ヴァルキリー・リンク

光乃章

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第1章 幽霊少女との出会い

第1話

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ーーーー会えたね。

 でも夢の中で会うのは今日で最後なんだ。

 私はこの世界に救いは無い……そう思っていたんだよ。

 繰り返される日常に劇的な変化など訪れない。
 そんな事をよく考えてたの。


 でも違った。

 私は知らなかっただけだった。


 何も変わらずにただ生きるだけの人生だと思っていた私は……救われた。

 孤独だった私の心は、君のおかげで満たされたんだ。


 きみの未来は今日から変わる。


 わたしは知っている。
 きみも知っている。


 君が目覚める時、私も目覚める。


 だから……早く私を見付けてね。




ーーーージリリリリリッッ


 意識の遠くから聴こえる喧しい音に僕は呼び起こされる。
 薄っすらと目を開けると窓から眩しい光が射し込んでいる。

「お兄ちゃ~ん!目覚ましうるさいから早く止めてぇ!」

 隣の部屋に居る僕の一つ年下の妹である昨夜さくやから小言が飛んで来る。

 僕は寝ぼけ目のまま目覚ましを止める。
 時間は……6時か。


「朝ご飯出来てるから咲夜も冬夜とうやも早く降りてらっしゃ~い」

 下の階から今度は母親の呼び出しだ。

「今行くからぁ」

 俺は一言下の階に向けて叫んでから起き上がる。

 そういえばさっきの夢で誰かが何か言ってた気がするけど、どんな夢見てたんだっけ。

 ……思い出せない。

 別にいいか。モヤモヤはするけど、夢を思い出せない事を気にしても仕方が無い。


 僕は寝間着のまま下の階に降りる。

 リビングに入るとテーブルには僕と咲夜の分の朝ご飯が既に用意されていた。


「お母さんもう仕事に行かなきゃならないから、洗い物はちゃんとしておいてね。じゃあ行って来ます」

「行ってらっしゃい」

 僕の家は母子家庭で、母親が働いて生計を立てている。母親は毎日朝早くから仕事に行って、帰って来るのはいつも夜遅くだ。


 さて、僕も朝ご飯を食べて学校に行く準備をしなきゃね。

 朝ご飯が用意されているテーブルの椅子に座ると、ガチャリと扉が開く音が鳴った。

 リビングの扉を開いて顔を見せたのは咲夜だ。

「あれ?お母さんもう仕事に行っちゃったの?」

 咲夜が学校のプリントらしき物を持って話し掛けてくる。

「もう行ったよ」

「えぇ……三者面談の話があったのにぃ……」

 ああもうそんな時期か。
 咲夜は現在中学3年生で高校受験が控えている。

 僕も去年は夏から高校受験に向けた三者面談が度々あったのを思い出して少し懐かしく感じる。

 というか夜のうちにそういうのは見せておくべきだろうに。まあ最近反抗期なのか、あまり口煩く言うと倍返しされるので口には出さないが。


 僕は朝ご飯をさっさと食べてから自分の食べ終わった食器を持って、台所に向かい洗い物をする。

 洗い物が終わってからそのまま洗面台に行き、顔を洗って歯磨きをする。


「……なんだこれ」

 歯磨きをしながら何気なく鏡を見ていると、僕の右目の下に隈みたいな物が見えた。
 寝不足……なのかな。

 今年の夏も例年に漏れず、すこぶる暑くて寝苦しい日々が続いてる。

 まあそんなに目立つ訳ではないし、身体の不調や疲れも特に感じないから気にしなくてもいいかな。


 歯磨きを終えた僕は、自室に戻っていつものように制服に身を包み、身支度を整えてスクールカバンを手に持って玄関に向かう。

「昨夜~鍵ちゃんと閉めろよ~」

 玄関を開ける前に呼び掛けると、「うん~いってら~」という間延びした返事が聞こえて来る。


 現在の時刻は7時10分。

 僕が通っている学校は『東北高等技術第3学校』っていうんだけど、少し遠いから早めに家を出なきゃならないんだよね。

 玄関を出て、そのまま僕はガレージに向かう。

 そこにあるのは全身装着型の一般的なパワードスーツ。

 身体にフィットしたスムーズな動作補助に、充電式の内蔵バッテリーでありながらハイパワー、その性能の高さからは考えられないほどの様々な安全措置が施されている。『イーマEMA』と総称される便利な機械だ。

 まずはこのイーマを装着して駅に向かう。
 本来はイーマステーションと呼ばれるのだが、長いから多くの人は『駅』って呼んでいる。

 イーマを装着していれば時速60キロ程で走れるけれど、イーマステーションにあるイーマ専用発着装置なら速くて快適で安全な空の旅が出来るんだよね。時速にしたら180キロくらいだったかな。


 イーマの前にある着脱装置の上に立ち、スイッチを押すと体が固定され、自動で全身にイーマが装着されていく。

 そのまま少し待つと、頭に装着されている部分からシステムアナウンスが流れた。

《システム・オールグリーン。スタンバイオーケー。起動します》


さあ出発だ。
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