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彼は美女50人のハーレムを選んだ
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その日、私は路地裏の薄暗いバーに立ち寄った。
こういうところのほうが雰囲気があっていいだろうと思ったが、中は小汚く照明にはホコリと蜘蛛の巣がこびりついていた。
「なんでこんなところに来ちまったんだろって顔してンな。だけど安くて良いんだ。まぁ、座れよ」
私の顔色を見たのか、入り口の近くにいた酔っ払いの老人客が話しかけてきた。店は狭いしそこそこ客もいるので相席したほうがいいと彼は言った。
まぁ仕方ないか。座ってウイスキーを頼むと、聞いてもいないのに酔っ払いは話しを始めた。どうやら彼は勇者らしかった。しかも、老人と思ったがまだ40代前半。それにしては老けてないか??
「──勇者? 勇者アベル??」
「いやぁ。その前の勇者アドルフ」
「ああ。いや聞いたことない」
「そうか。まぁ聞いてくれ」
まぁ、暇つぶしだ。今は15年前に勇者アベルによって魔王も倒され平和な御世。
彼の──、なぜか生き残った勇者の話しを聞いてみるのもいいのかもしれない。
◇
──まぁ、オレの勇者としての働きは結構いいもんだった。
王女を魔王軍から救い、聖剣や聖なる防具を手に入れ魔城に乗り込んだ。
奴らの手段はもう篭城しか残されてなかったが、闇夜に城壁から忍び込んだんだ。
そして、並みいる親衛隊を魔法で焼き殺し、とうとう魔王の御前に進んだ。
「覚悟しろ魔王!」
「ふふん。ちょこざいな!」
50数合斬り込んだが向こうもさるもの。なかなか決着がつかない。
両者汗だくになり、自分達の力は互いに拮抗していると悟ったんだ。
つばぜりあいしながら、魔王はこう言ってきた。
「さすがだ。アドルフ君」
「そうかい! ハァハァ! やっぱり魔王だな! 強いよ!」
オレたちは互いに後ろに避け間合いをとった。彼は話しを続けた。
「──もしも、魔王、勇者と言う立場でなかったら我々は良い友人だった。そうは思わないか?」
「思わない。結局魔王、魔族は人間の敵だからな!」
「そうかね? そして、余を倒してどうするね?」
「──どうする?? 我々、人間が平和になる! それだけだ!」
「王女との結婚──かね?」
私の動きはピタリと止まった。図星だった。
「ははーん。やはり。そして王族となり、未来は人間の王となる……か」
「い、いけないか!?」
「いや、いけなくはない」
そう言って、茶化すようなゼスチャーをした。
「……なんだよ」
「まぁ、アドルフ君にはそういう夢があるんだろう。だがね、王族……いいもんかね?」
「そ、そりゃぁ、人間の頂点だからな」
「毎日、王女との閨(ねや)での密か事を聞かれ、排泄物の色まで調べられる。健康状態を見なくてはならないからな。自由なんてないぞ? 今日は誰とも会いたくないなんてものない。他国から賓客が来たらスケジュールを組まれ愛想笑いをしていなくてはならない」
「そ、それがどうした!」
彼はフフンと笑った。
「自由が欲しくないかね? 魔王討伐なんてやめて美女達と暮らす。毎日毎日、快楽だけだ。ハーレム! 男の夢。どうだ! 余ならそれをアドルフ君! キミに与えられるッ」
と言って、流し目を送って来た。
は、ハーレム。
美女達。
ゴクリ。
毎日快楽だけ──?
す、すごい。
「そ、そんなこと言って、私を誘惑するつもりだな?」
「そりゃそうだ。余も死にたくない。助かりたい。だからこっちも必死に一世一代の大魔法を使う。美女だけのハーレムをキミに用意しよう。彼女達はちゃんとした人間。そして老いない。ずっとずっと美女のままだ。どうだい?」
ウッソだろ! そんな。
「……あんなことも、こんなこともしてくれるのか?」
「もちろん。あんなことも、そんなことも自由自在だ。そしてそのアドルフ君の楽園だけは平和のまま──」
私はニヤニヤが止まらなかった。
「よ、よし。のもう」
「そうか? ただし、アドルフ君の勇者としての力は失われる。しかし、その分美女の数が多くなる。そうだなァ。アドルフ君ほどの力であれば美女50人は形成されるぞ」
マジすっか!
彼は私に魔法をかけ始めた。じっくりと長く長く──。
私の体から勇者の力が失われて行くのを感じる。
だが、それとともにわき上がるこの魅惑のエナジーはなんだ!?
そのうちに、やわらかい手の感触を肩に感じた。
「んふふ。ねぇ、アドルフ君。あっちで遊ぼうよ!」
気がつくと、大邸宅だ。目の前には薄衣の美女、美女、美女、美女……。
彼女達に手を引かれて寝室へ──。
◇
「ご、ゴクリ、それで?」
私は、目の前の勇者アドルフに話しの続きを聞いた。
「ああ。キミは魔王が約束をどこかでねじまげたと思うだろ? 例えば美女は魔物だった。オークやトロルにしてみれば美女とか」
「お、おう」
「彼はちゃんと約束を守った。人間の美女。そして老いない。私のいうことをなんでも聞いてくれる美女を50人も与えてくれた。勇者アベルに敗れた後も決して消えることのない永遠の魔法──」
「そ、そうか。で? で? で?」
彼は、フンと鼻をならした。
「あの時、私は若かった。そんな楽園なら誰でも欲しいだろ」
「たしかに」
「しかしな、それは間違いだ」
彼は話し始めた。それから20年の話しを。
その話しを最後まで聞かないうちに──。
「あ! いたいた! アドくん、帰ろ~~」
「ホントだ! みんな! こっちこっちぃ~!」
目をやると、絶世の美女が5、6人。その後ろにゾロゾロと美女が続いて来る。
元勇者アドルフは酒を飲み干してゆっくりと立ち上がった。
「さ! 帰ってアド君の好きなこといっぱいしてあげる!」
「……はは」
「ね! その前にゴハンにしよう!」
「──そうだね」
──彼の話しだと、20年。50人の美女を養い続けることに疲れたらしい。しかし、逃げても魔法の邸宅だ。朝起きるといつもの寝室。
聖剣も聖なる防具は高く売れたがその残金は残り少なく日雇いで毎日疲れて大邸宅に帰る。そして美女50人たちと遊び、そしてまた働く──。
彼女達を養うために。
こういうところのほうが雰囲気があっていいだろうと思ったが、中は小汚く照明にはホコリと蜘蛛の巣がこびりついていた。
「なんでこんなところに来ちまったんだろって顔してンな。だけど安くて良いんだ。まぁ、座れよ」
私の顔色を見たのか、入り口の近くにいた酔っ払いの老人客が話しかけてきた。店は狭いしそこそこ客もいるので相席したほうがいいと彼は言った。
まぁ仕方ないか。座ってウイスキーを頼むと、聞いてもいないのに酔っ払いは話しを始めた。どうやら彼は勇者らしかった。しかも、老人と思ったがまだ40代前半。それにしては老けてないか??
「──勇者? 勇者アベル??」
「いやぁ。その前の勇者アドルフ」
「ああ。いや聞いたことない」
「そうか。まぁ聞いてくれ」
まぁ、暇つぶしだ。今は15年前に勇者アベルによって魔王も倒され平和な御世。
彼の──、なぜか生き残った勇者の話しを聞いてみるのもいいのかもしれない。
◇
──まぁ、オレの勇者としての働きは結構いいもんだった。
王女を魔王軍から救い、聖剣や聖なる防具を手に入れ魔城に乗り込んだ。
奴らの手段はもう篭城しか残されてなかったが、闇夜に城壁から忍び込んだんだ。
そして、並みいる親衛隊を魔法で焼き殺し、とうとう魔王の御前に進んだ。
「覚悟しろ魔王!」
「ふふん。ちょこざいな!」
50数合斬り込んだが向こうもさるもの。なかなか決着がつかない。
両者汗だくになり、自分達の力は互いに拮抗していると悟ったんだ。
つばぜりあいしながら、魔王はこう言ってきた。
「さすがだ。アドルフ君」
「そうかい! ハァハァ! やっぱり魔王だな! 強いよ!」
オレたちは互いに後ろに避け間合いをとった。彼は話しを続けた。
「──もしも、魔王、勇者と言う立場でなかったら我々は良い友人だった。そうは思わないか?」
「思わない。結局魔王、魔族は人間の敵だからな!」
「そうかね? そして、余を倒してどうするね?」
「──どうする?? 我々、人間が平和になる! それだけだ!」
「王女との結婚──かね?」
私の動きはピタリと止まった。図星だった。
「ははーん。やはり。そして王族となり、未来は人間の王となる……か」
「い、いけないか!?」
「いや、いけなくはない」
そう言って、茶化すようなゼスチャーをした。
「……なんだよ」
「まぁ、アドルフ君にはそういう夢があるんだろう。だがね、王族……いいもんかね?」
「そ、そりゃぁ、人間の頂点だからな」
「毎日、王女との閨(ねや)での密か事を聞かれ、排泄物の色まで調べられる。健康状態を見なくてはならないからな。自由なんてないぞ? 今日は誰とも会いたくないなんてものない。他国から賓客が来たらスケジュールを組まれ愛想笑いをしていなくてはならない」
「そ、それがどうした!」
彼はフフンと笑った。
「自由が欲しくないかね? 魔王討伐なんてやめて美女達と暮らす。毎日毎日、快楽だけだ。ハーレム! 男の夢。どうだ! 余ならそれをアドルフ君! キミに与えられるッ」
と言って、流し目を送って来た。
は、ハーレム。
美女達。
ゴクリ。
毎日快楽だけ──?
す、すごい。
「そ、そんなこと言って、私を誘惑するつもりだな?」
「そりゃそうだ。余も死にたくない。助かりたい。だからこっちも必死に一世一代の大魔法を使う。美女だけのハーレムをキミに用意しよう。彼女達はちゃんとした人間。そして老いない。ずっとずっと美女のままだ。どうだい?」
ウッソだろ! そんな。
「……あんなことも、こんなこともしてくれるのか?」
「もちろん。あんなことも、そんなことも自由自在だ。そしてそのアドルフ君の楽園だけは平和のまま──」
私はニヤニヤが止まらなかった。
「よ、よし。のもう」
「そうか? ただし、アドルフ君の勇者としての力は失われる。しかし、その分美女の数が多くなる。そうだなァ。アドルフ君ほどの力であれば美女50人は形成されるぞ」
マジすっか!
彼は私に魔法をかけ始めた。じっくりと長く長く──。
私の体から勇者の力が失われて行くのを感じる。
だが、それとともにわき上がるこの魅惑のエナジーはなんだ!?
そのうちに、やわらかい手の感触を肩に感じた。
「んふふ。ねぇ、アドルフ君。あっちで遊ぼうよ!」
気がつくと、大邸宅だ。目の前には薄衣の美女、美女、美女、美女……。
彼女達に手を引かれて寝室へ──。
◇
「ご、ゴクリ、それで?」
私は、目の前の勇者アドルフに話しの続きを聞いた。
「ああ。キミは魔王が約束をどこかでねじまげたと思うだろ? 例えば美女は魔物だった。オークやトロルにしてみれば美女とか」
「お、おう」
「彼はちゃんと約束を守った。人間の美女。そして老いない。私のいうことをなんでも聞いてくれる美女を50人も与えてくれた。勇者アベルに敗れた後も決して消えることのない永遠の魔法──」
「そ、そうか。で? で? で?」
彼は、フンと鼻をならした。
「あの時、私は若かった。そんな楽園なら誰でも欲しいだろ」
「たしかに」
「しかしな、それは間違いだ」
彼は話し始めた。それから20年の話しを。
その話しを最後まで聞かないうちに──。
「あ! いたいた! アドくん、帰ろ~~」
「ホントだ! みんな! こっちこっちぃ~!」
目をやると、絶世の美女が5、6人。その後ろにゾロゾロと美女が続いて来る。
元勇者アドルフは酒を飲み干してゆっくりと立ち上がった。
「さ! 帰ってアド君の好きなこといっぱいしてあげる!」
「……はは」
「ね! その前にゴハンにしよう!」
「──そうだね」
──彼の話しだと、20年。50人の美女を養い続けることに疲れたらしい。しかし、逃げても魔法の邸宅だ。朝起きるといつもの寝室。
聖剣も聖なる防具は高く売れたがその残金は残り少なく日雇いで毎日疲れて大邸宅に帰る。そして美女50人たちと遊び、そしてまた働く──。
彼女達を養うために。
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