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第三話
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休みが終わって週明け学校。
奈都と暁彦は相変わらずラブラブっぷりを発揮していたが、それが気にならなかった。
トイレに行くフリをしてニコルのクラスを覗いてみるとニコルはいない。
廊下に、ニコルと仲のいい女友達がいたので捕まえて聞いてみた。
「あのォ~。ニコルは?」
「あ、波留ちゃん? 自分の机に座ってるよ?」
「ま、マジ?」
もう一度そっと覗いてみるとそこには、バッサリと髪の毛を切ってしまったニコルがいた。
耳まで出してしまっている。
あまりのギャップに鼓動が高鳴る。
「朝からテンション低いんだよね~。いつもニコニコしてるのにね。どーでもいいとかって言ってた」
「そ、そっか」
「あれぇ。気になりますぅ?」
「ま、まぁ。大事な……友達だし」
「ふうん」
気にならないわけがなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから、ニコルとは会う回数が少なくなって行った。
あきらかにニコルはオレを避けていた。
どうしたらいいんだろう。
奈都を思う気持ちが、ニコルの気持ちを聞いて打ち消されてしまった。
オレはニコルのこと好きなんだろうか?
答えがでない。
でも、どちらかといえば友人という気持ちが大きいんだ。
失いたくない相手。
それってなんだろう。
アイツはオレが奈都と付き合うって聞いて喜んでくれた。
覚えてる。
どんな気持ちだったんだ?
お前は──。
少し前まではお前に彼氏が出来たら、一緒に喜んでやろうと思ってたのに。
今はなんかそんな気がしない。
グレーな気持ちがオレの中にある。
もしもそうなったら?
もしもそうなったら?
──わからない。
前は。前までは。
部活が終わって帰り道は、1週間に一度くらいはニコルと一緒に帰っていた。
でも、あれ以来一度もニコルと一緒に帰っていない。
いないんだ。
前にも後ろにも。
気になって振り返ってもいない。
サッカー部と女陸が同時に終わっても、帰り道が重ならなかった。
そんなことが数ヶ月続いていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
秋になって、部活帰り。
土手側のコスモスも見事だろうと思って、帰り道のコースをその日たまたま変更した。
すると、前に短髪のニコルが歩いているのが見えた。
カバンの音をガチャガチャ鳴らしながら、オレは久しぶりにニコルに駆け寄った。
「よーーー……う」
クルリと振り返ったニコル。
「あ。なんだ。シュートか」
その声がいつもと一緒だった。
思わず、ニコルの顔を見た。
──違和感がある。
「どうして? こっちの道に……」
「いやぁ。コスモス……見事だろうなと思って」
といっても、コスモスなんて目に入らなかったのだが。
「だね。ホントに燃えるようだね」
急ぎ足のニコルに合わせながら土手の道を歩いた。
「なぁ」
「なに?」
「ハァハァ。なんて急ぎ足?」
「別に? 足鍛えてるから」
「太くなるぞ~! ……なぁんて」
「別に。シュートに関係ないじゃん」
そっけねー。
そっけねーし笑ってね~!
ニコニコしてるからニコルなんだぞ?
お前は。
「悪かったって。なぁ、元通りのニコルに戻ってくれよ」
「なんで? シュートは何も悪くないじゃん。あたしが勝手にこうしてるだけだよ」
「なんだよぉ」
オレは立ち止まった。
どんどんとニコルの背中が小さくなって行く。
前だったら待っててくれたのに。
そのまま、オレはしばらく土手に腰を下ろしていた。
夕焼けが川を赤々と照らして、赤とんぼが鼻の回りを飛んでいた。
「……なんつーか。物悲しいなぁ。秋って」
独り言を呟きながら、川を目掛けて小石を放り投げた。
「ニコル……」
友人ならば最強なのに。
何でオレたちは男と女なんだ?
そして、なんでアイツはオレに恋心を抱いちゃったんだよ。
奈都と暁彦は相変わらずラブラブっぷりを発揮していたが、それが気にならなかった。
トイレに行くフリをしてニコルのクラスを覗いてみるとニコルはいない。
廊下に、ニコルと仲のいい女友達がいたので捕まえて聞いてみた。
「あのォ~。ニコルは?」
「あ、波留ちゃん? 自分の机に座ってるよ?」
「ま、マジ?」
もう一度そっと覗いてみるとそこには、バッサリと髪の毛を切ってしまったニコルがいた。
耳まで出してしまっている。
あまりのギャップに鼓動が高鳴る。
「朝からテンション低いんだよね~。いつもニコニコしてるのにね。どーでもいいとかって言ってた」
「そ、そっか」
「あれぇ。気になりますぅ?」
「ま、まぁ。大事な……友達だし」
「ふうん」
気にならないわけがなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから、ニコルとは会う回数が少なくなって行った。
あきらかにニコルはオレを避けていた。
どうしたらいいんだろう。
奈都を思う気持ちが、ニコルの気持ちを聞いて打ち消されてしまった。
オレはニコルのこと好きなんだろうか?
答えがでない。
でも、どちらかといえば友人という気持ちが大きいんだ。
失いたくない相手。
それってなんだろう。
アイツはオレが奈都と付き合うって聞いて喜んでくれた。
覚えてる。
どんな気持ちだったんだ?
お前は──。
少し前まではお前に彼氏が出来たら、一緒に喜んでやろうと思ってたのに。
今はなんかそんな気がしない。
グレーな気持ちがオレの中にある。
もしもそうなったら?
もしもそうなったら?
──わからない。
前は。前までは。
部活が終わって帰り道は、1週間に一度くらいはニコルと一緒に帰っていた。
でも、あれ以来一度もニコルと一緒に帰っていない。
いないんだ。
前にも後ろにも。
気になって振り返ってもいない。
サッカー部と女陸が同時に終わっても、帰り道が重ならなかった。
そんなことが数ヶ月続いていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
秋になって、部活帰り。
土手側のコスモスも見事だろうと思って、帰り道のコースをその日たまたま変更した。
すると、前に短髪のニコルが歩いているのが見えた。
カバンの音をガチャガチャ鳴らしながら、オレは久しぶりにニコルに駆け寄った。
「よーーー……う」
クルリと振り返ったニコル。
「あ。なんだ。シュートか」
その声がいつもと一緒だった。
思わず、ニコルの顔を見た。
──違和感がある。
「どうして? こっちの道に……」
「いやぁ。コスモス……見事だろうなと思って」
といっても、コスモスなんて目に入らなかったのだが。
「だね。ホントに燃えるようだね」
急ぎ足のニコルに合わせながら土手の道を歩いた。
「なぁ」
「なに?」
「ハァハァ。なんて急ぎ足?」
「別に? 足鍛えてるから」
「太くなるぞ~! ……なぁんて」
「別に。シュートに関係ないじゃん」
そっけねー。
そっけねーし笑ってね~!
ニコニコしてるからニコルなんだぞ?
お前は。
「悪かったって。なぁ、元通りのニコルに戻ってくれよ」
「なんで? シュートは何も悪くないじゃん。あたしが勝手にこうしてるだけだよ」
「なんだよぉ」
オレは立ち止まった。
どんどんとニコルの背中が小さくなって行く。
前だったら待っててくれたのに。
そのまま、オレはしばらく土手に腰を下ろしていた。
夕焼けが川を赤々と照らして、赤とんぼが鼻の回りを飛んでいた。
「……なんつーか。物悲しいなぁ。秋って」
独り言を呟きながら、川を目掛けて小石を放り投げた。
「ニコル……」
友人ならば最強なのに。
何でオレたちは男と女なんだ?
そして、なんでアイツはオレに恋心を抱いちゃったんだよ。
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