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『密室』 ──誰かそこにいるの?
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高校時代からの友人、彩子から電話が来た。彼氏が出来て同棲を始めたという。
私は引っ込み思案な友人の快挙におめでとうというと、電話の向こうから彼氏の声で『遊びに来て貰いなさい』との声。いやに電話に近い。グイグイくる系かよと苦笑しながらも、彩子の家で鍋パーティをする約束をした。
アパートに行くと、ドアを開けたのは彩子。私が微笑むと、彩子の口から『やあいらっしゃい』という男の声にゾッとした。
彩子はキッチンに向かって『ご友人が来たぞ』と言って向き直り本来の声で「上がって上がって」。
彩子は自分の中にもう一人作ってしまったのだ。だが伝えることなど出来ず、二人の彩子を相手しながら鍋パーティをした。
それ以降もどうしていいか分からず、頭を抱える毎日。彩子からはノロケのメッセージが届くので、それなりに返していたが、ある時からそれは一変した。
どうやら彼女は彼にDVを振るわれているらしい。
それは彼女の思い込みの自傷行為だ。
彼女は電話でもう別れたいといってきたが、そこにいる彼にバレて思いきり叩かれる音。私は電話の前で絶句した。
このままでは彼女は自分自身で廃人になってしまうと思い一計を案じた。
私は彼女に電話した。
「彩子。私、彼を呼び出して、もう彩子と別れて欲しいってお願いしたの」
すると彩子から驚き喜んだ声。
「彼分かってくれたわ。そのまま出て行くって」
「朋子、ありがとう──」
彩子からお礼の言葉。これで全てが終わった。
だが数日後。彩子からの電話。
「彼、反省したみたい。今から戻って来るんだって」
そんなバカな。彩子は自ら危険を招き入れるつもりなのだ。私は声を張り上げた。
「彼を部屋に入れてはダメ! 暴力を振るわれた日を忘れたの!? 今から私が行くから戸締まりをキチンとして!」
「え? う、うん」
彩子は走って、玄関の鍵を閉めに行ったようだった。
しかし──。
「リビングに彼がいる……」
「! 彩子! 逃げて!」
その時だった。激しく暴れる音が電話の向こうから。二人の彩子の叫ぶ声。それが断末魔に変わりそれっきり。
私は警察に通報した。
彩子は何度も刺されて死んでいたそうだ。凶器の刃物もそこに捨てられていた。
奇妙なことに、その刃物からは彩子とは別の指紋が検出され、彩子の爪の中から皮膚が採取された。
彩子の作りあげた人物が形となって彼女を殺したのだろうか?
私は締め切った自室の中で深くため息をつく。
その時、台所で物音が。
「誰かそこにいるの?」
私は引っ込み思案な友人の快挙におめでとうというと、電話の向こうから彼氏の声で『遊びに来て貰いなさい』との声。いやに電話に近い。グイグイくる系かよと苦笑しながらも、彩子の家で鍋パーティをする約束をした。
アパートに行くと、ドアを開けたのは彩子。私が微笑むと、彩子の口から『やあいらっしゃい』という男の声にゾッとした。
彩子はキッチンに向かって『ご友人が来たぞ』と言って向き直り本来の声で「上がって上がって」。
彩子は自分の中にもう一人作ってしまったのだ。だが伝えることなど出来ず、二人の彩子を相手しながら鍋パーティをした。
それ以降もどうしていいか分からず、頭を抱える毎日。彩子からはノロケのメッセージが届くので、それなりに返していたが、ある時からそれは一変した。
どうやら彼女は彼にDVを振るわれているらしい。
それは彼女の思い込みの自傷行為だ。
彼女は電話でもう別れたいといってきたが、そこにいる彼にバレて思いきり叩かれる音。私は電話の前で絶句した。
このままでは彼女は自分自身で廃人になってしまうと思い一計を案じた。
私は彼女に電話した。
「彩子。私、彼を呼び出して、もう彩子と別れて欲しいってお願いしたの」
すると彩子から驚き喜んだ声。
「彼分かってくれたわ。そのまま出て行くって」
「朋子、ありがとう──」
彩子からお礼の言葉。これで全てが終わった。
だが数日後。彩子からの電話。
「彼、反省したみたい。今から戻って来るんだって」
そんなバカな。彩子は自ら危険を招き入れるつもりなのだ。私は声を張り上げた。
「彼を部屋に入れてはダメ! 暴力を振るわれた日を忘れたの!? 今から私が行くから戸締まりをキチンとして!」
「え? う、うん」
彩子は走って、玄関の鍵を閉めに行ったようだった。
しかし──。
「リビングに彼がいる……」
「! 彩子! 逃げて!」
その時だった。激しく暴れる音が電話の向こうから。二人の彩子の叫ぶ声。それが断末魔に変わりそれっきり。
私は警察に通報した。
彩子は何度も刺されて死んでいたそうだ。凶器の刃物もそこに捨てられていた。
奇妙なことに、その刃物からは彩子とは別の指紋が検出され、彩子の爪の中から皮膚が採取された。
彩子の作りあげた人物が形となって彼女を殺したのだろうか?
私は締め切った自室の中で深くため息をつく。
その時、台所で物音が。
「誰かそこにいるの?」
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