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三章:一戦目【駅の中のアリス】
「……【駅の中のアリス】という魑魅魍魎が生まれた場所です。」
しおりを挟む「…もしかして、『ソレ』が…。」
刀夜の顔を見て細かく語らずしも察したと気づいた福☆FUKUダルマ君は、刀夜の言わんとしていることにコクンと頷いた。
――…
「はい。このコインロッカーこそ、【阿莉里ちゃん】が発見された……【駅の中のアリス】という魑魅魍魎が生まれた場所です。」
福☆FUKUダルマ君が、エノキのような手先を指した先。クリーム色だった外装は色褪せ、所々錆びが酷く古ぼけたコインロッカーが置かれていた。
ゴクリと生唾を飲む刀夜。
この駅は、二年前にリニューアルのため全面改装している。そのときにコインロッカ一も、スイカなどの電子マネー対応したモノと総入れ替えしたはずだ。
けれど、目の前のコインロッカーにはそれらしい機能がついているようには見えない。どう見ても旧型だ。
(…いや、待って。いくらゲーム内に設定されているストーリー展開だったとしても、実際の旧型の…それもいわくつきのコインロッカーがリアルに残っているはずがない。だったら『ソレ』も…。)
刀夜は、前にかざしていたスマホを退かして見る。
そうすれば福☆FUKUダルマ君と共に、リアルからこの旧型のコインロッカーの存在は消失だろうと刀夜は考えた。
が…。
「……あるッ!? リアルに存在しているッ!!」
福☆FUKUダルマ君は消えたのに、刀夜の肉眼はそのコインロッカーを写し出した。
――…
「そうなんです。なぜかこのコインロッカーだけは撤去されず、ここに残ることになりました。それも、この空間ごと忘れ去られたように…。」
降ろしたスマホを通して福☆FUKUダルマ君が、刀夜の考えをくみ取るように答える。
刀夜はそれに反応してスマホを元の位置に戻すと、画面上の福☆FUKUダルマ君は刀夜を上目使いで見ていた。
――…
「その頃からです。【駅の中のアリス】の噂がたち、阿莉里ちゃんが『おかしくなったのは』。」
「っ?……『おかしくなった』?」
何か違和感を覚えながらも聞き返した刀夜に、福☆FUKUダルマ君は目を伏せ、過去を思い出しながら話を続ける。
――…
「阿莉里ちゃんは、元々『規格外』の地縛霊ではありました。生まれてすぐに亡くなったことで、自分が死んだことにも気づけない。それでも普通ならば、水子の霊は手厚く弔うことで成仏することができます。………けれど阿莉里ちゃんの場合、新聞やニュースで事件が報じられたことで、心無い者たちによりネットで「そのコインロッカーの赤ちゃんは、『成仏できずに』夜な夜な鳴いているらしい」などと、面白半分の安易な噂をたてられてしまった。それがネットで物凄い速さで拡散されたことで、噂自体が阿莉里ちゃんをこの駅に留める楔となり【コインロッカーの赤子】という『泣くことしか出来ない』本当の怪異を産み出した。」
(噂のほうが………『先』?)
ふと…そこまでの話のなかで、刀夜が『疑問』に思っていたことの、答えのピースが一つ見つかったような気がした…。
――…
「そしてその怪異を……阿莉里ちゃんを『規格外』にした要因がもう一つあります。それが………『この駅』なんです。」
「駅が……要因?」
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