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第92話 鈴の姿
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シゲルは実の祖母。
それを知った彩は更なる心の平安を取り戻し、元の都市に一人で戻っていた。
住所移転に必要な書類を集めるためだ。
そのために市役所に向かう。
だが、その前に立ちよりたい場所があった。
元の家だ。
三人で暮らした家。
今頃は鷹也は出勤しているだろう。
鈴は保育園に預けられているかも知れないが家の中にいるかもしれない。
そう思い、立ち寄ってみると駐車場には見知らぬ車があった。
それは鷹也の母親の車だったのだが、数週間前に買い替えていたために彩は知らない車だったのだ。
探偵西丘の言葉を思い出す。
「旦那さまが再婚なされますよ」
ひょっとしたらその女がすでに家に入り込んで鈴の面倒を見ているのかも知れない。
そっと家の塀からリビングの様子を見てみた。
鈴がいた。
元気に遊んでいる。
そこにはもう一人いるようだが、カーテンが半開きの状態で彩からはその人の姿は見えなかった。
見えていれば鷹也の母親だと分かったであろう。
しかし見えなかった。
鈴は対面にいるであろう人に向かってウサギのお人形を向けて話をしているようだった。
そして小さい手で拍手をする。
手を伸ばせば届きそうだ。だがいけない。
彩は涙を飲み込んで、途中誰にも会わないように市役所に向かって行った。
何度も訪れた市役所。
顔見知りの職員もいる。
窓口に行き、自分の戸籍をとって驚いた。
まだ鷹也の妻としての戸籍だったのだ。
驚いたが少しばかり嬉しい気持ちがふくらんだ。
おそらく鷹也は仕事が忙しい事にかまけてまだ離婚届を提出していないのであろう。
だが、このままではいけない。
自分の住所移転もできないし、新しく妻となる女性のためにもならない。
自分が妻のとき。
鷹也の仕事中に電話はできなかった。メールやラインはしてはいたがそれも夜が大半だった。
一生懸命働いているのに些細なことを連絡するのは申し訳ない気持ちもあったし、鷹也本人も仕事中に家族からの連絡を嫌ったからだ。
しかし今の自分は家族ではない。
そして離婚届を提出していないなどとても重要なことだ。
叱ってやろうと言ういたずら心。
鷹也の仕事中に電話をかけるということを一度はやってみたかったのだ。
彼女は市役所内の公衆電話の受話器をとり、忘れもしない鷹也のスマートフォンの番号をダイヤルした。
それを知った彩は更なる心の平安を取り戻し、元の都市に一人で戻っていた。
住所移転に必要な書類を集めるためだ。
そのために市役所に向かう。
だが、その前に立ちよりたい場所があった。
元の家だ。
三人で暮らした家。
今頃は鷹也は出勤しているだろう。
鈴は保育園に預けられているかも知れないが家の中にいるかもしれない。
そう思い、立ち寄ってみると駐車場には見知らぬ車があった。
それは鷹也の母親の車だったのだが、数週間前に買い替えていたために彩は知らない車だったのだ。
探偵西丘の言葉を思い出す。
「旦那さまが再婚なされますよ」
ひょっとしたらその女がすでに家に入り込んで鈴の面倒を見ているのかも知れない。
そっと家の塀からリビングの様子を見てみた。
鈴がいた。
元気に遊んでいる。
そこにはもう一人いるようだが、カーテンが半開きの状態で彩からはその人の姿は見えなかった。
見えていれば鷹也の母親だと分かったであろう。
しかし見えなかった。
鈴は対面にいるであろう人に向かってウサギのお人形を向けて話をしているようだった。
そして小さい手で拍手をする。
手を伸ばせば届きそうだ。だがいけない。
彩は涙を飲み込んで、途中誰にも会わないように市役所に向かって行った。
何度も訪れた市役所。
顔見知りの職員もいる。
窓口に行き、自分の戸籍をとって驚いた。
まだ鷹也の妻としての戸籍だったのだ。
驚いたが少しばかり嬉しい気持ちがふくらんだ。
おそらく鷹也は仕事が忙しい事にかまけてまだ離婚届を提出していないのであろう。
だが、このままではいけない。
自分の住所移転もできないし、新しく妻となる女性のためにもならない。
自分が妻のとき。
鷹也の仕事中に電話はできなかった。メールやラインはしてはいたがそれも夜が大半だった。
一生懸命働いているのに些細なことを連絡するのは申し訳ない気持ちもあったし、鷹也本人も仕事中に家族からの連絡を嫌ったからだ。
しかし今の自分は家族ではない。
そして離婚届を提出していないなどとても重要なことだ。
叱ってやろうと言ういたずら心。
鷹也の仕事中に電話をかけるということを一度はやってみたかったのだ。
彼女は市役所内の公衆電話の受話器をとり、忘れもしない鷹也のスマートフォンの番号をダイヤルした。
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