異世界<おせっかい>人情ラプソディ~いや、『おせっかいスキル』で無双って何⁉️~

立沢るうど

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第百一話……プロパガンダ

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 サーズさん達は自己紹介を済ませると、早速モンスター達と仲良くなっていた。と言うか、モンスター側が興味津々で、色々質問してきた格好だ。
 半分セクハラも混ざっていたが、その度に私が指摘することでモンスターも『ふむふむ』と学習していた。本当に分かってるのかなぁ……。

 それでも、Tくんがタイムキーパーをしてくれたおかげで、『人間の仕事の邪魔をしてはいけない』と質問も途中で打ち切られ、滞在時間十分程度で、プレアとラピスを残して私達は王室に戻ってくることができた。
 ついでに、追加のダイヤモンド鉱石も持ってきた。また、転がしっぱなしの最強の青い鉱石も持ってきて、セレナ用の剣の刀身に加工してみようということにもなった。

「ふふふっ、なんだかモンスターさん達がかわいく見えました」
「それがコミュニケーションできる素晴らしさ、お互いに敵意が全くない純粋な気持ちの素晴らしさだろうな」
「人間よりも、よっぽど信頼できるのかもしれないな……。おっと、それでは私も仕事に戻ります。みか、協力してほしいことがある。全員付いてきてもかまわない」
「あ、うん。それじゃあ、サーズさん、ユアさん、また明日かな」

 私達は王室を後にして、ビルさんに付いて行った。
 見慣れた景色を通って着いた場所は、やはり牢獄だった。

「前にも話した通り、午前中に殿下方の社会適合テストがあった。結果は、両者とも不適合。ただ、惜しい結果ではあった。
 当然、結果は結果で受け止めなければいけないが、少なくとも見かけ上は反省の色を示しているんだ。その状態の二人が、みかからどのように見えるかを教えてほしい」
「分かった」

 そして、私達は牢獄の奥に進み、右奥の二つの牢獄にそれぞれ王子達が入っていることを確認した。

「ビルさん、今言っていい?」
「ああ、頼む」

「反省の欠片もないね。単に記憶に頼っただけだよ。仮に今回通っていたとしても、二回目のテストで不適合になると思う」
「ありがとう」
「おい! どういうことだ! そこの女!」
「よくも平然とデタラメなことを! 俺達は反省しているんだぞ!」

「分かったでしょ? もし、今後ギリギリで通った罪人がいたら、こう言うと良いよ。
 『やっぱり、テスト結果によらず処刑する』ってね。そしたら、本性を表すから。
 本当に反省していたら、『そうか……。それも仕方がないか……』みたいに言うと思う」
「大変参考になった。やはり協力してもらって良かったな。皆の心にモヤモヤを残さずに済んだ」
「ビル、貴様ああぁぁ!」

 第一王子の叫びも虚しく、私達は牢獄を後にした。

「でも、いいの? 王家存続のためには、王家の血を残しておいた方が良いんじゃない?」
「それを考えてのことだったが、吹っ切れたよ。ユア様がご懐妊でなければ、まだその考えを残していたが、現状では不妊に悩むことはないし、出産リスクも最小限に抑えられるから、王家断絶のリスクもほとんどない。
 これは不敬な考えで畏れ多いが、たとえ陛下が病に倒れても、前国王を新国王とすれば、まだまだ王家は続く」

「男系とか女系とかは関係あるの? いや、ないか。フォーリエだって王位継承順位を持ってたもんね」
「実は、サウズ国は過去全て男系男子が王に即位している。たとえ、王女が王位継承順位を持っていても、王子の方が功績を上げていたらしい。
 と言っても、今回のような王位継承戦は過去にほとんどなく、第一王子がそのまま継いでいたことの方が多い。
 だから、王女に王位継承順位を与えると言うと、眉をひそめる国民も多かったんだ。そういう意味でも、今回、陛下が即位したことで、胸を撫で下ろしている者は多いんじゃないかな。
 正直に言うと、私もその一人だ。国王の能力に関係なく、な」

「なるほどね。まぁ、私達もあったよ、そういうの。女からすれば、女性が王になって、その後も続いたら面白いかも……なんて思うけど、面白いとか思うのは完全に無責任な考え方なんだよね。
 百二十代以上続いている伝統を考えれば、男系一択なんだから。いや、伝統とかって言うと失礼なのかな。分かんないけど。正確に言えば皇統」
「ん……? 百二十代以上⁉️ それが本当だとしたらすごい帝国だな……」
「女性天皇と女系天皇も、一見すると分かりづらいからな。『なんか違うの、それ?』と思ってる国民は多いんじゃないかな。いや、気が付いてすらいない可能性が高いんだよな。ちなみに、ビルには一応言っておくと、帝国ではない。一時期、帝国だったけど」

「それもメディアのせいだよ。意図的に主義主張を隠してるから手に負えないんだよね。男系を維持する方法なんていくらでもあるのに、そこにほとんど触れないからね。だから、一部の男女の対立が深刻化するんだよ。あえて飛躍させて言ったけどさ」
「差別をするなと言いながら、差別を助長している連中がいるってことかな? それは、私からすれば、間違いなく国を滅ぼそうとしている連中だよ。しかも、悪しき風習を破壊するのなら問題ないが、伝統を破壊しようとしているなら問答無用だ。
 平等は大事だと言いながら、弱者を顧みずに平気で高価な物を貪る連中もそう。これは、公開処刑の時にも陛下が触れたな。
 そのメッセージだけが独り歩きして国民を洗脳し、一方で国はどんどん衰退していくんだ。手段が目的化する典型とも言える。それは、国民が勝手に勘違いした結果と言い訳もできるしな。
 実は海外に、それが原因で衰退し、滅亡寸前の国があると聞いたことがある。情報伝達に優れた国だったらしいが、スパイにそれを利用されたんだ。スパイ天国だったとも言われていたな。今はどうなっているか分からない。当然、我が国ではそのようなことは起こさせない」
「おいおい……他人事じゃないな……。いや、もう他人事か……。でも、やっぱりそうなるんだなぁ。それにしても、みかのメディア嫌いは筋金入りだな。まぁ、大体はマスメディアだけど」

「たすくも分かっている通り、憎悪と言うより嫌悪だね。最初のキッカケは、私がいじめられ始めた頃に、家で見ていた番組で、凄惨な事件について慎みながら原稿を読んでいたアナウンサーが、次の瞬間に『それではスポーツです!』って元気良く言ったシーンに引っかかったこと。
 『ん? 悲しんでたんじゃないの?』って思ったけど、『まぁ、切り替えは大事だよね』と思っていたら、別の報道番組では、別のアナウンサーが、『これは反発を招きそうです』とか『これは議論を呼びそうです』とか、余計な憶測を政治ニュースに付け加えていたことに気が付いた。
 『ああ、私って何も考えずに生きてたんだ。そりゃあ、いじめられもするわ』って、その時に思った。こんなくだらない憶測を当然のように受け入れて、バカみたいな世論の誘導と扇動に気付かないなんて、マヌケすぎだって。
 アナウンサーっていう職業に憧れていたこともあったけど、結局はただの原稿を読む機械、もしくはプロパガンダロボだった。その裏には、ガチガチの思想を持った連中がいる。
 奴らは、戦争に善と悪の二元論を持ち込んで、情報を制限して、本当は虐殺を繰り返している国を持ち上げて、マヌケな民衆を扇動する正真正銘の悪党集団だよ。
 それどころか、スポーツ選手や芸能人に媚びを売り、自分自身を売り抜ける売春人間……は言いすぎか。全員がそうじゃないからね。でも、その悪党集団に騙されてるマヌケ。
 こう言うと、中二病とか、こじらせとか、統合失調症患者とか、前にも言ったけど、陰謀論者とかレッテルを貼られる。それこそ差別用語を使った差別で。でも、それもプロパガンダの手法だからね」
「深刻だな、そっちの世界も。是非、その知見を今後もずっと活かしてほしいな。
 このままでは、まだマヌケのままだぞ。気が付いても何もしない、何もできないのは、な」

「分かってるよ。手っ取り早いのは、サウズ国が同じように腐敗してくれたらいいんだけど」
「それは、流石にラインを越えかねない発言だが、戒めの言葉として受け取っておこう。自分だけでなく、悪党集団に騙されている人間や世界を憂うみかの気持ちに免じて」
「悪かったな、みか。また嫌なことを思い出させちゃって」
「私もみかさんの気持ちが痛いほど分かります……。セントラルでは、是非その知見を活かしてください!」
「……みか……よしよし……」

「はぁ……。全く……おせっかい集団なんだから……。ありがとう、みんな!」
「そうか……。今のセレナの言葉で気が付いたが、セントラルがすでにそうなっている可能性はあるのか。ただし、衰退には向かっておらず、全体で見れば成長している成功例とか……。勇者を犠牲にしているかもしれないか? いや、まだよく分からないな……」
「セレナ、心当たりはあるか?」
「いえ、なんとなくでしかありませんでした……。強いて言うなら、勇者管理組合の無気力具合が、国の衰退と結び付いたぐらいでしょうか……。成長なら逆ですもんね。
 あ、いえ……! これは……今の話とは関係なく、その前の話と関係があるかもしれないのですが、セントラルの、少なくとも第一セントラル領国は、男女の分断が成功しているような気がします。
 王女殿下方の悪い噂は耳にしても、王子殿下方の悪い噂は聞きません。かと言って、そのことを王女殿下方は気にしていないような……。
 それと、セントラルでは、基本的に女性が就ける職業はかなり制限されています。また、そのことに声を上げる人もいません。
 そのため、対立構造は過ぎ去り、主従関係が出来上がってしまっています。
 したがって、他国からすれば女性差別国と言っても差し支えありません。
 以前からそうだったのか、最近そうなったのかは分かりません」

「つまり、セントラルの王家や最高評議会が、『女は男よりも劣る』という先入観を国民に植え付けて、女性差別を助長して男女の分断を図り、仕事の効率化と人口増加の効率化に成功したってこと?
 国家の在り方の一つとしては、成功してるから良さそうだけどね。私も否定しないよ、それは。
 あー、もしかして、ビルさんが言った通り、そのしわ寄せが勇者に行ってる可能性はある?」
「勇者が奴隷になっている話は聞いたことがあるが、実は女が男を支配している構図もあり得る。さらに、女がその地位を得るために自らを貶め、諸外国を巻き込んだとすれば、歪んだ社会と言わざるを得ない。
 それもプロパガンダ、と言うかミスリードの可能性もあることは注意する必要はあるが」
「やっぱり、現地で確かめないといけないな。セントラルが閉鎖的すぎるからなぁ。商人が行き来してるはずなのに情報不足っていうのもおかしいよな。
 間違いなくセントラルの息がかかった商人で、沈黙が相当のメリットなんだな。全商人がハーレムか逆ハーレムを築いているかもな」
「私がもっと早くに気が付いていれば、それも調査していたかもしれませんが、酷い世間知らずでした。申し訳ありません」

「それは仕方ないよ。見知らぬ土地に行って、一年と少しで表と裏の社会構造とその元凶まで把握しろなんて言っても無理だし。しかも、周りが無気力人間なら、情報だって集められないだろうし」
「セレナが無事でいることが私達にとっては何よりだろう。たすく、よかったら、セントラルに行った際は、そういう情報も貰えると助かる。
 スパイ活動みたいになって恐縮だが、それを利用して優位に立とうというわけではなく、我が国も含めて是正できればいいという考えだ。なんなら、そちらでノウハウ化して教えてもらってもかまわない」
「了解」

 いつの間にか国賓部屋まで戻ってきて、扉の前で話し込んでしまったが、ビルさんは仕事に戻り、私達は部屋に入った。
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