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人魚姫は王子にゼスチャーで愛を伝える
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人魚姫マリーナは、嵐の夜に難破した船から王子を救出しました。
その時に二人は恋に堕ちたものの、種族が違います。
マリーナは苦しい思いを抱きながら海の魔女の元を尋ねました。
「なるほどねぇ、人魚の王女さま。それで人間の足が欲しいのかえ。ではその美しい声と引き換えだよ。イッヒッヒッヒ」
マリーナは海の魔女のクソババアさに腹もたちましたが背に腹はかえられません。自身の声と引き換えに人間足を貰ったのです。
「その王子さまの愛を得ればそのまま人間になれるよ。でもね、愛が得れないと海の泡になって消えてしまうからね。イッヒッヒッヒ」
なんという後付け設定。人魚姫は抗議しようと思いましたが、声が出ません。
人魚姫が出きるのは筆談と海手話くらいですが、魔女は意に介さず行ってしまいました。
腹もたちますが、それよりも王子です。人魚姫は王子さまに会いに行くと、王子さまは嵐の夜に会った人魚姫そっくりな彼女に驚きました。
「キミはなんて私の愛する人にそっくりなんだ……。でも声が不自由なんだね。よろしい。我が城へいらっしゃい。私の妹として過ごすといい」
なんということでしょう、王子さまが好きなのは人魚姫なのです。同一人物なのですが、話せないマリーナを人魚姫とは気付きません。
どうしたらいいのでしょう。
筆談は海語なので通じません。海手話も人間界の手話とは大きく違います。これではメッセージを伝えることが出来ないのです。
マリーナは浜辺に出て海を見つめながら泣いていると、沖のほうにマリーナの姉のアネエスが顔を出しました。
アネエスはマリーナに海手話で問いました。
『どうしたのマリーナ』
『お姉さま、王子に愛を伝えないと私は海の泡と消えてしまうの。筆談も手話も人間の世界とは違うので通じないわ』
『だったら簡単よ』
『どうするの?』
『ゼスチャーで相手に伝えればいいのよ』
『お姉さまグッドアイデア! その手があった!』
マリーナが王子の元に行くと、王子は執事のモンドと一緒でした。
マリーナは早速、王子の前で身振り手振りのゼスチャーを始めました。
「はっはっはっはー。面白いなキミは。それどういう意味なの?」
まったく通じませんでした。
王子は顔はハンサムでしたが、天は二物を与えず。頭は残念無念でした。
そこで執事のモンドが冷や汗をかきながら進言しました。
「殿下。義妹ぎみは何かお伝えしたいことがあるのでは?」
マリーナは執事のモンドを指差し、『そうです』という意味を伝えると、王子は満面の笑みでした。
「そっか。ゼスチャー! 私はゼスチャーゲームが得意なんだ。よおし。当てるぞ~」
不安しかありません。得意なんて、今まで接待しか受けてこなかったのに、それを真に受けているのでしょう。しかしやらなくてはなりません。
マリーナの伝えたいことはこうです。
『嵐の夜に難破した船から王子さまを救いだしたのは私です。愛しています』
と。
まずは波をイメージできるように、腕を水平にして波打たせました。
「蛇?」
マリーナはすかさず手をクロスさせて『違う』というゼスチャーをして続けます。
「ミミズ? 分かった! 『寝耳にミミズ』!」
全然違います。そんな言葉もない。マリーナは素早く手を二回クロスします。
「エックス、エックス?」
通じない。マリーナは深く溜め息をつきました。
「ん? 風? 大風?」
マリーナは急にシャキーンとなりました。溜め息を『風』と取るとは! しかしその流れを止めては行けません。
すかさず片手を波打たせ、もう片手で船をイメージさせ、波間に沈んでいくゼスチャーをしました。
王子は考え込みながらポツポツと呟きます。
「んー、大風……、波……、船……、沈没? いや難破?」
なんと先ほどから一変! 王子の独り言が的を射すぎています。これは確定三暗刻、自摸って四暗刻だと喜びました。
その時、王子は手を打って叫んだのです。
「分かったぞ! 『みんなで並んでレストランでお食事しよう』だ! これモンド。すぐさま外出の準備をせよ」
「はは。かしこまりました殿下」
全然分かってない。マリーナは額に手を当てて深く深く溜め息をつきました。
「大風?」
そこは合ってる。合ってるのに。
レストランの食事はとても美味しかった。
◇
また別の日。マリーナが浜辺に行くと、姉のアネエスが波間から顔を出します。二人はすぐに海手話で会話し出しました。
『お姉さま。全然通じませんでした』
『どうして? どうやったの?』
マリーナは一部始終を説明するとアネエスは笑って応えました。
『バカね。長すぎるのよ。自分の胸を指差し、その次に王子の胸を指差す。最後に自分の胸の前でハートを作りなさい。『私はあなたを愛してる』これでいいじゃない!』
『それよ! お姉さま最高!』
マリーナはお礼を手話すると、急いで城に帰りました。
王子の前に立ち、すぐさまゼスチャーを開始します。
まずは自分の胸を指差しました。
「君が?」
王子の答えにマリーナは笑顔で頷きます。すかさず王子を指差しました。
「私を?」
そしてマリーナは胸の前でハートマークを作ります。王子の顔はみるみる笑顔になって答えました。
「桃? 私も食べたいよ!」
全然違う。マリーナは額に手を当てて深く溜め息をつきます。
「大風?」
マリーナはムカついて、王子の座ってるソファーに走り、常備されているクッションで王子を何度も叩きました。
「えーとクッション? じゃないな、激しい嵐? 沈んでいく私?」
ソファーに沈んでいく王子は、それすらもゼスチャーゲームだと思って答えていましたが、まさにそれです。
マリーナはすぐさま王子を抱き抱えて起こしました。それはまさに王子を救助したときと同じ形だったのです。
「私を救う人魚姫?」
マリーナは涙を浮かべて大きく頷き、王子にキスをしました。王子もそれを受けると、マリーナへかけられた人間になる魔法が本物となり、マリーナは話せるようになったのです。
「あーあーあーあー」
久しぶりだったので、発声練習をすると元通りの美しい声です。
「やった! 声が戻った! 王子さま! 私はあのときの人魚姫。あなたに会いたくて人間になったの!」
「本当かい? オーマイガー。愛してるよ人魚姫」
こうしてマリーナは王子と本当の思いを伝えることが出来たのでした。当然二人は結婚したのです。
そしてたまにゼスチャーゲームをして遊んでいるようですよ。
「分かった! 『立ってるサル』」
「違う! これは『キスして欲しい』の合図!」
でもやっぱり王子は頭が少し残念なようですよ。
その時に二人は恋に堕ちたものの、種族が違います。
マリーナは苦しい思いを抱きながら海の魔女の元を尋ねました。
「なるほどねぇ、人魚の王女さま。それで人間の足が欲しいのかえ。ではその美しい声と引き換えだよ。イッヒッヒッヒ」
マリーナは海の魔女のクソババアさに腹もたちましたが背に腹はかえられません。自身の声と引き換えに人間足を貰ったのです。
「その王子さまの愛を得ればそのまま人間になれるよ。でもね、愛が得れないと海の泡になって消えてしまうからね。イッヒッヒッヒ」
なんという後付け設定。人魚姫は抗議しようと思いましたが、声が出ません。
人魚姫が出きるのは筆談と海手話くらいですが、魔女は意に介さず行ってしまいました。
腹もたちますが、それよりも王子です。人魚姫は王子さまに会いに行くと、王子さまは嵐の夜に会った人魚姫そっくりな彼女に驚きました。
「キミはなんて私の愛する人にそっくりなんだ……。でも声が不自由なんだね。よろしい。我が城へいらっしゃい。私の妹として過ごすといい」
なんということでしょう、王子さまが好きなのは人魚姫なのです。同一人物なのですが、話せないマリーナを人魚姫とは気付きません。
どうしたらいいのでしょう。
筆談は海語なので通じません。海手話も人間界の手話とは大きく違います。これではメッセージを伝えることが出来ないのです。
マリーナは浜辺に出て海を見つめながら泣いていると、沖のほうにマリーナの姉のアネエスが顔を出しました。
アネエスはマリーナに海手話で問いました。
『どうしたのマリーナ』
『お姉さま、王子に愛を伝えないと私は海の泡と消えてしまうの。筆談も手話も人間の世界とは違うので通じないわ』
『だったら簡単よ』
『どうするの?』
『ゼスチャーで相手に伝えればいいのよ』
『お姉さまグッドアイデア! その手があった!』
マリーナが王子の元に行くと、王子は執事のモンドと一緒でした。
マリーナは早速、王子の前で身振り手振りのゼスチャーを始めました。
「はっはっはっはー。面白いなキミは。それどういう意味なの?」
まったく通じませんでした。
王子は顔はハンサムでしたが、天は二物を与えず。頭は残念無念でした。
そこで執事のモンドが冷や汗をかきながら進言しました。
「殿下。義妹ぎみは何かお伝えしたいことがあるのでは?」
マリーナは執事のモンドを指差し、『そうです』という意味を伝えると、王子は満面の笑みでした。
「そっか。ゼスチャー! 私はゼスチャーゲームが得意なんだ。よおし。当てるぞ~」
不安しかありません。得意なんて、今まで接待しか受けてこなかったのに、それを真に受けているのでしょう。しかしやらなくてはなりません。
マリーナの伝えたいことはこうです。
『嵐の夜に難破した船から王子さまを救いだしたのは私です。愛しています』
と。
まずは波をイメージできるように、腕を水平にして波打たせました。
「蛇?」
マリーナはすかさず手をクロスさせて『違う』というゼスチャーをして続けます。
「ミミズ? 分かった! 『寝耳にミミズ』!」
全然違います。そんな言葉もない。マリーナは素早く手を二回クロスします。
「エックス、エックス?」
通じない。マリーナは深く溜め息をつきました。
「ん? 風? 大風?」
マリーナは急にシャキーンとなりました。溜め息を『風』と取るとは! しかしその流れを止めては行けません。
すかさず片手を波打たせ、もう片手で船をイメージさせ、波間に沈んでいくゼスチャーをしました。
王子は考え込みながらポツポツと呟きます。
「んー、大風……、波……、船……、沈没? いや難破?」
なんと先ほどから一変! 王子の独り言が的を射すぎています。これは確定三暗刻、自摸って四暗刻だと喜びました。
その時、王子は手を打って叫んだのです。
「分かったぞ! 『みんなで並んでレストランでお食事しよう』だ! これモンド。すぐさま外出の準備をせよ」
「はは。かしこまりました殿下」
全然分かってない。マリーナは額に手を当てて深く深く溜め息をつきました。
「大風?」
そこは合ってる。合ってるのに。
レストランの食事はとても美味しかった。
◇
また別の日。マリーナが浜辺に行くと、姉のアネエスが波間から顔を出します。二人はすぐに海手話で会話し出しました。
『お姉さま。全然通じませんでした』
『どうして? どうやったの?』
マリーナは一部始終を説明するとアネエスは笑って応えました。
『バカね。長すぎるのよ。自分の胸を指差し、その次に王子の胸を指差す。最後に自分の胸の前でハートを作りなさい。『私はあなたを愛してる』これでいいじゃない!』
『それよ! お姉さま最高!』
マリーナはお礼を手話すると、急いで城に帰りました。
王子の前に立ち、すぐさまゼスチャーを開始します。
まずは自分の胸を指差しました。
「君が?」
王子の答えにマリーナは笑顔で頷きます。すかさず王子を指差しました。
「私を?」
そしてマリーナは胸の前でハートマークを作ります。王子の顔はみるみる笑顔になって答えました。
「桃? 私も食べたいよ!」
全然違う。マリーナは額に手を当てて深く溜め息をつきます。
「大風?」
マリーナはムカついて、王子の座ってるソファーに走り、常備されているクッションで王子を何度も叩きました。
「えーとクッション? じゃないな、激しい嵐? 沈んでいく私?」
ソファーに沈んでいく王子は、それすらもゼスチャーゲームだと思って答えていましたが、まさにそれです。
マリーナはすぐさま王子を抱き抱えて起こしました。それはまさに王子を救助したときと同じ形だったのです。
「私を救う人魚姫?」
マリーナは涙を浮かべて大きく頷き、王子にキスをしました。王子もそれを受けると、マリーナへかけられた人間になる魔法が本物となり、マリーナは話せるようになったのです。
「あーあーあーあー」
久しぶりだったので、発声練習をすると元通りの美しい声です。
「やった! 声が戻った! 王子さま! 私はあのときの人魚姫。あなたに会いたくて人間になったの!」
「本当かい? オーマイガー。愛してるよ人魚姫」
こうしてマリーナは王子と本当の思いを伝えることが出来たのでした。当然二人は結婚したのです。
そしてたまにゼスチャーゲームをして遊んでいるようですよ。
「分かった! 『立ってるサル』」
「違う! これは『キスして欲しい』の合図!」
でもやっぱり王子は頭が少し残念なようですよ。
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