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第八章 皇帝親征
13 私の作った素体と違う気がするよ
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(しかし……、優里菜と同様に、悠太も精霊には好意的だな。惚れこんでいると言ってもよいほどだ)
世界最強の精霊使いとも呼ばれていた悠太のキャラクター、カレル・プリンツ。使い魔にしている四匹の動物の懐き具合も大したものだ。強固な信頼関係が築かれている様子が、ラディムにもわかる。
(確かに記憶の部分だけで見ると、精霊は邪悪ではないと思う。この世界の管理者だというヴァーツラフも、精霊の力が無いと、この世界が崩壊すると言っている。私がザハリアーシュたちから習った内容とは真逆だ)
ヴァーツラフの言葉を借りれば、世界は今、有り余った地核エネルギーが暴走寸前の状態だ。このまま放置すると、天変地異で世界が滅びる。精霊術で地核エネルギーを消費しなければ、この運命は変えられない。
だが、ザハリアーシュから習った世界再生教の教えでは、精霊術は大地の生命エネルギーを無理やり吸収し、枯らしてしまうと伝えている。農業もできない不毛な大地に変えてしまうと。
(いったい、どちらが正しいのか。ザハリアーシュがわざと嘘を教えているとも思えない。世界再生教の教義自体が、もともと勘違いから生まれたものなのか?)
ヴァーツラフの言葉も、世界再生教の教義も、精霊術が大地からエネルギーを奪うという点では同じだ。ただ、最終的な解釈が異なっている。大地からのエネルギーの収奪が、善なのか悪なのか。この一点での違いだ。なので、世界再生教の教義そのものが、根本から間違っているとは言えない。
おそらくは世界の管理者たるヴァーツラフの言葉のほうが正しいはずだ。であるならば、ラディムがすべきは、世界再生教の教義の見直しではないか?
(あー、私はいったいどうしたらよいのだ!)
思考の渦の中に取り込まれ、ぎゅうぎゅうと締め付けられる。一度にいろいろな問題を考えすぎて、ラディムの頭は爆発しそうだった。
「それにしてもおかしいなぁ」
ラディムが頭を抱えていると、不意に優里菜のつぶやきが聞こえた。
「どうした?」
ラディムはいったん、自分の考えを止めた。
「ラディム君の体のことだよ」
唐突に何を言い出すんだ、とラディムは訝しんだ。
「私がキャラクターメイクで作った身体と、なんだか微妙に違う気がするんだよねぇ」
優里菜のキャラクターメイクの様子は、記憶を覗いて理解はしている。だが、微妙に違うと言われたところで、ラディム自身には実感がなかった。まったくピンとこない。
「仮にもう一人のテストプレイヤーが悠太君だったとして、もしかして、この体自体は私が作ったものじゃなくて、悠太君の作った転生素体だったのかなぁ」
優里菜の推論に、ラディムはなるほどと思った。今は優里菜がラディムの中にいるが、なぜだか性別が違う。わざわざ不都合が起こりそうな体に転生するだろうか。であるならば、確かにラディムの体は、もともとは悠太のために用意されたものなのかもしれない。で、何らかの問題が発生し、優里菜が入り込んでしまった。証拠はないが……。
「で、私の入るべき素体は別の場所にある。私がラディム君の体に迷い込んだために、悠太君の人格が破壊されて、記憶だけが残ってしまっている」
しかし、もし優里菜の言うとおりであれば、悠太があまりにも哀れではないか。記憶で見た横見悠太は、不自由な体に絶望し、この世界に転生を希望していた。望みが適っていざ転生をしてみたら、人格が破壊されて、残るはただの記憶のみ。これでは、何の救いもないではないか。
「なーんて、そんなわけないかー」
バカな考えをしたと言わんばかりに、優里菜はぺろりと舌を出した。
ラディムとしても、優里菜の推論は当たっていてほしくはない。悠太はどこか別の場所で転生をしていると思いたかった。
そんなやり取りをしているうちに、ラディムは意識が遠のいてきた。どうやら、朝が近いようだ――。
ラディムはゆっくりと目を開いた。広がるのは、意識を失う前に見た宿屋の部屋。
それにしても、中身の濃い夢だった。様々な事実が明らかになり、すべてを咀嚼するまでには、もう少し時間が必要だった。
(おはよう、ラディム君)
「ああ、おはよう優里菜」
優里菜の人格も覚醒し、お互いに挨拶を交わした。
「さて、今日も陛下の使いっぱしりをするかー」
腕をぐるぐると回し、ラディムは気合を入れた。勢い余って、腕がベッドの傍の小机に当たり、衝撃で布に包まれた『何か』が床に落ちた。
(あれ、ちょっと待って)
落ちた拍子に包まれていた布がめくれる。黄金に輝くメダルが、目に飛び込んできた。
(そのメダルって……)
優里菜は目を見開き、絶句した。
世界最強の精霊使いとも呼ばれていた悠太のキャラクター、カレル・プリンツ。使い魔にしている四匹の動物の懐き具合も大したものだ。強固な信頼関係が築かれている様子が、ラディムにもわかる。
(確かに記憶の部分だけで見ると、精霊は邪悪ではないと思う。この世界の管理者だというヴァーツラフも、精霊の力が無いと、この世界が崩壊すると言っている。私がザハリアーシュたちから習った内容とは真逆だ)
ヴァーツラフの言葉を借りれば、世界は今、有り余った地核エネルギーが暴走寸前の状態だ。このまま放置すると、天変地異で世界が滅びる。精霊術で地核エネルギーを消費しなければ、この運命は変えられない。
だが、ザハリアーシュから習った世界再生教の教えでは、精霊術は大地の生命エネルギーを無理やり吸収し、枯らしてしまうと伝えている。農業もできない不毛な大地に変えてしまうと。
(いったい、どちらが正しいのか。ザハリアーシュがわざと嘘を教えているとも思えない。世界再生教の教義自体が、もともと勘違いから生まれたものなのか?)
ヴァーツラフの言葉も、世界再生教の教義も、精霊術が大地からエネルギーを奪うという点では同じだ。ただ、最終的な解釈が異なっている。大地からのエネルギーの収奪が、善なのか悪なのか。この一点での違いだ。なので、世界再生教の教義そのものが、根本から間違っているとは言えない。
おそらくは世界の管理者たるヴァーツラフの言葉のほうが正しいはずだ。であるならば、ラディムがすべきは、世界再生教の教義の見直しではないか?
(あー、私はいったいどうしたらよいのだ!)
思考の渦の中に取り込まれ、ぎゅうぎゅうと締め付けられる。一度にいろいろな問題を考えすぎて、ラディムの頭は爆発しそうだった。
「それにしてもおかしいなぁ」
ラディムが頭を抱えていると、不意に優里菜のつぶやきが聞こえた。
「どうした?」
ラディムはいったん、自分の考えを止めた。
「ラディム君の体のことだよ」
唐突に何を言い出すんだ、とラディムは訝しんだ。
「私がキャラクターメイクで作った身体と、なんだか微妙に違う気がするんだよねぇ」
優里菜のキャラクターメイクの様子は、記憶を覗いて理解はしている。だが、微妙に違うと言われたところで、ラディム自身には実感がなかった。まったくピンとこない。
「仮にもう一人のテストプレイヤーが悠太君だったとして、もしかして、この体自体は私が作ったものじゃなくて、悠太君の作った転生素体だったのかなぁ」
優里菜の推論に、ラディムはなるほどと思った。今は優里菜がラディムの中にいるが、なぜだか性別が違う。わざわざ不都合が起こりそうな体に転生するだろうか。であるならば、確かにラディムの体は、もともとは悠太のために用意されたものなのかもしれない。で、何らかの問題が発生し、優里菜が入り込んでしまった。証拠はないが……。
「で、私の入るべき素体は別の場所にある。私がラディム君の体に迷い込んだために、悠太君の人格が破壊されて、記憶だけが残ってしまっている」
しかし、もし優里菜の言うとおりであれば、悠太があまりにも哀れではないか。記憶で見た横見悠太は、不自由な体に絶望し、この世界に転生を希望していた。望みが適っていざ転生をしてみたら、人格が破壊されて、残るはただの記憶のみ。これでは、何の救いもないではないか。
「なーんて、そんなわけないかー」
バカな考えをしたと言わんばかりに、優里菜はぺろりと舌を出した。
ラディムとしても、優里菜の推論は当たっていてほしくはない。悠太はどこか別の場所で転生をしていると思いたかった。
そんなやり取りをしているうちに、ラディムは意識が遠のいてきた。どうやら、朝が近いようだ――。
ラディムはゆっくりと目を開いた。広がるのは、意識を失う前に見た宿屋の部屋。
それにしても、中身の濃い夢だった。様々な事実が明らかになり、すべてを咀嚼するまでには、もう少し時間が必要だった。
(おはよう、ラディム君)
「ああ、おはよう優里菜」
優里菜の人格も覚醒し、お互いに挨拶を交わした。
「さて、今日も陛下の使いっぱしりをするかー」
腕をぐるぐると回し、ラディムは気合を入れた。勢い余って、腕がベッドの傍の小机に当たり、衝撃で布に包まれた『何か』が床に落ちた。
(あれ、ちょっと待って)
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(そのメダルって……)
優里菜は目を見開き、絶句した。
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