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第七章――「黄金海岸の砦、奪われるポルトガルの旗」
第7話(前編)――「砦を軽くする朝、帆を裂く砲声」
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――――――――――――――――――
登場人物
ディエゴ〈29〉(新大陸皇帝アルバロ・デ・モリーナ〈28〉の仮名)
ルイーザ・デ・カルヴァーリョ〈36〉
ディエゴの妻。ミナ砦の統治責任者。ポルトガル商船提督の元妻
エレナ・デ・ビラルバ〈32〉
ディエゴの妻。スペイン商船提督の元妻
――――――――――――――――――
(1522年10月下旬。ミナ砦)
夜明け前、ミナ砦の石壁はまだ冷たかった。海から上がる湿った風が、砦の角をなめるように入り込み、火の消えかけた松脂の匂いと混ざった。遠くの波は低くうなり、帆柱に残った縄が、時おり軋んだ音を立てた。
ディエゴは城壁の上に立ち、海の色が黒から藍へ変わっていくのを見ていた。水平線が白み、カモメの声が増えていく。砦の中は静かだが、静けさの底に人の気配が重なっている。寝所の隅で寝返りを打つ兵、倉庫の番の交代を待つ歩哨、そして囲いの中で身を寄せ合う者たち。人が増えれば増えるほど、水と食糧と病気が、ひとつの塊になって迫ってくる。ここに留め置けば、砦が膨れ、守りが削られる。それは戦いではなく、腐り方の問題だった。
ディエゴは胸の中で決めていた方針を、口に出して形にした。砦の修理と警備を回すだけの労働力を残す。それ以外は、少しずつサントドミンゴへ移す。焦って一度に片づけない。船は天候で遅れるし、港では役人の都合で止まることもある。止まった瞬間に、砦の中の秩序は簡単に崩れる。ならば、崩れない量で動かすしかない。
朝の点呼が終わるころ、日差しが石床を温め始めた。食堂では乾いたパンが割られ、塩気の強い干し魚が炭火であぶられていた。油が落ちて煙が上がり、魚の匂いが鼻に刺さる。大鍋では豆と香草を煮ていて、湯気の中に土っぽい匂いが混じった。兵たちは騒がず、順に器を受け取り、黙々と食べた。食事の音は、匙が木の椀を叩く軽い音と、喉を鳴らす音だけだ。よく眠り、よく食べる。これが続く限り、隊は折れない。失敗したことのない部隊の強さは、剣の切れ味より、こういう当たり前の積み重ねにあった。
朝の仕事は修理から始まった。石壁の継ぎ目に詰めた石灰が剥がれ、雨で削られた場所がある。木製の足場に上がれば、足裏に湿り気が残り、手のひらには粉がつく。鎚で釘を打つ音、鋸で板を引く音、樽を転がす音が、砦の中に規則正しく広がった。水汲みは回数と順番を決めた。井戸の周りに人が集まりすぎないようにし、争いが起きないようにする。そういう小さな管理が、砦の空気を軽くする。
昼前、ディエゴは倉庫の前にルイーザを呼んだ。倉の扉を開けると、樽の木の匂いと、乾いた布の匂いが流れ出た。塩、豆、小麦粉、酒、火薬、釘、油布。どれも欠ければ困るが、余りすぎても守りの邪魔になる。ディエゴは帳面を指で押さえ、顔を上げた。
ディエゴは言った。「残す人数を先に決める。壁と井戸と倉を守れるだけでいい。余った分は、順に船に乗せてサントドミンゴへ回す」
ルイーザは帳面をめくり、鉛筆の先で数を追った。彼女の指先は白い粉で少し荒れている。水仕事と帳簿仕事を同じ手でやっている証拠だった。
ルイーザは言った。「砦の仕事を回すなら、最低でもこれだけは必要です。石壁の補修、井戸の番、倉の見張り、炊事の手伝い。ここを削ると、すぐに揉めます。逆に、ここさえ守れば、囲いの人数が減るほど落ち着きます」
ディエゴは頷いた。口先の勢いではなく、現場の数字で決める。そう決めた瞬間から、砦は「抱えて耐える場所」ではなく、「動かして整える場所」になる。
午後、船の準備に入った。浜では小舟が波に上下し、濡れた板が日差しで少しずつ乾いていく。水樽を運ぶ男の肩には赤い筋がつき、汗が塩になって白く固まった。縄を引けば、麻の繊維がきしみ、手のひらにざらつきが残る。樽の胴に刻んだ印を確かめ、荷の順番を決める。先に水、次に食糧、最後に火薬と武具。万が一の火花で全てが終わることを、全員が知っているから、誰もふざけない。
囲いから出す者たちは、乱暴に引きずり出さなかった。ディエゴは「騒ぎを起こすな」というだけで済ませず、「水を飲ませてから」「歩けない者を無理に立たせるな」「子どもがいるなら離すな」と命じた。情けの話ではない。港までの移動で倒れれば、手が増え、混乱が増える。混乱は怪我と逃亡を呼ぶ。逃亡は銃と刃を呼ぶ。刃は恨みを残す。恨みは砦に戻ってくる。だから最初の一歩から、乱れないようにするしかない。
出航は翌朝にした。日が落ちる前に船に詰め込み、夜の闇で動かすのは危険だ。暗闇は見張りの目を鈍らせ、足元を奪い、余計な声を生む。ディエゴは「明るい時間に運び、明るい時間に確認する」と決めた。失敗したことのない部隊は、運に頼らず、見える範囲で勝つ。
夕方、仕事が終わると、砦の中に別の匂いが漂った。煮込みの香草、焼いた肉の脂、酒の甘い匂い。小さな広場に腰を下ろし、兵たちは骨を折って働いた日の疲れを、順に身体から抜いていった。誰かが小さな弦楽器を鳴らし、別の誰かが手拍子で拍を刻む。笑い声は大きくないが、乾いていない。食べて、飲んで、冗談を言って、眠りにつく。それが続く限り、隊は明るい。明るさは油断ではなく、余裕だ。
夜、ディエゴは寝所に戻った。灯りは小さく、油皿の火が揺れた。外では潮風が壁を叩き、遠くの波が低い音を続けている。彼は服の砂を落とし、肩の凝りをゆっくりほどいた。誰かが寄り添い、疲れた身体を確かめるように手を置いた。言葉は多くなくても、ここには確かな温度があった。
翌朝、浜は眩しかった。太陽が水面を砕き、白い光が目の奥に刺さる。船は樽の重みで少し沈み、板のきしみ方が変わっていた。見張りが合図を交わし、縄が解かれ、小舟が押し出される。波の冷たさが足首を濡らし、塩が肌に残る。ディエゴは最後に倉の鍵を確かめ、石壁を振り返った。残した労働力が修理と警備を回す。砦は痩せ、守りやすくなる。そこから毎回、少しずつ出す。サントドミンゴへ。確実に。砦の中に「余計な重さ」を溜めないために。
船が沖へ出ると、砦の音が少し静かになった。囲いの中のざわめきも、昨日より薄い。水汲みの列は短くなり、井戸の周りの苛立ちも減る。ディエゴはその変化を、勝利のように受け取らなかった。ただ、正しく呼吸できるようになっただけだと思った。砦が息をする。兵が息をする。次の便を出すための、当たり前の空気が戻ってくる。
ディエゴは次の手を急がない。余裕がもう少し積み上がったら、ハバナへも回す。サントドミンゴだけに頼らず、港を分ける。港が分かれれば、止まった時の痛みが減る。痛みが減れば、砦は乱れない。乱れなければ、今日の労働と食事と娯楽と睡眠が守られる。その循環を守ることが、結局は彼の部隊を無敗のまま歩かせる。
昼の鐘が鳴り、砦の中にまた鍋の匂いが立った。ディエゴは顔を上げ、石壁の白い反射に目を細めた。海は青く、風は熱を運び、遠い水平線の上に、次の船影があるかもしれない。彼はその可能性を、焦りではなく、手応えとして受け止めていた。
◇ ◇ ◇
翌日の昼過ぎ、見張り台の兵が声を張った。「帆だ。西から来る。2枚だ」
黄金海岸の空は高く、陽は白く照りつけていた。潮風は熱を含み、砦の石壁の隙間に入り込み、湿った塩の匂いを残していく。海のかなたに帆影が出た。白い帆が2枚、風を受けてゆっくり近づいてくる。砦の上から見ると波の上を滑るように見えるが、距離が詰まるにつれて船腹の黒い帯がはっきりした。船腹に残る藻の色、帆布のくたびれ方、甲板の人影の慌ただしさまで目に入った。ポルトガルの船だと、誰の目にも分かった。
ディエゴは中庭に立ち、目を細めて海を見た。慌てる理由がないのではない。慌てれば、相手に狙いが割れるからだ。敵がミナ砦を奪われたと知っているなら、わざわざ近づいて取引などしない。迂回するのが当然だ。つまり、いま見えている帆影は、迂回しそこねたか、事情があって岸に寄らざるを得ないか、そのどちらかだ。
兵たちの顔は曇っていない。昨日までの過密が少し解け、井戸の列が短くなり、倉庫の番も落ち着いた。腹が満ちていて、眠れていて、今日の仕事の段取りが頭に入っている兵は、無駄な声を上げない。落ち着きは剣より役に立つ時がある。いまがその時だった。
ディエゴは言った。「門は閉める。砲は見せるな。見せたら逃げる。あれは迂回して通り過ぎるつもりだ。通り過ぎるなら、通り過ぎる途中で止める」
大砲は城壁の陰に伏せたまま、火縄銃の持ち場だけを静かに決め直した。矢倉の上の見張りは交代を止めず、いつもの手順で動いた。砦が騒ぐと、海の上の相手が身構える。ディエゴの部隊は、その当たり前を裏切らなかった。
ルイーザは城壁の陰で帳面を抱え、井戸番と倉番に目を配った。紙の線は細いが、あれで砦の胃袋が決まる。水が何樽、干し魚が何束、豆が何袋。今日の戦いで何人が傷つくか、どれだけ手当てが要るか。彼女は先にそこへ目を向けている。手が速いだけではない。恐れ方が現実的だった。
エレナは浜へ走った。通訳役の男を呼び寄せ、浜の小舟を確認し、櫂の滑りと縄の状態まで目で追った。浜の砂は熱を持ち、踏むたびに靴底に細かい粒がまとわりつく。海は明るいが、明るい時ほど血が目立つ。彼女の頬は少し強ばっていたが、声はぶれなかった。
船は砦へ寄って来るのではなく、砦の沖を、岸に沿って横切る形で進んだ。つまり迂回だ。だが、船の動きに焦りがあった。帆が風を受けきれていない。舵が定まらず、船首がふらつく。甲板の上で水桶が慌ただしく運ばれているのが見えた。水が足りない。病人がいる。どちらでもいい。弱っているなら、止めれば取れる。
ディエゴは城壁の陰に伏せていた大砲の担当に合図した。火縄が短く切り揃えられ、火薬の匂いが薄く漂う。砲身は陽を吸って熱い。手袋越しでもじりじりする。砦の中は静かだが、静けさの中で、金属と火薬の準備音だけが増えた。
ディエゴは言った。「帆を切る。船体は沈めるな。止まればいい。止まったら浜の小舟で囲む」
砦の砲は正面から船を壊すためではなく、逃げ足を奪うために使う。そう決めると、兵の動きがさらに揃った。小舟は2隻、浜の陰に回した。櫂の木に油を薄く塗り、きしみを減らす。縄は手に食い込むほど締め直す。鉤縄は、鉄の匂いが濃い。日差しで温まった鉄が、手のひらの汗を吸い、ぬるりとした感触を残す。
船が砦の射界に入った瞬間、合図の旗は上がらなかった。合図はディエゴの手の動きだけだった。砲手がうなずき、火縄が動く。
轟音が砦の石壁に跳ね返った。耳の奥が一瞬詰まり、続いて腹の底が揺れた。白い煙が広がり、硫黄と焦げた木の匂いが鼻を刺す。砲弾は水面を跳ね、狙いどおり帆綱の辺りを裂いた。帆布が裂け、白い布が一気にしぼむ。風を失った船は、速度を落とし、波に押されて横揺れした。
甲板の上で叫び声が上がった。ポルトガル語の罵声が風に混じる。次の砲撃は船体ではなく帆柱の根本を狙った。木が割れ、乾いた破裂音がした。木屑が飛び、甲板の上に雨のように落ちた。悲鳴が増えた。
ディエゴは浜へ目を向けた。エレナが小舟の縄を解いている。兵が櫂を入れ、船が砂を離れた。水の冷たさが足首を濡らし、塩が皮膚に残る。小舟が波を越えるたび、櫂が水を切る音が乾いて響いた。2隻が左右に分かれ、止まった船へ一気に詰める。
相手も黙ってはいない。甲板から火縄銃の火花が散り、乾いた銃声が2発、3発と続いた。鉛弾が海面を叩き、水柱が小さく上がる。小舟のへりをかすめ、木片が飛んだ。血の匂いが、すぐに風に乗る。だが、小舟の兵は顔を上げなかった。櫂を止めない。止めたら撃たれる。進めば、相手の銃は撃ちにくくなる。
ディエゴは城壁の上から声を張った。「近づいたら、頭を下げろ。鉤縄を投げろ。乗り移ったら、舵を押さえろ。荷室へ走るな。まず船を殺せ」
小舟が船腹に並ぶ。鉤縄が投げられ、鉄の鉤が船縁に噛んだ。縄が張り、腕の筋が浮く。兵が一斉に引き、体を寄せ、木を軋ませながら登る。甲板の上は、汗と海水と焦げの匂いが混じり、息が熱い。足元は滑り、血が混ざればさらに滑る。誰も転ばないように、膝を落として動く。
最初の刃がぶつかった。剣と剣が鳴る音は硬い。骨に響く。叫び声が近い。目の前の相手は恐怖で目が見開かれ、唇が震えている。ディエゴの兵は怒りではなく作業の顔で進んだ。勝つ形にしてから勝つ。その手順を崩さないから無敗だ。
ディエゴ自身も甲板へ移った。踏み込むと板が軋み、足裏に振動が伝わる。潮風が汗を冷やし、火薬の煙が喉に貼りつく。彼は舵の方へ回り、舵輪の周りを押さえた。相手が舵を取り返そうとすれば、船は動き出し、追いかける手間が増える。だから、まず舵だ。
短い押し合いの末、相手の指が舵輪から離れた。誰かが膝を折り、誰かが甲板に伏した。血が板の溝に吸い込まれ、赤が黒く変わっていく。海鳥の声が遠くで響く。風は変わらない。だが、船の上の空気だけが一気に重くなった。
ディエゴは言った。「武器を捨てろ。生きたいなら、いま捨てろ」
通訳が怒鳴り、相手の顔が揺れた。抵抗すれば死ぬ。抵抗をやめれば生き残る。その判断が、数息の間に終わった。火縄銃が甲板に落ち、刃物が手から離れた。金属が板に当たる音が、妙に大きく聞こえた。
―――――――――――――――――
挿絵は、『ヨーロッパ要部』です。
出典は、『帝国書院編集部編「地歴高等地図」P43。』です。
挿絵は、『世界の主な海流』です。
挿絵は、『世界の主な海流出典』です。
挿絵は、『ポルトガル人によるアフリカ沿岸周航』です。
出典は、『講談社現代新書「新書アフリカ史」P253』です。
挿絵は、『アフリカ地図』です。
出典は、『帝国書院編集部編「地歴高等地図」P35』です。
挿絵は、『アフリカ』です。
出典は、『筑摩書房「大航海時代」ボイス・ペンローズ著。荒尾克己訳。巻末地図。』です。
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登場人物
ディエゴ〈29〉(新大陸皇帝アルバロ・デ・モリーナ〈28〉の仮名)
ルイーザ・デ・カルヴァーリョ〈36〉
ディエゴの妻。ミナ砦の統治責任者。ポルトガル商船提督の元妻
エレナ・デ・ビラルバ〈32〉
ディエゴの妻。スペイン商船提督の元妻
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(1522年10月下旬。ミナ砦)
夜明け前、ミナ砦の石壁はまだ冷たかった。海から上がる湿った風が、砦の角をなめるように入り込み、火の消えかけた松脂の匂いと混ざった。遠くの波は低くうなり、帆柱に残った縄が、時おり軋んだ音を立てた。
ディエゴは城壁の上に立ち、海の色が黒から藍へ変わっていくのを見ていた。水平線が白み、カモメの声が増えていく。砦の中は静かだが、静けさの底に人の気配が重なっている。寝所の隅で寝返りを打つ兵、倉庫の番の交代を待つ歩哨、そして囲いの中で身を寄せ合う者たち。人が増えれば増えるほど、水と食糧と病気が、ひとつの塊になって迫ってくる。ここに留め置けば、砦が膨れ、守りが削られる。それは戦いではなく、腐り方の問題だった。
ディエゴは胸の中で決めていた方針を、口に出して形にした。砦の修理と警備を回すだけの労働力を残す。それ以外は、少しずつサントドミンゴへ移す。焦って一度に片づけない。船は天候で遅れるし、港では役人の都合で止まることもある。止まった瞬間に、砦の中の秩序は簡単に崩れる。ならば、崩れない量で動かすしかない。
朝の点呼が終わるころ、日差しが石床を温め始めた。食堂では乾いたパンが割られ、塩気の強い干し魚が炭火であぶられていた。油が落ちて煙が上がり、魚の匂いが鼻に刺さる。大鍋では豆と香草を煮ていて、湯気の中に土っぽい匂いが混じった。兵たちは騒がず、順に器を受け取り、黙々と食べた。食事の音は、匙が木の椀を叩く軽い音と、喉を鳴らす音だけだ。よく眠り、よく食べる。これが続く限り、隊は折れない。失敗したことのない部隊の強さは、剣の切れ味より、こういう当たり前の積み重ねにあった。
朝の仕事は修理から始まった。石壁の継ぎ目に詰めた石灰が剥がれ、雨で削られた場所がある。木製の足場に上がれば、足裏に湿り気が残り、手のひらには粉がつく。鎚で釘を打つ音、鋸で板を引く音、樽を転がす音が、砦の中に規則正しく広がった。水汲みは回数と順番を決めた。井戸の周りに人が集まりすぎないようにし、争いが起きないようにする。そういう小さな管理が、砦の空気を軽くする。
昼前、ディエゴは倉庫の前にルイーザを呼んだ。倉の扉を開けると、樽の木の匂いと、乾いた布の匂いが流れ出た。塩、豆、小麦粉、酒、火薬、釘、油布。どれも欠ければ困るが、余りすぎても守りの邪魔になる。ディエゴは帳面を指で押さえ、顔を上げた。
ディエゴは言った。「残す人数を先に決める。壁と井戸と倉を守れるだけでいい。余った分は、順に船に乗せてサントドミンゴへ回す」
ルイーザは帳面をめくり、鉛筆の先で数を追った。彼女の指先は白い粉で少し荒れている。水仕事と帳簿仕事を同じ手でやっている証拠だった。
ルイーザは言った。「砦の仕事を回すなら、最低でもこれだけは必要です。石壁の補修、井戸の番、倉の見張り、炊事の手伝い。ここを削ると、すぐに揉めます。逆に、ここさえ守れば、囲いの人数が減るほど落ち着きます」
ディエゴは頷いた。口先の勢いではなく、現場の数字で決める。そう決めた瞬間から、砦は「抱えて耐える場所」ではなく、「動かして整える場所」になる。
午後、船の準備に入った。浜では小舟が波に上下し、濡れた板が日差しで少しずつ乾いていく。水樽を運ぶ男の肩には赤い筋がつき、汗が塩になって白く固まった。縄を引けば、麻の繊維がきしみ、手のひらにざらつきが残る。樽の胴に刻んだ印を確かめ、荷の順番を決める。先に水、次に食糧、最後に火薬と武具。万が一の火花で全てが終わることを、全員が知っているから、誰もふざけない。
囲いから出す者たちは、乱暴に引きずり出さなかった。ディエゴは「騒ぎを起こすな」というだけで済ませず、「水を飲ませてから」「歩けない者を無理に立たせるな」「子どもがいるなら離すな」と命じた。情けの話ではない。港までの移動で倒れれば、手が増え、混乱が増える。混乱は怪我と逃亡を呼ぶ。逃亡は銃と刃を呼ぶ。刃は恨みを残す。恨みは砦に戻ってくる。だから最初の一歩から、乱れないようにするしかない。
出航は翌朝にした。日が落ちる前に船に詰め込み、夜の闇で動かすのは危険だ。暗闇は見張りの目を鈍らせ、足元を奪い、余計な声を生む。ディエゴは「明るい時間に運び、明るい時間に確認する」と決めた。失敗したことのない部隊は、運に頼らず、見える範囲で勝つ。
夕方、仕事が終わると、砦の中に別の匂いが漂った。煮込みの香草、焼いた肉の脂、酒の甘い匂い。小さな広場に腰を下ろし、兵たちは骨を折って働いた日の疲れを、順に身体から抜いていった。誰かが小さな弦楽器を鳴らし、別の誰かが手拍子で拍を刻む。笑い声は大きくないが、乾いていない。食べて、飲んで、冗談を言って、眠りにつく。それが続く限り、隊は明るい。明るさは油断ではなく、余裕だ。
夜、ディエゴは寝所に戻った。灯りは小さく、油皿の火が揺れた。外では潮風が壁を叩き、遠くの波が低い音を続けている。彼は服の砂を落とし、肩の凝りをゆっくりほどいた。誰かが寄り添い、疲れた身体を確かめるように手を置いた。言葉は多くなくても、ここには確かな温度があった。
翌朝、浜は眩しかった。太陽が水面を砕き、白い光が目の奥に刺さる。船は樽の重みで少し沈み、板のきしみ方が変わっていた。見張りが合図を交わし、縄が解かれ、小舟が押し出される。波の冷たさが足首を濡らし、塩が肌に残る。ディエゴは最後に倉の鍵を確かめ、石壁を振り返った。残した労働力が修理と警備を回す。砦は痩せ、守りやすくなる。そこから毎回、少しずつ出す。サントドミンゴへ。確実に。砦の中に「余計な重さ」を溜めないために。
船が沖へ出ると、砦の音が少し静かになった。囲いの中のざわめきも、昨日より薄い。水汲みの列は短くなり、井戸の周りの苛立ちも減る。ディエゴはその変化を、勝利のように受け取らなかった。ただ、正しく呼吸できるようになっただけだと思った。砦が息をする。兵が息をする。次の便を出すための、当たり前の空気が戻ってくる。
ディエゴは次の手を急がない。余裕がもう少し積み上がったら、ハバナへも回す。サントドミンゴだけに頼らず、港を分ける。港が分かれれば、止まった時の痛みが減る。痛みが減れば、砦は乱れない。乱れなければ、今日の労働と食事と娯楽と睡眠が守られる。その循環を守ることが、結局は彼の部隊を無敗のまま歩かせる。
昼の鐘が鳴り、砦の中にまた鍋の匂いが立った。ディエゴは顔を上げ、石壁の白い反射に目を細めた。海は青く、風は熱を運び、遠い水平線の上に、次の船影があるかもしれない。彼はその可能性を、焦りではなく、手応えとして受け止めていた。
◇ ◇ ◇
翌日の昼過ぎ、見張り台の兵が声を張った。「帆だ。西から来る。2枚だ」
黄金海岸の空は高く、陽は白く照りつけていた。潮風は熱を含み、砦の石壁の隙間に入り込み、湿った塩の匂いを残していく。海のかなたに帆影が出た。白い帆が2枚、風を受けてゆっくり近づいてくる。砦の上から見ると波の上を滑るように見えるが、距離が詰まるにつれて船腹の黒い帯がはっきりした。船腹に残る藻の色、帆布のくたびれ方、甲板の人影の慌ただしさまで目に入った。ポルトガルの船だと、誰の目にも分かった。
ディエゴは中庭に立ち、目を細めて海を見た。慌てる理由がないのではない。慌てれば、相手に狙いが割れるからだ。敵がミナ砦を奪われたと知っているなら、わざわざ近づいて取引などしない。迂回するのが当然だ。つまり、いま見えている帆影は、迂回しそこねたか、事情があって岸に寄らざるを得ないか、そのどちらかだ。
兵たちの顔は曇っていない。昨日までの過密が少し解け、井戸の列が短くなり、倉庫の番も落ち着いた。腹が満ちていて、眠れていて、今日の仕事の段取りが頭に入っている兵は、無駄な声を上げない。落ち着きは剣より役に立つ時がある。いまがその時だった。
ディエゴは言った。「門は閉める。砲は見せるな。見せたら逃げる。あれは迂回して通り過ぎるつもりだ。通り過ぎるなら、通り過ぎる途中で止める」
大砲は城壁の陰に伏せたまま、火縄銃の持ち場だけを静かに決め直した。矢倉の上の見張りは交代を止めず、いつもの手順で動いた。砦が騒ぐと、海の上の相手が身構える。ディエゴの部隊は、その当たり前を裏切らなかった。
ルイーザは城壁の陰で帳面を抱え、井戸番と倉番に目を配った。紙の線は細いが、あれで砦の胃袋が決まる。水が何樽、干し魚が何束、豆が何袋。今日の戦いで何人が傷つくか、どれだけ手当てが要るか。彼女は先にそこへ目を向けている。手が速いだけではない。恐れ方が現実的だった。
エレナは浜へ走った。通訳役の男を呼び寄せ、浜の小舟を確認し、櫂の滑りと縄の状態まで目で追った。浜の砂は熱を持ち、踏むたびに靴底に細かい粒がまとわりつく。海は明るいが、明るい時ほど血が目立つ。彼女の頬は少し強ばっていたが、声はぶれなかった。
船は砦へ寄って来るのではなく、砦の沖を、岸に沿って横切る形で進んだ。つまり迂回だ。だが、船の動きに焦りがあった。帆が風を受けきれていない。舵が定まらず、船首がふらつく。甲板の上で水桶が慌ただしく運ばれているのが見えた。水が足りない。病人がいる。どちらでもいい。弱っているなら、止めれば取れる。
ディエゴは城壁の陰に伏せていた大砲の担当に合図した。火縄が短く切り揃えられ、火薬の匂いが薄く漂う。砲身は陽を吸って熱い。手袋越しでもじりじりする。砦の中は静かだが、静けさの中で、金属と火薬の準備音だけが増えた。
ディエゴは言った。「帆を切る。船体は沈めるな。止まればいい。止まったら浜の小舟で囲む」
砦の砲は正面から船を壊すためではなく、逃げ足を奪うために使う。そう決めると、兵の動きがさらに揃った。小舟は2隻、浜の陰に回した。櫂の木に油を薄く塗り、きしみを減らす。縄は手に食い込むほど締め直す。鉤縄は、鉄の匂いが濃い。日差しで温まった鉄が、手のひらの汗を吸い、ぬるりとした感触を残す。
船が砦の射界に入った瞬間、合図の旗は上がらなかった。合図はディエゴの手の動きだけだった。砲手がうなずき、火縄が動く。
轟音が砦の石壁に跳ね返った。耳の奥が一瞬詰まり、続いて腹の底が揺れた。白い煙が広がり、硫黄と焦げた木の匂いが鼻を刺す。砲弾は水面を跳ね、狙いどおり帆綱の辺りを裂いた。帆布が裂け、白い布が一気にしぼむ。風を失った船は、速度を落とし、波に押されて横揺れした。
甲板の上で叫び声が上がった。ポルトガル語の罵声が風に混じる。次の砲撃は船体ではなく帆柱の根本を狙った。木が割れ、乾いた破裂音がした。木屑が飛び、甲板の上に雨のように落ちた。悲鳴が増えた。
ディエゴは浜へ目を向けた。エレナが小舟の縄を解いている。兵が櫂を入れ、船が砂を離れた。水の冷たさが足首を濡らし、塩が皮膚に残る。小舟が波を越えるたび、櫂が水を切る音が乾いて響いた。2隻が左右に分かれ、止まった船へ一気に詰める。
相手も黙ってはいない。甲板から火縄銃の火花が散り、乾いた銃声が2発、3発と続いた。鉛弾が海面を叩き、水柱が小さく上がる。小舟のへりをかすめ、木片が飛んだ。血の匂いが、すぐに風に乗る。だが、小舟の兵は顔を上げなかった。櫂を止めない。止めたら撃たれる。進めば、相手の銃は撃ちにくくなる。
ディエゴは城壁の上から声を張った。「近づいたら、頭を下げろ。鉤縄を投げろ。乗り移ったら、舵を押さえろ。荷室へ走るな。まず船を殺せ」
小舟が船腹に並ぶ。鉤縄が投げられ、鉄の鉤が船縁に噛んだ。縄が張り、腕の筋が浮く。兵が一斉に引き、体を寄せ、木を軋ませながら登る。甲板の上は、汗と海水と焦げの匂いが混じり、息が熱い。足元は滑り、血が混ざればさらに滑る。誰も転ばないように、膝を落として動く。
最初の刃がぶつかった。剣と剣が鳴る音は硬い。骨に響く。叫び声が近い。目の前の相手は恐怖で目が見開かれ、唇が震えている。ディエゴの兵は怒りではなく作業の顔で進んだ。勝つ形にしてから勝つ。その手順を崩さないから無敗だ。
ディエゴ自身も甲板へ移った。踏み込むと板が軋み、足裏に振動が伝わる。潮風が汗を冷やし、火薬の煙が喉に貼りつく。彼は舵の方へ回り、舵輪の周りを押さえた。相手が舵を取り返そうとすれば、船は動き出し、追いかける手間が増える。だから、まず舵だ。
短い押し合いの末、相手の指が舵輪から離れた。誰かが膝を折り、誰かが甲板に伏した。血が板の溝に吸い込まれ、赤が黒く変わっていく。海鳥の声が遠くで響く。風は変わらない。だが、船の上の空気だけが一気に重くなった。
ディエゴは言った。「武器を捨てろ。生きたいなら、いま捨てろ」
通訳が怒鳴り、相手の顔が揺れた。抵抗すれば死ぬ。抵抗をやめれば生き残る。その判断が、数息の間に終わった。火縄銃が甲板に落ち、刃物が手から離れた。金属が板に当たる音が、妙に大きく聞こえた。
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挿絵は、『ヨーロッパ要部』です。
出典は、『帝国書院編集部編「地歴高等地図」P43。』です。
挿絵は、『世界の主な海流』です。
挿絵は、『世界の主な海流出典』です。
挿絵は、『ポルトガル人によるアフリカ沿岸周航』です。
出典は、『講談社現代新書「新書アフリカ史」P253』です。
挿絵は、『アフリカ地図』です。
出典は、『帝国書院編集部編「地歴高等地図」P35』です。
挿絵は、『アフリカ』です。
出典は、『筑摩書房「大航海時代」ボイス・ペンローズ著。荒尾克己訳。巻末地図。』です。
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・ニドス家の兄妹の「行く末」
・イネスとバルディビアとの「出逢い」と「結末」
大きく分けてこの様な展開になってます。
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1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
江戸の夕映え
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「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三)
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対米戦、準備せよ!
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織田信長:尾張の戦国大名。父・信秀の跡を継いで、尾張を制した。通称、三郎(さぶろう)。
斎藤道三:下剋上(げこくじょう)により美濃の国主にのし上がった男。俗名、利政。
一色義龍:道三の息子。帰蝶の兄。道三を倒して、美濃の国主になる。幕府から、名門「一色家」を名乗る許しを得る。
今川義元:駿河の戦国大名。名門「今川家」の当主であるが、国盗りによって駿河の国主となり、「海道一の弓取り」の異名を持つ。
斯波義銀(しばよしかね):尾張の国主の家系、名門「斯波家」の当主。ただし、実力はなく、形だけの国主として、信長が「臣従」している。
【参考資料】
「国盗り物語」 司馬遼太郎 新潮社
「地図と読む 現代語訳 信長公記」 太田 牛一 (著) 中川太古 (翻訳) KADOKAWA
東浦町観光協会ホームページ
Wikipedia
【表紙画像】
歌川豊宣, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
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