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三章:一戦目【駅の中のアリス】
「ゴメンね。アイツは口が悪いだけで、悪気は無いと思うんだ。」
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残された刀夜は、申し訳なさそうに福☆FUKUダルマ君に顔を向ける。
「ゴメンね。アイツは口が悪いだけで、悪気は無いと思うんだ。」
(…たぶん。)
ーー…
「気にしませんよ、私は。」
福☆FUKUダルマ君は小首…は無いので、赤いボディ全体を傾かせて笑った。
なんとも愛らしい仕草に和む刀夜。
(福☆FUKUダルマ君って、ちょっと女の子ぽいよな~ぁ。………?あれ?もしかして性別は女の子とか?でも「君」だし、ヒゲ生えてるし、ゆるキャラの公式プロフィールには男の子って書いてあるし。………まてよ。そもそもゆるキャラの「福☆FUKUダルマ君」とこのゲームの「福☆FUKUダルマ君」が同一とは限らないし…。)
ーー…
「…………刀夜さん?……どうかしましたか?」
急に福☆FUKUダルマ君を見つめたまま考え込む刀夜に、不安そうに下から見上げ返す福☆FUKUダルマ君。
ハッと我に返った刀夜は「いや、何でもないっ。」と言い、「我ながらしょうもないことを」と思いながら正面で手を降って誤魔化す。でも福☆FUKUダルマ君は、まだ不安そうな顔をしていた。
そして、刀夜から視線を外すとうつむき加減でヒゲの下に隠れている口を開く。
ーー…
「……阿莉里ちゃんを追いかけるですよね?これからどうしますか?」
「ん-…。どうするかー…ぁ。なあ、雪人っ。」
刀夜は後ろに向かって振り向く。そこには雪人が、自分のスマホのイジっていた。
言われて一・二秒ほどは画面から視線を外さなかった雪人だが、ようやく「…ああ。」と返事を返し始める。
「俺のほうの銀弧も消えた。魑魅魍魎探知機能は使えない。自力で探すしかない。」
「だから何処を?」
「【駅の中のアリス】ってぇ名前だけあって、現れたと噂される場所は駅構内ばかりだ。そこをしらみ潰しにしていくしかないだろう。」
雪人の意見に、少し考え込んだ刀夜だったが…。
「…うん、そうだな。今のところ手がかりになりそうなものも無いし…。」
…と同意しようとしたとき、二人の足元で…。
ーー…
「あの~…ぉ。手がかりというなら、あのコインロッカーを調べてはいかがでしょう?」
…と言って、福☆FUKUダルマ君はエノキのような腕を伸ばし、コインロッカーに向かって指を指す。
二人はその指の先を追うように、コインロッカーに視線を向けた。
「なんだ、あのクソボロいコインロッカーは?」
眉間にシワを寄せる雪人。だが一呼吸おいたのち…。
「……もしかしてアリスが遺棄されたロッカーか?」
…と、説明せずともフライング気味に状況を把握してしまう。
「さすが」と心のなかで苦笑いを浮かべながら刀夜は頷き、福☆FUKUダルマ君も刀夜にした説明を省いて話を進める。
ーー…
「この駅が改築されてからも残るこのコインロッカーは、この空間に入れない人間は当然、私ですら怖くて触れないでいます。もしかしたら、何か手がかりになるモノがあるかも…。」
刀夜はそれを聞いて「確かに」と思う。でも…。
「し、調べるってことは、アレ全部開けて見る……ってことだよね?」
縦四つ × 横五つの計二十個のコインロッカー。皆、見たところ鍵は刺さっている。
「ちなみに、阿莉里ちゃん…アリスちゃんが遺棄されたロッカーはどれかなぁ?」
ーー…
「…………左端の一番下のロッカーです。」
そう福☆FUKUダルマ君が答える。
もう何年も前の事件だ。アリスの死体が入ってる……ってことは無いと思うが…。
そんな刀夜に、雪人がまたスマホをイジり始めながら「頑張れーーぇ。」と、後ろから全く心の籠ってない声援を飛ばしてきた。
「なにッ、俺がロッカーを開ける役みたいになってんだよッ!ユキッ、お前もやれよッ!」
「パス。二人で調べるほどのロッカーの数じゃねぇだろ。それとも、一人でやるのが怖いのかな?」
言葉の最後。スマホの画面から視線を刀夜に向けながら、雪人がニヤリと笑う。
それにグッと言葉を詰まらす刀夜。
「まッ、まさかッ!怖か無いし!俺一人で十分だし!」
見え見えの強がり。雪人は「ちょろっ。」と思いながら、スマホに視線を戻した。
「ゴメンね。アイツは口が悪いだけで、悪気は無いと思うんだ。」
(…たぶん。)
ーー…
「気にしませんよ、私は。」
福☆FUKUダルマ君は小首…は無いので、赤いボディ全体を傾かせて笑った。
なんとも愛らしい仕草に和む刀夜。
(福☆FUKUダルマ君って、ちょっと女の子ぽいよな~ぁ。………?あれ?もしかして性別は女の子とか?でも「君」だし、ヒゲ生えてるし、ゆるキャラの公式プロフィールには男の子って書いてあるし。………まてよ。そもそもゆるキャラの「福☆FUKUダルマ君」とこのゲームの「福☆FUKUダルマ君」が同一とは限らないし…。)
ーー…
「…………刀夜さん?……どうかしましたか?」
急に福☆FUKUダルマ君を見つめたまま考え込む刀夜に、不安そうに下から見上げ返す福☆FUKUダルマ君。
ハッと我に返った刀夜は「いや、何でもないっ。」と言い、「我ながらしょうもないことを」と思いながら正面で手を降って誤魔化す。でも福☆FUKUダルマ君は、まだ不安そうな顔をしていた。
そして、刀夜から視線を外すとうつむき加減でヒゲの下に隠れている口を開く。
ーー…
「……阿莉里ちゃんを追いかけるですよね?これからどうしますか?」
「ん-…。どうするかー…ぁ。なあ、雪人っ。」
刀夜は後ろに向かって振り向く。そこには雪人が、自分のスマホのイジっていた。
言われて一・二秒ほどは画面から視線を外さなかった雪人だが、ようやく「…ああ。」と返事を返し始める。
「俺のほうの銀弧も消えた。魑魅魍魎探知機能は使えない。自力で探すしかない。」
「だから何処を?」
「【駅の中のアリス】ってぇ名前だけあって、現れたと噂される場所は駅構内ばかりだ。そこをしらみ潰しにしていくしかないだろう。」
雪人の意見に、少し考え込んだ刀夜だったが…。
「…うん、そうだな。今のところ手がかりになりそうなものも無いし…。」
…と同意しようとしたとき、二人の足元で…。
ーー…
「あの~…ぉ。手がかりというなら、あのコインロッカーを調べてはいかがでしょう?」
…と言って、福☆FUKUダルマ君はエノキのような腕を伸ばし、コインロッカーに向かって指を指す。
二人はその指の先を追うように、コインロッカーに視線を向けた。
「なんだ、あのクソボロいコインロッカーは?」
眉間にシワを寄せる雪人。だが一呼吸おいたのち…。
「……もしかしてアリスが遺棄されたロッカーか?」
…と、説明せずともフライング気味に状況を把握してしまう。
「さすが」と心のなかで苦笑いを浮かべながら刀夜は頷き、福☆FUKUダルマ君も刀夜にした説明を省いて話を進める。
ーー…
「この駅が改築されてからも残るこのコインロッカーは、この空間に入れない人間は当然、私ですら怖くて触れないでいます。もしかしたら、何か手がかりになるモノがあるかも…。」
刀夜はそれを聞いて「確かに」と思う。でも…。
「し、調べるってことは、アレ全部開けて見る……ってことだよね?」
縦四つ × 横五つの計二十個のコインロッカー。皆、見たところ鍵は刺さっている。
「ちなみに、阿莉里ちゃん…アリスちゃんが遺棄されたロッカーはどれかなぁ?」
ーー…
「…………左端の一番下のロッカーです。」
そう福☆FUKUダルマ君が答える。
もう何年も前の事件だ。アリスの死体が入ってる……ってことは無いと思うが…。
そんな刀夜に、雪人がまたスマホをイジり始めながら「頑張れーーぇ。」と、後ろから全く心の籠ってない声援を飛ばしてきた。
「なにッ、俺がロッカーを開ける役みたいになってんだよッ!ユキッ、お前もやれよッ!」
「パス。二人で調べるほどのロッカーの数じゃねぇだろ。それとも、一人でやるのが怖いのかな?」
言葉の最後。スマホの画面から視線を刀夜に向けながら、雪人がニヤリと笑う。
それにグッと言葉を詰まらす刀夜。
「まッ、まさかッ!怖か無いし!俺一人で十分だし!」
見え見えの強がり。雪人は「ちょろっ。」と思いながら、スマホに視線を戻した。
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