21 / 76
辻斬り
しおりを挟む
森但馬守は規律に厳しい大名であった。その家臣である井村某が刀を買った。
無銘ではあるものの、凡刀には見えずかなりの業物。十両と言われたが、なんとか八両まで値を下げてもらった。
さて刀を買ったものの、平和の世である。これ程のものを使わないというのも宝の持ち腐れ。
井村は腰に下げるだけに飽き足らず、うずうずと刀を試したいという欲に囚われ始め、その気持ちが最頂点に達したある日、辻斬りを敢行しようと思い立った。
物陰に隠れ、裏通りを通る酔客に一撃を与えて切れ味を試す。
外してはならない。声でも上げられたらすぐに後ろに手が回り、主君に知れたら河原に首を晒されるであろう。
そう思っても井村は思い止まらず、柄に手を掛けて酔客を待った。
しばらくすると、しゃっくりをしながら提灯片手に男がやって来る。手拭いを頭に巻いた町人だ。
これはしめた! と思い、胸を高鳴らせて男を待つ。男はあっちにふらふら、こっちにふらふら。
早く来い、と願うものの今度は少し手前で大堀に小便である。
井村は呼吸を悟られまいと息を殺し、男の小便が切れるのを待った。
やがて男は体を震わし、提灯を持ち直して井村のほうに来る。
井村は、騒がれないように、男の首を切ろう、首を切ろうと心の中で復唱する。自身も大きな音を立ててはいけない。少しの間違いがあったら晒し首だ。
武者震いが寄り掛かる材木を揺らす。井村はそっと材木から離れて、辻に向かって居合の構えである。
ややもすると、男が体を揺すって井村の潜む道に差し掛かる。
「ーーーーーー!!!!」
井村は思い切って、男に切りかかり、その首を全力の力で振り抜いて落とした。
と思ったが、落ちていたのは井村の腕と刀である。続いて井村の首も──。
酔客は小太刀をしまって、倒れている井村の懐を物色する。
「なるほど、財布に刀の大小か。ほう、こりゃ業物だ。売れば十両にはなるな。これだから辻斬りは止められん」
そう言って森但馬守は荷物を持ち去ってしまった。
無銘ではあるものの、凡刀には見えずかなりの業物。十両と言われたが、なんとか八両まで値を下げてもらった。
さて刀を買ったものの、平和の世である。これ程のものを使わないというのも宝の持ち腐れ。
井村は腰に下げるだけに飽き足らず、うずうずと刀を試したいという欲に囚われ始め、その気持ちが最頂点に達したある日、辻斬りを敢行しようと思い立った。
物陰に隠れ、裏通りを通る酔客に一撃を与えて切れ味を試す。
外してはならない。声でも上げられたらすぐに後ろに手が回り、主君に知れたら河原に首を晒されるであろう。
そう思っても井村は思い止まらず、柄に手を掛けて酔客を待った。
しばらくすると、しゃっくりをしながら提灯片手に男がやって来る。手拭いを頭に巻いた町人だ。
これはしめた! と思い、胸を高鳴らせて男を待つ。男はあっちにふらふら、こっちにふらふら。
早く来い、と願うものの今度は少し手前で大堀に小便である。
井村は呼吸を悟られまいと息を殺し、男の小便が切れるのを待った。
やがて男は体を震わし、提灯を持ち直して井村のほうに来る。
井村は、騒がれないように、男の首を切ろう、首を切ろうと心の中で復唱する。自身も大きな音を立ててはいけない。少しの間違いがあったら晒し首だ。
武者震いが寄り掛かる材木を揺らす。井村はそっと材木から離れて、辻に向かって居合の構えである。
ややもすると、男が体を揺すって井村の潜む道に差し掛かる。
「ーーーーーー!!!!」
井村は思い切って、男に切りかかり、その首を全力の力で振り抜いて落とした。
と思ったが、落ちていたのは井村の腕と刀である。続いて井村の首も──。
酔客は小太刀をしまって、倒れている井村の懐を物色する。
「なるほど、財布に刀の大小か。ほう、こりゃ業物だ。売れば十両にはなるな。これだから辻斬りは止められん」
そう言って森但馬守は荷物を持ち去ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる