ご令嬢たちは、もっと恋がしたい!

家紋武範

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公爵令嬢がお昼番組のゲスト。出たサイコロの目は「婚約破棄の話」

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「婚約破棄の話。略して~」

『はきばなー!!』

 わたくし公爵家の娘イボンヌは、昼番組のゲストとして招かれていた。司会者に言われて大きなサイコロを転がし、出た目の話をするというものだ。

「それではイボンヌ様。お話を聞かせて頂きましょう」
「そうですねー。世間を賑わせましたから皆さんほとんどご存じだとは思うんですけど、ピート王太子殿下に婚約破棄されたお話を──」

「はい。お願い致します」
「ある夜会の時、私は仲の良いご令嬢たちと雑談に興じていたのです。そしたら急に殿下が『お前との婚約を破棄するー!』って大変な剣幕で」

「はー、なるほど」
「殿下の後ろには評判の悪い男爵家のご令嬢エラがいたんですね。正直やられたなー、と」

「と言いますと?」
「エラの計略で、あることないこと吹き込まれたと感じたのです。自分が私に成り代わろうとしたのでしょう。案の定、身に覚えのない罪状を並べられ、罪が確定するまで屋敷に蟄居を命ぜられました」

「はいはい。あーなるほど。そういう経緯だったんですねー」
「そうなんです。エラがすぐに王太子妃となったのもその為でした」

「なるほど~。では次のお話を」
「はい」

 私は立ち上がって、もう一度サイコロを抱えて投げる。司会者はそれを取って会場へと向けた。

「ざまぁみろな話。略して~」

『ざまぁ!!!』

 席に戻った私は『ざまぁな話』を始めた。

「エラが王太子妃となって、私の命は風前の灯火でしたが、隣の帝国が同盟を破って王城を囲んだのは皆さんご存知だと思います」
「あの時は、本当に驚きました」

「実は帝国のゲオルク皇太子殿下に外遊の際に見初められ求婚されていたのです。私も女ですからハンサムで人望厚いゲオルク殿下に心が動きました。しかし結婚の約束があると断ったんです」
「はいはいはい」

「その時、殿下は『君のために国境を侵す真似はしない。遠くにいても愛している』とおっしゃって下さったんです」
「えー! そうだったんですね!」

「ですから私がこのような目にあってしまったので殿下はすぐに動いて王城を陥落。王家を平民に落とし国を併合して、私を妻にすると言って下さったんです」
「なるほど~。そういえば前の王太子妃を、下町でボロ服を着て荷車を引いてるのを見ましたよ」

「お気の毒に。私には関係ないことですけど」
「はい。と言うわけで本日のゲストは、皇太子妃のイボンヌ様でした。どうもありがとうございました~」

「それでは皆さん、ごきげんよう」
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