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第1話 撃沈
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平日の診療所。患者は少なく男は待合室からすぐに医師の待つ白亜の部屋へと呼ばれた。
その男は清潔そうな高級感ある服装。カチッとキメられた短髪。高級そうな腕時計。
スポーツマン風だが落ち着いた雰囲気。世間の目から見たらイケメンであろうその男は眼鏡をかけたロマンスグレーの医師を前にして丸イスに腰を下ろし、診断の結果を恥ずかしそうに待っていた。
大したことはないと思っている男に放たれた医師からの言葉は、一撃で撃沈する効果があった。
「クラミジアですね」
「え……?」
性感染症。性病だ。
「少し遊びが過ぎましたね」
医師は、男の左手の薬指の指輪を見ながら続ける。
「抗生剤だしておきますが、奥様にもうつる恐れがありますから当分は……」
男はその言葉の続きを小さい声で被せた。
「……あの。その。妻だけなんです……」
「え?」
医師は暫しの絶句。目は驚いて多少見開いたが、すぐにスッと普通の目に戻した。
「そこはこちらでもタッチできませんね。できれば奥様にもご来院頂きたいところではありますが……」
「え、ええ。是非……」
男には、性感染症に罹患する覚えがまるでなかった。
行為にしたって、久しぶりに妻を抱いたのが二週間前。
それしか思い当たるフシがなかった。
どうにも言えない感情。頭が真っ白だ。
「浮気……」
つい、声に出してしまった。
待合室の他の患者が一斉に首を男に向けた。
男は視線を感じて慌てて目をそらした。
男は妻を愛していた、だからこそフツフツと黒い思いが湧いて来る。
──なぜ。
──どうして。
受付から自分の名前が呼ばれるまで、じっと怒りを抑え続けた。
受付を済ませ、薬局で薬をもらい足早に自分の車へと戻った。
病院の駐車場。車の中は回りを気にすること無い鉄の個室。そこで男は妻への恨みを吐き出した。
「クソぉッ! なんだってんだ! アヤ!」
大声で妻の名を叫び同時にステアリングを殴りつけた。その拍子に狙いが定まっていなかったのか、クラクションまで叩いてしまい軽く警告音がなる。
男にはやり場の無い怒りだけがたまって行く。
そのままステアリングに顔をうずめた。
妻のことを思い出しながら。
その男は清潔そうな高級感ある服装。カチッとキメられた短髪。高級そうな腕時計。
スポーツマン風だが落ち着いた雰囲気。世間の目から見たらイケメンであろうその男は眼鏡をかけたロマンスグレーの医師を前にして丸イスに腰を下ろし、診断の結果を恥ずかしそうに待っていた。
大したことはないと思っている男に放たれた医師からの言葉は、一撃で撃沈する効果があった。
「クラミジアですね」
「え……?」
性感染症。性病だ。
「少し遊びが過ぎましたね」
医師は、男の左手の薬指の指輪を見ながら続ける。
「抗生剤だしておきますが、奥様にもうつる恐れがありますから当分は……」
男はその言葉の続きを小さい声で被せた。
「……あの。その。妻だけなんです……」
「え?」
医師は暫しの絶句。目は驚いて多少見開いたが、すぐにスッと普通の目に戻した。
「そこはこちらでもタッチできませんね。できれば奥様にもご来院頂きたいところではありますが……」
「え、ええ。是非……」
男には、性感染症に罹患する覚えがまるでなかった。
行為にしたって、久しぶりに妻を抱いたのが二週間前。
それしか思い当たるフシがなかった。
どうにも言えない感情。頭が真っ白だ。
「浮気……」
つい、声に出してしまった。
待合室の他の患者が一斉に首を男に向けた。
男は視線を感じて慌てて目をそらした。
男は妻を愛していた、だからこそフツフツと黒い思いが湧いて来る。
──なぜ。
──どうして。
受付から自分の名前が呼ばれるまで、じっと怒りを抑え続けた。
受付を済ませ、薬局で薬をもらい足早に自分の車へと戻った。
病院の駐車場。車の中は回りを気にすること無い鉄の個室。そこで男は妻への恨みを吐き出した。
「クソぉッ! なんだってんだ! アヤ!」
大声で妻の名を叫び同時にステアリングを殴りつけた。その拍子に狙いが定まっていなかったのか、クラクションまで叩いてしまい軽く警告音がなる。
男にはやり場の無い怒りだけがたまって行く。
そのままステアリングに顔をうずめた。
妻のことを思い出しながら。
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