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落語『桃太郎』
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ようこそのお運びさまで。
相変わらずおしゃべりをして皆さまのお暇を頂戴しております。
子育てとは大変難しいもので、親というものは急には親にはなれません。
子があってはじめて親になりますから、最初から達人はおりません。ゆっくりゆっくりと親になっていくのでございます。
「私は子育てのスペシャリスト。エキスパートのエンターティナーです」
なんてことを仰る方はおりません。
ま、ごく稀におられますが、育てられる方にも個性がありますから100パーセントの答えなんてありません。
「おいおしず」
「なんです、お前さん」
「この子育て指南書には子どもは褒めて伸ばすと書いてある」
「やだよ、お前さん。また変なもんにかぶれちゃって。およしよ。船頭多くして舟、山を登るの例えもあるよ?」
「いいんだよ。早速やってみよう。お前、金坊をよんできな」
「やだね、この人ァ。自分で押し入れに入れたんじゃないか」
「あ。そうだった! かれこれ一刻(二時間)になるか?」
「馬鹿だね。我が子を忘れる人がありますか」
許されて金坊、押し入れから出されて、おとっつぁんの前に連れて来られます。
「おー。金ちゃん。久しく見えなかったな。元気だったか?」
「何言ってんだよ、おとっつぁんに叱られたんじゃないか」
「それはそうと、お若く見えますな。お幾つで?」
「おとっつぁん。自分の子だぞ? おいら十だい」
「そんな。まだお若い。八つくらいにしか見えませんぞ?」
「なんだい。幼ねぇってことかよ」
「ときに、少し背が伸びましたか?」
「こりゃさっきおとっつぁんに叩かれて出来たコブだい」
なんて、おとっつぁんの言うこと全てから回ってます。急には人はなかなか変われないもので。
こちらのお爺さんとお婆さん。
子どもに恵まれず、だった二人のわびしい暮らし。
しかしながら常々信心して、子どもが授かることを祈っておりました。
ある日、お婆さんが川で洗濯していると、川上から大きな桃がドンブラコッコ、ドンブラコッコ。
奇っ怪な話ですが、お婆さんはそれを拾ってウチに帰ります。
お爺さんと並んで、すわ桃を切ろうとすると中から男の子が産声を上げて産まれました。
これぞ天からの授かり物と、男の子を「桃太郎」と名付け、大切に育てました。
歳が行ってから出来た子ですから、まるで腫れ物を扱うように大事に大事に甘やかして育てますと、いつの間にか、立派な今どきの少年となりました。
桃太郎はお爺さん、お婆さんの前に跪きまして、
「おとっつぁん。おっかさん。オイラ都を脅かす鬼退治に出掛けてくる」
と、鼻息荒く言いますものの、お爺さんとお婆さんは命の危険がある仕事ですから、そんなことをさせたくない。
「バカも休み休み言いなよ? 今まで何人の人が鬼退治に出掛けて成功したと思ってんだい。人生安定が大事ですよ。そんなバカげた夢はあきらめなさい」
とまぁ、都に行ってミュージシャンになると言う我が子を諭すように言いますが、桃太郎の方ではイエスと聞き入れてくれない。
どうしてもと言うので、お婆さんは、桃太郎のために日本一のキビダンゴを作りました。
それを桃太郞はスマホを取り出し画像に収めます。
「桃や。何をしているんだい」
「おっかさんが作ったキビダンゴをインスタに上げてんだよ。ほら、もう『いいね』が30もついた」
さすが甘やかされて育てられております桃太郎。すでにスマホを持たされ、個人SNSアカウントを取得しておりました。
お婆さんが作ったキビダンゴを腰に下げ、片手にスマホを持ちながら鬼退治に出掛けました。
さっそくツイッターで仲間を募りますと、近くにいた犬と猿が集まってきました。
「鬼退治、マジハンパねッス」
「キビダンゴ食べる?」
「あざーす」なんていいながら。
三人は鬼が住まうという鬼ヶ島の対岸にたどり着きました。
さっそく雉型のドローンを飛ばし、鬼たちの偵察を行い情報を集めます。ウィキペディアやまとめサイトで弱点を探り出し、奇襲をかけてこれを撃退しました。
財宝を押収し、荷車に詰め込んで、お爺さん、お婆さんの元に戻りますと二人は喜んで歓待しました。
「よくやった桃太郎や」
「ありがとうおとっつぁん」
「この功績を都の貴族が知れば、お前を迎えに来られるだろう。仕官も叶い、大きな屋敷を構えて大臣になれるかもしれん」
「いやぁ、オイラそんな堅苦しいのやだよ」
「どうして?」
「オイラ、将来ユーチューバーになる!」
親の心、子知らずといったお話でした。
ここでお時間で御座います。
相変わらずおしゃべりをして皆さまのお暇を頂戴しております。
子育てとは大変難しいもので、親というものは急には親にはなれません。
子があってはじめて親になりますから、最初から達人はおりません。ゆっくりゆっくりと親になっていくのでございます。
「私は子育てのスペシャリスト。エキスパートのエンターティナーです」
なんてことを仰る方はおりません。
ま、ごく稀におられますが、育てられる方にも個性がありますから100パーセントの答えなんてありません。
「おいおしず」
「なんです、お前さん」
「この子育て指南書には子どもは褒めて伸ばすと書いてある」
「やだよ、お前さん。また変なもんにかぶれちゃって。およしよ。船頭多くして舟、山を登るの例えもあるよ?」
「いいんだよ。早速やってみよう。お前、金坊をよんできな」
「やだね、この人ァ。自分で押し入れに入れたんじゃないか」
「あ。そうだった! かれこれ一刻(二時間)になるか?」
「馬鹿だね。我が子を忘れる人がありますか」
許されて金坊、押し入れから出されて、おとっつぁんの前に連れて来られます。
「おー。金ちゃん。久しく見えなかったな。元気だったか?」
「何言ってんだよ、おとっつぁんに叱られたんじゃないか」
「それはそうと、お若く見えますな。お幾つで?」
「おとっつぁん。自分の子だぞ? おいら十だい」
「そんな。まだお若い。八つくらいにしか見えませんぞ?」
「なんだい。幼ねぇってことかよ」
「ときに、少し背が伸びましたか?」
「こりゃさっきおとっつぁんに叩かれて出来たコブだい」
なんて、おとっつぁんの言うこと全てから回ってます。急には人はなかなか変われないもので。
こちらのお爺さんとお婆さん。
子どもに恵まれず、だった二人のわびしい暮らし。
しかしながら常々信心して、子どもが授かることを祈っておりました。
ある日、お婆さんが川で洗濯していると、川上から大きな桃がドンブラコッコ、ドンブラコッコ。
奇っ怪な話ですが、お婆さんはそれを拾ってウチに帰ります。
お爺さんと並んで、すわ桃を切ろうとすると中から男の子が産声を上げて産まれました。
これぞ天からの授かり物と、男の子を「桃太郎」と名付け、大切に育てました。
歳が行ってから出来た子ですから、まるで腫れ物を扱うように大事に大事に甘やかして育てますと、いつの間にか、立派な今どきの少年となりました。
桃太郎はお爺さん、お婆さんの前に跪きまして、
「おとっつぁん。おっかさん。オイラ都を脅かす鬼退治に出掛けてくる」
と、鼻息荒く言いますものの、お爺さんとお婆さんは命の危険がある仕事ですから、そんなことをさせたくない。
「バカも休み休み言いなよ? 今まで何人の人が鬼退治に出掛けて成功したと思ってんだい。人生安定が大事ですよ。そんなバカげた夢はあきらめなさい」
とまぁ、都に行ってミュージシャンになると言う我が子を諭すように言いますが、桃太郎の方ではイエスと聞き入れてくれない。
どうしてもと言うので、お婆さんは、桃太郎のために日本一のキビダンゴを作りました。
それを桃太郞はスマホを取り出し画像に収めます。
「桃や。何をしているんだい」
「おっかさんが作ったキビダンゴをインスタに上げてんだよ。ほら、もう『いいね』が30もついた」
さすが甘やかされて育てられております桃太郎。すでにスマホを持たされ、個人SNSアカウントを取得しておりました。
お婆さんが作ったキビダンゴを腰に下げ、片手にスマホを持ちながら鬼退治に出掛けました。
さっそくツイッターで仲間を募りますと、近くにいた犬と猿が集まってきました。
「鬼退治、マジハンパねッス」
「キビダンゴ食べる?」
「あざーす」なんていいながら。
三人は鬼が住まうという鬼ヶ島の対岸にたどり着きました。
さっそく雉型のドローンを飛ばし、鬼たちの偵察を行い情報を集めます。ウィキペディアやまとめサイトで弱点を探り出し、奇襲をかけてこれを撃退しました。
財宝を押収し、荷車に詰め込んで、お爺さん、お婆さんの元に戻りますと二人は喜んで歓待しました。
「よくやった桃太郎や」
「ありがとうおとっつぁん」
「この功績を都の貴族が知れば、お前を迎えに来られるだろう。仕官も叶い、大きな屋敷を構えて大臣になれるかもしれん」
「いやぁ、オイラそんな堅苦しいのやだよ」
「どうして?」
「オイラ、将来ユーチューバーになる!」
親の心、子知らずといったお話でした。
ここでお時間で御座います。
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