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サヨナラ ──朝が来たら
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もう少し。もう少しだけ。彼の胸の下。
友達の線を越えた、最初で最後の夜。
でも私たちにしたら遊びの延長。
ただの友人としての夜。
そう思っていて欲しい。
重い女と思われたくない。
明日、朝日が迎えに来たら、彼は新幹線に乗って都会に。
私はここに残って大学に通う。
別々の道に進む、友人としての最後の遊び。
ずっと好きだったなんて言いたくない。
そんな重い思いを背負って、次に会ったときに顔を伏せられたくない。
クールに「よっ。元気?」って言い合いたい。
だから言わない。
初撃の苦悶の表情を気付かれてしまっただろうか?
シーツについた赤い鮮血は、終わりかけの経血と誤魔化した。
遊び慣れてる振り。クールな悪女。
良い思い出なんかにさせない。
忘れて欲しい。今日の悪い遊びのこと。
でも私は最後に身体に刻みたかった。
あなたは都会で好きな人を見つけて、何度も出会いと別れを繰り返していつか誰か可愛い人と一緒になるんだ。
私じゃない人。
私はただのトモダチ。
今までの抱いた女のコレクションの一つでいい。
今まで嫌いだった夜。
朝は好き。あなたと会わせてくれる。
でも今は朝が来て欲しくないと願ってる。
朝があなたを連れて行ってしまう。
この夜が彼に何度も私を求めさせてくれる。
友達の私のことを、何度も。何度も。
夜はあなたを思う時間。
夜ごと募る思い。
そんな重い女だって、あなたは知ったら軽蔑するだろうか?
日に日にたくましくなる男の腕。
ずっと見て来たものが今、両脇にある。
でもそれも今日だけ。
ああ、あなたの匂い。
目の前の胸板。
激しい動きの中の切な気な表情。
さようなら。
朝が来たらサヨウナラ。
繰り返される行為の中の口づけ。
求めに応じて何度も交わす唇。
目を閉じないのかと問われる言葉。
でも全てを焼き付けておきたい。
まばたきさえも惜しい。
ただの数時間。
朝日が迎えにくるまで。
やがてその時が来て、唇からため息をこぼして彼は立ち上がる。
衣服と肌がこすれあう音が聞こえる。
でも知らない振りをしていた。
気のない振り。気にしない振り。
バイバイ
と彼は言うだろう。
それに バイバイ と返すだけ。
いつも学校帰りにしていた言葉。
簡単よ。こうして顔も向けずに背中で言うだけ。
泣いてたら格好悪い。
私はクールな悪女。
男を手玉にとる遊びの女。
そんな背中の横にあなたは座った。
「嫌われたくなくて言えなかった重い言葉があるんだ……」
何を言い出すの?
バカみたい。さっさと出てってよ。
「ずっと好きだったよ。落ち着いたら週末会いに来てもいいか?」
重い。重いよ。勝手な話よ。格好悪い。そんなの全然クールじゃない。
「ウン」なんて言えるわけが無い。
涙声なんてみっともない。
鼻をすする音はもっとみっともない。
出来ない約束なんてしないで欲しい。
ねぇ。私、可愛い女になんてなれないよ。
気付いたら、思い切り鼻をすすって涙声で、筋肉の厚いその背中に抱きついてた。
友達の線を越えた、最初で最後の夜。
でも私たちにしたら遊びの延長。
ただの友人としての夜。
そう思っていて欲しい。
重い女と思われたくない。
明日、朝日が迎えに来たら、彼は新幹線に乗って都会に。
私はここに残って大学に通う。
別々の道に進む、友人としての最後の遊び。
ずっと好きだったなんて言いたくない。
そんな重い思いを背負って、次に会ったときに顔を伏せられたくない。
クールに「よっ。元気?」って言い合いたい。
だから言わない。
初撃の苦悶の表情を気付かれてしまっただろうか?
シーツについた赤い鮮血は、終わりかけの経血と誤魔化した。
遊び慣れてる振り。クールな悪女。
良い思い出なんかにさせない。
忘れて欲しい。今日の悪い遊びのこと。
でも私は最後に身体に刻みたかった。
あなたは都会で好きな人を見つけて、何度も出会いと別れを繰り返していつか誰か可愛い人と一緒になるんだ。
私じゃない人。
私はただのトモダチ。
今までの抱いた女のコレクションの一つでいい。
今まで嫌いだった夜。
朝は好き。あなたと会わせてくれる。
でも今は朝が来て欲しくないと願ってる。
朝があなたを連れて行ってしまう。
この夜が彼に何度も私を求めさせてくれる。
友達の私のことを、何度も。何度も。
夜はあなたを思う時間。
夜ごと募る思い。
そんな重い女だって、あなたは知ったら軽蔑するだろうか?
日に日にたくましくなる男の腕。
ずっと見て来たものが今、両脇にある。
でもそれも今日だけ。
ああ、あなたの匂い。
目の前の胸板。
激しい動きの中の切な気な表情。
さようなら。
朝が来たらサヨウナラ。
繰り返される行為の中の口づけ。
求めに応じて何度も交わす唇。
目を閉じないのかと問われる言葉。
でも全てを焼き付けておきたい。
まばたきさえも惜しい。
ただの数時間。
朝日が迎えにくるまで。
やがてその時が来て、唇からため息をこぼして彼は立ち上がる。
衣服と肌がこすれあう音が聞こえる。
でも知らない振りをしていた。
気のない振り。気にしない振り。
バイバイ
と彼は言うだろう。
それに バイバイ と返すだけ。
いつも学校帰りにしていた言葉。
簡単よ。こうして顔も向けずに背中で言うだけ。
泣いてたら格好悪い。
私はクールな悪女。
男を手玉にとる遊びの女。
そんな背中の横にあなたは座った。
「嫌われたくなくて言えなかった重い言葉があるんだ……」
何を言い出すの?
バカみたい。さっさと出てってよ。
「ずっと好きだったよ。落ち着いたら週末会いに来てもいいか?」
重い。重いよ。勝手な話よ。格好悪い。そんなの全然クールじゃない。
「ウン」なんて言えるわけが無い。
涙声なんてみっともない。
鼻をすする音はもっとみっともない。
出来ない約束なんてしないで欲しい。
ねぇ。私、可愛い女になんてなれないよ。
気付いたら、思い切り鼻をすすって涙声で、筋肉の厚いその背中に抱きついてた。
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