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二章:チートな 創造主 と 雪人たちのゲーム前の予習
「理由は二つ。」
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「やっぱりここの塩唐揚げ、うま~ぁいっ♪ 日本酒とも合う~っ♪」
「あれだけ食っておいて、大丈夫なのか腹は?」
菖蒲と同じように、呆れ顔で口一杯に頬張る明星を見る白檀。ここでも唐揚げのほかに、刺身や枝豆など数品の料理を頼み、ほとんど明星の胃で消費していた。
白檀はというと、王子様のような甘い顔立ちで、小皿に盛られたイカの塩辛つまみに日本酒をあおっている。
「高級料理とB級グルメは、別腹なんだよっ。そういう白檀だって、猫なのにイカ食べていいの?」
「ッ(怒)……そこいらのヒ弱な猫と一緒にするんじゃねぇッ。ネギだろうとチョコだろうと、なんだって食えるに決まってんだろッ。」
これまた王子様のような顔立ちに似つかわしくない口調で怒る白檀。それに対し、「ヒ弱は関係ないと思うなーぁ」と笑う明星。
内容は兎も角として、飲み屋特有の和んだ雰囲気が流れていた…………が。
白檀の視線が、明星のある一点に止まった。
「明星。血が付いてっぞ。」
「えっ? ウソっ、ウソっ。どこっ? どこっ?」
言われた明星は、自分が見える範囲の自分の体の箇所をキョロキョロ探し回る。たが見つからない。
シビレを切らした白檀が「まったくッ。」と言いながら、明星のアゴ下の白く細い首筋を親指でなぞる。
その指に付着したのは、さっきの高級中華料理店で襲ってきた刺客の返り血だ。
明星は「ありがとうっ。」と、ニコッと笑う。
だがその指の血を見て、白檀が表情を厳しくした…。
「…………明星、今回ばっかりはやり過ぎじゃねえのか?」
「どこが?」
小首を傾げてみせる明星。
「別にこのプロジェクトは、マンガや小説などでありがちな、参加したらデスゲーム直行とかでも無いんだよ。スマホのアプリゲームで祓えるのは中級の魑魅魍魎までで、それも本当は潜在的に魑魅魍魎になる可能性がある霊や怪異といったモノだ。それらを凡人でも祓えるように、私と菖蒲が考えた陰陽道の術式を取り入れたプログラムで、護符をスマホから生成できるようにした。それも護符の元となるのは、成仏できない浮遊霊や地縛霊の「火魂」と、土地の強い気の流れである竜脈の「宝玉」。『ここまでは』いわゆる大事になる前の対症療法で、やり過ぎどころか実に合理的だと思うけどねぇ。」
ここまで一気に話したところで、明星は潤滑油を差すがごとく日本酒が入ったコップを口につける。
「…ならなぜアプリゲームからも、祓うことが出来ないはずの上級の魑魅魍魎を検索できるようにしたッ?」
白檀の鋭い問いに明星は口からコップを離し、「理由は二つ。」と言って、顔の前で人差し指と中指を立てて見せる。
「一つは情報の仕訳。魑魅魍魎の出現場所は、ある程度はネットの目撃情報や噂話で調べられるけど、この情報飽和時代にどれが偽物でどれが本物か、やはり現場に行ってみないと判らないことが多いんだよね。けれど私の体は一つだ。全部調べるなんて物理的に無理。なら、探知できるアプリゲームで『皆で手分け』をすればいい……と考えたわけ。」
ここで立てていた中指を折る。そこまでは白檀も、癪だが少し納得したような顔をした。
「もう一つは、プレイヤーがVRゲームに移行するうえでの『線引き』のため…かなぁ。」
「『線引き』?」
聞き返す白檀。
「いくら検索で上級の魑魅魍魎の場所をつかんでも、そう簡単に遭遇されては困る。危険だからね。だから大体が現地の情報だけ此方に流してもらって、遭遇する手前で安全装置が働いて「魑魅魍魎は逃げた」ってスマホの画面に表示し、危険回避するようにしてある。」
「なんだよッ。それじゃあ『線引き』もなにもないだろッ?」
明星の説明に、白檀は訝しげに眉を潜めた。
「そうだね、『普通』はね。でもね、いくら安全装置を重ねても『何かの要因』で破断する。それが偶然か人為か……どちらにしろ『物事の理を逸脱させる』のは、ある意味で「才」の一つなんだよ。」
そこで明星が含み笑いで白檀に顔を近づけた。
「……私の陰陽師としての力や、白檀のように輪廻の輪から外れた存在のようにね。」
「ッ。」
言い終わると元の位置に戻り酒を一舐めすると、「…線引きとは、そういうことさ。」と言って話を結んだ。
「あれだけ食っておいて、大丈夫なのか腹は?」
菖蒲と同じように、呆れ顔で口一杯に頬張る明星を見る白檀。ここでも唐揚げのほかに、刺身や枝豆など数品の料理を頼み、ほとんど明星の胃で消費していた。
白檀はというと、王子様のような甘い顔立ちで、小皿に盛られたイカの塩辛つまみに日本酒をあおっている。
「高級料理とB級グルメは、別腹なんだよっ。そういう白檀だって、猫なのにイカ食べていいの?」
「ッ(怒)……そこいらのヒ弱な猫と一緒にするんじゃねぇッ。ネギだろうとチョコだろうと、なんだって食えるに決まってんだろッ。」
これまた王子様のような顔立ちに似つかわしくない口調で怒る白檀。それに対し、「ヒ弱は関係ないと思うなーぁ」と笑う明星。
内容は兎も角として、飲み屋特有の和んだ雰囲気が流れていた…………が。
白檀の視線が、明星のある一点に止まった。
「明星。血が付いてっぞ。」
「えっ? ウソっ、ウソっ。どこっ? どこっ?」
言われた明星は、自分が見える範囲の自分の体の箇所をキョロキョロ探し回る。たが見つからない。
シビレを切らした白檀が「まったくッ。」と言いながら、明星のアゴ下の白く細い首筋を親指でなぞる。
その指に付着したのは、さっきの高級中華料理店で襲ってきた刺客の返り血だ。
明星は「ありがとうっ。」と、ニコッと笑う。
だがその指の血を見て、白檀が表情を厳しくした…。
「…………明星、今回ばっかりはやり過ぎじゃねえのか?」
「どこが?」
小首を傾げてみせる明星。
「別にこのプロジェクトは、マンガや小説などでありがちな、参加したらデスゲーム直行とかでも無いんだよ。スマホのアプリゲームで祓えるのは中級の魑魅魍魎までで、それも本当は潜在的に魑魅魍魎になる可能性がある霊や怪異といったモノだ。それらを凡人でも祓えるように、私と菖蒲が考えた陰陽道の術式を取り入れたプログラムで、護符をスマホから生成できるようにした。それも護符の元となるのは、成仏できない浮遊霊や地縛霊の「火魂」と、土地の強い気の流れである竜脈の「宝玉」。『ここまでは』いわゆる大事になる前の対症療法で、やり過ぎどころか実に合理的だと思うけどねぇ。」
ここまで一気に話したところで、明星は潤滑油を差すがごとく日本酒が入ったコップを口につける。
「…ならなぜアプリゲームからも、祓うことが出来ないはずの上級の魑魅魍魎を検索できるようにしたッ?」
白檀の鋭い問いに明星は口からコップを離し、「理由は二つ。」と言って、顔の前で人差し指と中指を立てて見せる。
「一つは情報の仕訳。魑魅魍魎の出現場所は、ある程度はネットの目撃情報や噂話で調べられるけど、この情報飽和時代にどれが偽物でどれが本物か、やはり現場に行ってみないと判らないことが多いんだよね。けれど私の体は一つだ。全部調べるなんて物理的に無理。なら、探知できるアプリゲームで『皆で手分け』をすればいい……と考えたわけ。」
ここで立てていた中指を折る。そこまでは白檀も、癪だが少し納得したような顔をした。
「もう一つは、プレイヤーがVRゲームに移行するうえでの『線引き』のため…かなぁ。」
「『線引き』?」
聞き返す白檀。
「いくら検索で上級の魑魅魍魎の場所をつかんでも、そう簡単に遭遇されては困る。危険だからね。だから大体が現地の情報だけ此方に流してもらって、遭遇する手前で安全装置が働いて「魑魅魍魎は逃げた」ってスマホの画面に表示し、危険回避するようにしてある。」
「なんだよッ。それじゃあ『線引き』もなにもないだろッ?」
明星の説明に、白檀は訝しげに眉を潜めた。
「そうだね、『普通』はね。でもね、いくら安全装置を重ねても『何かの要因』で破断する。それが偶然か人為か……どちらにしろ『物事の理を逸脱させる』のは、ある意味で「才」の一つなんだよ。」
そこで明星が含み笑いで白檀に顔を近づけた。
「……私の陰陽師としての力や、白檀のように輪廻の輪から外れた存在のようにね。」
「ッ。」
言い終わると元の位置に戻り酒を一舐めすると、「…線引きとは、そういうことさ。」と言って話を結んだ。
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