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荷物持ちのボクは勇者一行から追放されてしまった……

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【前書き】※ご注意ください。
※当方、ポケモンのファンなので中には少し似た箇所も出てくるかも知れませんが、全く関係ありません。
( >Д<;)




◇ ◇ ◇


「残念だけどこの馬車は四人乗りなんだ」

 と勇者スネイルはいった。
 今まで王都から魔王討伐を目的に旅してきたわけだが、勉強もスポーツもできないボクはみんなの荷物を押し付けられ、いじめられてきた。
 スネイルと幼なじみであるボクたち三人。バトルマスターのジャニアス、聖女のシズリィ、そしてボクは荷物持ちのビーノ。

 スネイルは旅立つ前に王都のエライ人とパパが知り合いで勇者にして貰えたとかわけのわからないことを言っていたが、それにジャニアスが食らいつき、それなら四人で──となったのだ。
 しかし、道中の厳しさのストレスからボクはスネイルとジャニアスのいじめの標的にされ続け、本日のこれだ。

 いとこのお兄さんが乗ってきた馬車で魔王城まであっという間。しかし四人乗り。スネイル、ジャニアス、シズリィ、そしていとこのお兄さん。ボクは外された。

 いつものことと思いつつも食い下がった。ボクがいなかったら荷物はどうするの? と。
 だが荷物は馬車に乗せられる。だからお前は追放との決定は覆らなかった。

 スネイルとジャニアスはボクのなけなしの荷物を投げつけ、馬車に乗り込んだ。
 ボクは泣けてきたが、ボクの隣には聖女シズリィが立っていた。

「シズちゃんはいいんだよ」

 と馬車から身を乗り出したスネイルが言ったが、シズリィは答えた。

「意地悪する人は嫌い。ビーノさん。行きましょう」
「シ、シズちゃん……」

 ボクは泣きながらシズリィの後を追った。シズリィは馬車が入れない森の道を選んだのだ。
 それにスネイルは声を張り上げて負け惜しみを言っていたがシカトした。





 聖女シズリィは、僕たちの幼馴染みだ。だが最近になって彼女の手の甲に紋様が現れ聖女だということがわかったのだ。

 聖女は勇者と共に魔王討伐しなくてはならないという伝説がある。そして二人はその後結婚して新しい国を作る、との予言もあるのだ。
 その為に、勇者がどこかに出現しているだろうと言うことになり、国は躍起になって勇者を探すと果たして勇者はスネイルだと宣言されたのだ。

 スネイルはヤル気満々でシズリィと魔王討伐に出かけることになったが、ジャニアスとボクは従者に立候補した。
 スネイルはジャニアスを戦闘要員、僕を雑用係に命じての旅だったが、魔王の部下はなかなかに強かった。
 ジャニアスの剣技とシズリィの神の加護があって道中はなんとか進めたが、厳しい戦いが終わると、スネイルとジャニアスの二人はストレスからボクを「役立たず」と激しくののしり、こき使った。

 そういうのが嫌だったと聖女シズリィは告白してくれ、ボクたちは別行動で魔王城へ向かうことになった。

「あの人たちもビーノさんがいなかったら、どれだけ大変か知ればいいのよ」
「でもボク、本当に役立たずで──」

 ボクが眉尻を下げて言うと、シズリィは逆に眉を吊り上げて言った。

「そんなことないわ! 洗濯や食事の用意の苦労、水の確保、気配り、目配り、心配り。どれをとってもビーノさんは優秀よ? もっと自信を持ってよ!」
「で、でも……」

 ボクは自信なさげに声を漏らすと、シズリィは優しく微笑んだ。

「ま、そんな気付かないところもビーノさんのいいところだけどね」
「ん?」

「気付かなすぎるのも問題だけど……」

 シズリィは多少気になる言葉を漏らしたけど、ボクたちは森の中を進み続けた。モンスターが現れたけど、ボクでもなんとかなる程度のヤツだったし、シズリィの神の加護でモンスターは近付くこともかなり困難なのだ。難しい場合は二人して逃げた。

「こうして二人旅もいいわよね」
「そうかい? ボクはちょっと怖いなぁ」

 そう言うとシズリィは少し不機嫌そうな顔をした。どうして?

 その日も二人でキャンプの準備をした。雑用のボクにはそんなこと朝飯前だ。火おこし、テント作り、木の葉を撒いた警戒システムづくり。これの踏み音で敵が来たことがわかるというヤツだ。

 シズリィと二人で薪を確保していると、変な石を拾った。

「なんだこれ……」
「不自然な形の石ね」

 それは完全な球体だった。手のひら大の大きさで磨かれたように光沢もある。

「変なの」
「こことここは汚れてるわ」

「ホントだ。拭いてみよう」

 二人して石をもってあちこち拭いていると、玉の中から雷鳴のような音が響き、なにやら煙が辺りを覆った。

「はっはっはーー!!」

 突然の笑い声に、ボクたちは尻餅をついたが、ボクはすぐさまシズリィを守る形をとった。
 そして笑い声と煙の向こうを眺めると、そこには──。

「こんばんわ! ボク、ドライゴンです」

 と、青と白を基調とした、ずんぐりむっくりな丸い形の生物がいた。

「た、タヌキ?」
「む。失礼な。これでも人間より遥かに高位生命体なドラゴンだよ。肩に翼があるだろう?」

 見ると肩にはちょこんと翼がある。確かにドラゴンみたいではあるけど、なんか怪しいぞ? そんでなんで石から出てきたんだ?

「実はボクは魔王を倒す力のあるドラゴンなんだけど、それに恐れた魔王によって石にされちゃったんだ」
「魔王を? 倒すだって!?」

 突然の言葉にボクとシズリィは彼を指差して大笑いした。なにせ彼の風体はとても戦闘向きじゃない。
 愉快な冗談だと思ったのだが、ドライゴンはムッとした顔をした。

「なんだ君たちは。失礼な人たちだなァ」
「だってそんなんでドラゴンだなんておかしいや」

「ボクを恐れる魔王は、ボクにとんでもない呪いをかけたんだ。到底解除できないような呪いをさ」
「呪いだって?」

 驚いたボクはシズリィの後ろに隠れてしまったが、シズリィは呆れてボクをドライゴンの前に押し出した。

「その呪いとは、愛し合う勇者と聖女が互いに玉を磨くことさ。その二人が愛する心をもって、石を拾い磨くなんて天文学的な確率だろう? だけど君たちはそれをやってのけた!!」

 演説の最中だけど、ボクとシズリィは顔を赤くして互いに顔を見れない状況に陥った。
 た、た、た、互いに愛し合うだって? ボクと……シズリィが。
 いや、ボクはそういう思いでシズリィを見てたけどシズリィも僕のことを……。つまり二人は両片想いだったってこと?

 急激に恥ずかしくなったボクたちは互いに背中合わせになって真っ赤になってしまった。
 それを見ていたドライゴンは困ったような顔をしながら言った。

「あれ、まだ二人とも告白してなかったのー? ふーん。そりゃごめんね」

 そんなことより気を取り直さなくちゃいけない。つまりボクは本物の勇者で聖女シズリィと魔王を倒さなくちゃならない。そして聖女と、け、け、け、結婚? シズリィと?
 ボクたちはまた顔を見合わせて照れ合った。

「また照れてる。魔王を倒す前なのに困った人たちだな。キミらは」
「で、でもボクにはそんなに力もないよ? どうやって魔王を倒すのさ?」

「抜かりない。ちゃんと伝説の装備はボクが守ってる」

 そう言ってドライゴンは胸を叩いて威張った。

「伝説の装備だって?」
「きせかえブレス~!」

 その時。ドライゴンから輝く息がボクの身にかかったかと思うと、ボクは白銀の鎧に海色のマント。羽根飾りのついた兜に、紋章の装飾がされた揃いの剣と盾。まさに伝説の勇者の出で立ちだったのだ。

 ボクはマントを翻してシズリィにその姿を見せるとシズリィは手を叩いて喜んでくれた。

「すごい、すごい! ビーノさん」
「やった、やった! ボクが勇者だなんて!」

 手を取り合うボクたちの姿をドライゴンは微笑ましく見ていたが、大声で集合をかける。

「さあビーノくん。シズちゃん。ボクたちの力で魔王を倒しに行こう! 早くボクの背中に乗って!」

 そう言ってドライゴンは背中をボクたちに向ける。ボクたちはその背中に飛び乗ると、ドライゴンは掛け声と共に大空へと飛び立った。

「どこへでも飛ぶあーー!!」

 ドライゴンの体は気流に乗り、ぐんぐんと進んでいく。しっかりと背中にしがみついていないと振り落とされそうなくらいだ。

「大丈夫? シズちゃん」
「大丈夫よ。でも速いわね」

 ボクはしっかりとシズリィの肩を抱き締めて引き寄せる。そして気づいた。眼下の荒野を二人の戦士らしき姿のものが走っている。その後ろには巨大な爬虫類型の魔物だ。
 目を凝らしてみると、走っている戦士はスネイルとジャニアスだった。

「うへぇ! かあちゃーん!」
「ああああーー! マァマーー!!」

 ボクとシズリィは互いに顔を見合わせて頷いた。

「ドライゴン! あの二人を助けられないかな!?」
「お願い、ドラちゃん! 助けて上げて!」

 その言葉にドライゴンは笑って答える。

「お安いご用さ。グーフーフー」

 ドライゴンは急降下すると、巨大な魔物に接近してブレス攻撃を仕掛けた。

「スモールブレス~!」

 息を吹き掛けられた魔物は、小さなヤモリのようになって草っ原の中に消えた。
 脅威が去ったと、スネイルとジャニアスはその場にへたり込んだところにボクたちは着陸した。

「大丈夫かい? 二人とも!」
「「ビーノ!!」」

 そしてスネイルはボクの姿を見て訪ねる。

「そ、その格好は?」
「ああ、実はボクは勇者だったのさ! ここにいる魔王を倒す力をもつドライゴンに認められて、勇者の装備を貰ったんだ」

 するとスネイルは真っ赤になって激昂した。

「なにを! 勇者はボクだい! 生意気だぞ! ビーノのクセに!」

 と、指差して糾弾しようとしたが、ジャニアスはボクに抱きついてきた。

まことの友よ……。やい! スネイル! 俺様のまことの友が勇者だってことに文句があるのか!?」

 パワー自慢のジャニアスに言われたらたまらない。スネイルはたじろいだ後に泣き出し、謝ってきた。

「わーん! 分かったよ。ボクは勇者なんかじゃない! パパのコネで勇者の称号を得ただけなんだ! シズちゃんと結婚したかっただけなんだよー! スネキティ兄さんも魔物を恐れて馬車乗ってどっか行っちゃうし。ボク一人でここから帰れないよー」

 知っていた。スネイルが勇者をコネで得たことは。多分みんなそんな思いだったろうけど、長年遊んだ情がスネイルの肩を叩いた。

「大丈夫。正直に言ってくれてありがとう。共行こうよ。魔王の元に!」

 ボクたちの見つめる視線の先には、恐ろしい雰囲気を醸し出した魔王城が笑うように佇んでいた。

 ボクたちがドライゴンの背中に乗り込むと、ドライゴンはそこにへたり込んだ。

「どうしたの? ドライゴン」
「定員オーバーだよ。こんな人数じゃ力が出ない。なにかぶっ飛ぶようなパワーがでないと」

 ぶっ飛ぶようなパワー。しかし誰もそんなアイテムは持ち合わせていなかった。
 そこにスネイルが胸を叩く。

「ボクに任せて!」
「どうするの?」

 スネイルはドライゴンの耳元にささやいた。

「少し前に、都で豚の価格が高騰したことがあったんだ。なんと仔豚の価格が金貨百枚!」

 するとドライゴンは驚いてぶっ飛んだ!

「はいいいいーー!!? たけ仔豚こぶたァァァアアア!!!」

 ドライゴンのその身は、気流に乗り魔王の城へまっしぐらと飛んでいくのだった。







 魔王の城についた。ドライゴンは入り口などに行かず、その身で城の壁を粉砕して城中へと侵入。
 もう魔王の玉座はすぐらしい。

 しかし目の前には魔王の親衛隊がぞろぞろといてあっという間に囲まれてしまった。

「ビーノ! ここは俺たちに任せて早く玉座の間へ!」
「そうだよ、ぐずぐずするな本物の勇者!」

 ジャニアスとスネイルが叫んで親衛隊に切り込んだ。

「ありがとう! 二人とも!」

 ボクとシズリィ、ドライゴンは玉座の間へと走った。
 そこには魔王が不敵な笑みを浮かべて待っていた。

「まさかドライゴンの封印を解くとはな。見事である勇者ビーノよ!」
「お前が魔王か!」

「口の利き方がなってないなお主。罰として地獄へ送ってやる!」

 魔王は巨大な体を揺すって立ち上がる。あまりの異様さにボクとシズリィは後ずさってしまった。
 その前にドライゴンが前に出る。

「待て魔王! このボクが相手だ!」
「こしゃくな! こい!」

 ドライゴンは飛び上がった。体格差はドライゴンは魔王の十分の一だ。しかし彼は果敢に攻める。爪で、炎で。

 しかし──。

 ドライゴンは弾き飛ばされ、ボクらのほうに吹っ飛ばされて来た。床を滑って壁に激突。ドライゴンは痛いであろう身体を持ち上げ立ち上がろうとした。

「ど、ドライゴーーン!」
「ま、まだまだ……」

 ドライゴンは翼をはためかせて魔王へと飛びかかる。しかしまたもや魔王は笑ってドライゴンを弾き飛ばす。
 ボクはナニをやっているのだろう。勇者として戦わずにどうするって言うんだ。

「ビーノさん」
「シズちゃん。心配はいらないよ」

 ボクは剣を抜く。ドライゴンはまた倒れた。魔王は笑っている。

「ほほう。勇者よ。その剣で余をかすめられると思うてか! このたわけ!」
「シズちゃんや、ドライゴンや、仲間たちが安心して暮らしていける世の中にする!」

 ボクは駆け出した。戦闘訓練などなにもない。ただの自棄のやんぱち。無謀のがむしゃら。

 だけど──。

 黙っていられるか!


 剣が唸る。風を起こす。
 魔王は簡単にボクをあしらおうとする。
 何度も床に叩きつけられ、血を吐いた。

「ビーノ! 俺に任せろ!」

 ジャニアスとスネイルだ。敵を片付けて参戦してきたのだ。
 ジャニアスは大きい斧を、スネイルは長い槍を、ボクは聖なる剣で魔王を切りつける。
 その時、シズリィからの援護魔法。ボクたちの武器はパワーアップし、魔王を傷つけている。

 優勢か? 魔王は防戦一方。ずっとずっとボクたちのターン。ずっとずっとボクたちの!

「小賢しい蝿どもめ!」

 魔王は気合いを入れて踏ん張ると、大風が吹いてボクたちは吹っ飛んで四角よすみに飛んでしまった。
 仲間たちとバラバラになってしまったのだ。

 ボクはみんなの無事を確認する。スネイルは目を回している。シズリィは震えながら身を起こす。ジャニアスはこちらを向いて目配せをした。
 ジャニアスのほうにボクの聖剣が転がっていたのだ。

 その時、スネイルはパッと身を起こし立ち上がった。

「魔王さんこちら! 手のなるほうへ!」

 魔王はスネイルを見る。そしてスネイルを掴もうと腕を伸ばした。

 今だ!!

 ジャニアスはボクのほうへと聖剣を滑らした。ボクはそれを受けとる。

 そして、投げ槍のように聖剣を魔王に向かって投擲したのだ!

攻撃上昇ダイラルト!!」

 シズリィは剣に向かって攻撃力アップの魔法をかける。
 だが魔王はまだ笑っていた。

「こんな小剣が余の身を貫けると思うてか!」

 そう言って鋼のような手のひらを広げる。

 ここまでか……!?

「ビッグブレス~!!」
「な、なに!?」

 ドライゴンのブレスが聖剣へと伸びる。たちまちボクの聖剣は巨大化し、魔王の手のひらを貫いて魔王の胸を突いた。

「ば、バカな!!」

 魔王の最後の言葉はそれだった。魔王はそこに倒れ、目を開くことはなかったのだ。

「やった……」
「……やった」
「やったぞー!!」

 ボクたち、男三人は大声で叫び抱き合った。そんなボクたちを見てシズリィは泣きながら笑っていた。ドライゴンは離れた場所でそっと微笑んでいた。

 ボクたちは魔王に勝ったのだ。これで都に凱旋することができるのだ。





「えっ? 一緒に行かないのかい?」

 ボクたちはドライゴンへと訪ねる。彼は嬉しそうに答えた。

「うん。ここは元々ボクの故郷だからね。ここでのんびりと過ごすよ」

 ドライゴンの言葉にボクたちは顔を見合わせて頷いた。

「だったら、ボクたちもここにいさせてよ。せっかく友だちになれたキミと一緒に暮らしたいんだ!」

 その申し出にドライゴンは涙を流して喜んでくれた。



 こうしてボクたちは、ここに暮らすことになった。やがて自然と人が集まり、大きな国になった。
 ボクはその人たちに押されて国王とされるところだったけど、スネイルに任せてドライゴンと山に住むことにした。

 そんなボクの後ろにはシズリィ。彼女はボクと運命を共にすることを選んだ。つまり、ボクと彼女は結婚したのだ。
 ジャニアスもこっそりと近くに山小屋を建てて移り住んできた。頼もしい隣人だ。彼は平和になったので、バトルマスターから吟遊詩人へと転職したが歌はヘタクソだった。

「おい、ビーノ。また新しい歌を作ったんだ。今度まとめて聞かせてやるからシズちゃんとウチにこい」

 ボクは冷や汗をかいてその話を受け取る。

「ど、ど、ドライゴーン!」
「なんだい、ビーノくん。なに? なーんだ、そんなことか……」

 しかしドライゴンは不思議なブレスで何とかしてくれる。その日もジャニアスの熱唱が聞こえなくなるブレスを浴びせてくれたのだ。



 今日も世界は平和だ。この幸せは自分たちで掴んだのだ。どうか永遠にこの幸せが続きますように──。



【了】





◇ ◇ ◇


【後書き】
 や、やっぱりポケモンくさかったですかね?( >Д<;)
 青と白を基調としたドラゴンってディアルガだろー! とか、ドライゴンってフライゴンのパクり? とか言わないでね!
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