう。
 予期せぬこともあって、現時点で私の言いたいことは全て言えたと思う。
 ただ、政治は結果だ。いくら御託を並べても意味はない。だから……。
 その目に、しかと焼き付けよ!
 その耳に、しかと残せ!
 その口で、広く訴えよ!
 『新生サウズ国』の全てを!
 そして、その手足で行動せよ! 自らを助けると共に、全国民に安心と笑顔を届けるために! そこに限界など存在しない!
 その全てを、私自身が心に刻もう!
 これにて、未来に語り継ぐべき、伝説の公開処刑を完了とする!」

 限界を知らない歓声が、さらに大きく鳴り響き、ついに公開処刑は終了した。
 これほど大量の人達が集まったにもかかわらず、大した混乱もなく、怪我人もいないとは、流石の運営力と言えるだろう。

 まだ一時間後に処刑台の焼却処分が残ってはいるものの、おせっかいスキルがあれば、滞りなく終えることができると誰もが思える。
 周りを見ると、全員がホッとした表情をしており、私も同じ気持ちになった。

 とは言え、今ビルさんが言っている通り、『帰るまで油断はしないように。例えば、嘔吐箱をひっくり返さないように。帰っても留守の隙に物が盗まれているかもしれないから、しっかりと確認するように。窃盗犯は神聖な公開処刑を貶めた罪で処刑するから、残らず通報するように。返品を当てにして盗まれてもいないのに通報しても処刑するから、魔が差さないように』と、遠足からの帰宅時以上に注意を払う必要もある。

 しかし、この高揚感と安堵感があれば、夕食も吐かずに普通に食べられそうな気がする。
 それは誰もが思ってもみないことだったろう。
 たすくも、子ども達に追加の食事を持ってくるかどうかを確認していたが、処刑台から降りてきたコーディーさんが、観覧者から約束の食料を貰い、それで賄うことにした。

 そして、ビルさんも含めて、全員処刑台から降りたところで、たすくがビルさんに話しかけた。
 サーズさんは、そのまま処刑台の奥の方から、馬車で城に帰ったようだ。

「嘔吐箱は俺が回収しようか? 予想に反して、みんな全然帰らないみたいだから、兵が回収しづらいよな」
「それでは、申し訳ありませんがお願いできますか? 本当は次回以降の経験として、こちらで全て対応したいところではあるのですが、あまり時間が取れなかったので練度が足りないのも正直なところです。
 例の『守護神』に、警備については相当学んだのですが、今回は活かし切れませんでした。あとでレビューします」
「もう暗くなってるからね。逆に危なくなるよね」

「じゃあ……みんな! 嘔吐箱は俺が回収するから、少しだけそこから離れてくれ! まだ使いそうな場合は、手をかざしてそれを示してくれ! 未使用で腰掛けに使いたい場合は、誰か座っていてくれ! それらはギリギリまでそこに置いておくから!」
「特等席もギリギリまで残しておきます」

 それからたすくは、おせっかいスキルを使って、嘔吐箱をそのまま宙に浮かせ、ガッチリ周囲を固めると、それらを処刑台の下に移動させた。そのまま臭いもガードしているようだ。

「二割ぐらいは腰掛けで使うみたいだ」
「ありがとうございます」

 一息ついたところで、前国王がビルさんに近寄ってきた。

「ビル、相談したいことがある。私達にこの子ども達の保育と教育をさせてはもらえないだろうか。ロクに息子達を教育できなかった私達から、そのようなことを申し出ること自体、恥を知らずに申し訳ないのだが……」
「いえ、それは私も考えていたことです。おそらく、陛下も。ただ、私が先程挙げた政策案にも含めた通り、保育および教育の資格試験は受けていただきます。時間差にはなってしまいますが。
 それらが上手く行けば、陛下から保護院の責任者に任命いただく流れになるかと」

「感謝する!」
「この他にも私達に何かできることがあれば、全て申し付けてくださいね」
「はい、そのつもりです。ということで殿下、資格試験の参考資料と問題を作成していただけないでしょうか。殿下方の現代教育知識は、私達を優に超えていますから」
「分かった」
「また、深夜残業するの⁉️」

「残業にはならないんだな、これが。おせっかいパーティーには、就業時間が決められてないから」
「早速、教育に悪い例が! 問題に含めるから! 名指しして!
 『意図的に労働契約を結ばず、他国の女性を就労させる強権の男児がいた。名をビル・クライツという。ビルくんに相応しいサウズ国の教育はどれか。全て答えよ。
 一、労働基準法を熟知させる。
 二、労働者保護の観点で問題解決方法を習得させる。
 三、他者への思いやりを育む。
 四、女性の価値観を聞き出すスキルを習得させる。
 五、責任から逃れる方法を教える』」

「流石、みか。これは、地味に難しいな……。これを答えてしまっては、後の受験者に影響が出るから、私が解答するのは控えよう」
「はい、禁忌肢で不合格! 無解答が一問でもあったら不合格にするから」
「これ多分、問題文にも選択肢にもひっかけがあるな。マジで難しいよ。おせっかいスキルがなかったら、答えられないぐらい」
「勉強しがいがあるな」
「ええ。勉強はいくつになっても、いつでもできますからね。やる気さえあれば」
「わしも日々、勉強じゃからのぉ」
「私も最近はどうやって上手いことを言おうか、いつも考えてるよ!」
「ラピスちゃんへの教育は、たすく様とみかさんの責任ですからね。どのように成長していくのか楽しみです」

 なんとなく、少しだけ、みんなの緊張がほぐれたように思えた。

「…………たすく……みか……」
「今、誰か私達のこと呼んだ?」
「いや、何も聞こえなかったけど」

 私は周囲を見回したが、そのような気配はどこにもなく、もしあるとすれば……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...