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第八章 皇帝親征
16 オーミュッツ潜入作戦だ
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帝国軍の侵攻は、あまりにも順調に進んでいた。順調すぎた。
国境の街同様、領都オーミュッツ途上の街や村は次々に帝国の勢力下にはいった。一切戦うことなく。不気味なほどに抵抗がない。
「ラディムよ、そろそろ辺境伯領の領都オーミュッツだ」
ベルナルドの指し示す先に見えるのは、高い城壁に囲まれた都市。
「ミュニホフには及びませんが、なかなか大きな街ですね」
ラディムは手をかざして前方を見遣った。オーミュッツの街の規模は、帝都ミュニホフの半分程度だろうか。地方都市としてはなかなかの大きさだ。
「当面はこの丘の上に陣を張る。敵軍の様子がつかめるまでは待機だ」
戦力的に上回っているとはいえ、ここまでの奇妙なまでの辺境伯軍の無抵抗ぶりだ。ベルナルドら首脳陣は、何か罠があるのではと警戒をしていた。
慎重を期して、当面は斥候部隊を出すにとどめ、様子見を決め込むことになった。
ただ、この状況はラディムには都合がよかった。オーミュッツの街に潜入する時間的余裕ができたからだ。
ラディムは早めに睡眠をとり、深夜を待った。
周囲は一面の闇。空は曇りなく、無数に瞬く満天の星。目を凝らせば、街の門に据えられているかがり火が見える。
ラディムは帝国軍の陣地をこっそりと抜け出し、オーミュッツの街の外壁の傍に立っていた。すぐそばには子猫のミアがいる。
「じゃあ、さっそく侵入するか。ミア、どうすればいい?」
ラディムは体を屈めて、座り込んでいるミアに話しかけた。
『ご主人様がいつも魔術とやらを道具にかけるのと同じ要領で、霊素を――あ、生命力だったかにゃ、あたいに纏わせてくれればいいにゃ』
念話で脳裏に直接ミアの声が響く。
「そんなに単純でいいのか?」
拍子抜けするほどの簡単な手順に、ラディムは少し不安を覚えた。
『あたいとご主人様の精神リンクは完璧にゃ。ご主人様の意をくんで、あとはあたいがうまく操作するから、大船に乗ったつもりでいてくれにゃ』
どうやらミアにお任せでいいようだ。
(便利だな、精霊術は……)
ラディムは使い魔の有用性に感嘆した。
『ご主人様、あたい思うんだけど』
「皆まで言うな」
ミアが言いたいことはよくわかる、目の前の光景を見れば。
『これ、侵入は無理だにゃ』
ミアのため息が聞こえた。
ラディムはミアに掛けられた精霊術で身体能力を向上させ、外壁を乗り越えたまではよかった。
街中は多数の兵士が警戒をして歩き回っており、なかなか隙を見いだせない。無策で突っ込むには躊躇する程度には、厳重に監視されていた。
「仕方がない、今日はいったん戻ろう。作戦の練り直しだ」
ここで捕まっては意味がない。万全を期すためにも、もっとしっかりした準備を整えなければならないと判断した。
ラディムとミアは再び外壁の外へ戻り、いったん生命力を取り払う。周囲を見回し誰にも見られていないことを確認して、帝国軍の陣地への帰路についた。
国境の街同様、領都オーミュッツ途上の街や村は次々に帝国の勢力下にはいった。一切戦うことなく。不気味なほどに抵抗がない。
「ラディムよ、そろそろ辺境伯領の領都オーミュッツだ」
ベルナルドの指し示す先に見えるのは、高い城壁に囲まれた都市。
「ミュニホフには及びませんが、なかなか大きな街ですね」
ラディムは手をかざして前方を見遣った。オーミュッツの街の規模は、帝都ミュニホフの半分程度だろうか。地方都市としてはなかなかの大きさだ。
「当面はこの丘の上に陣を張る。敵軍の様子がつかめるまでは待機だ」
戦力的に上回っているとはいえ、ここまでの奇妙なまでの辺境伯軍の無抵抗ぶりだ。ベルナルドら首脳陣は、何か罠があるのではと警戒をしていた。
慎重を期して、当面は斥候部隊を出すにとどめ、様子見を決め込むことになった。
ただ、この状況はラディムには都合がよかった。オーミュッツの街に潜入する時間的余裕ができたからだ。
ラディムは早めに睡眠をとり、深夜を待った。
周囲は一面の闇。空は曇りなく、無数に瞬く満天の星。目を凝らせば、街の門に据えられているかがり火が見える。
ラディムは帝国軍の陣地をこっそりと抜け出し、オーミュッツの街の外壁の傍に立っていた。すぐそばには子猫のミアがいる。
「じゃあ、さっそく侵入するか。ミア、どうすればいい?」
ラディムは体を屈めて、座り込んでいるミアに話しかけた。
『ご主人様がいつも魔術とやらを道具にかけるのと同じ要領で、霊素を――あ、生命力だったかにゃ、あたいに纏わせてくれればいいにゃ』
念話で脳裏に直接ミアの声が響く。
「そんなに単純でいいのか?」
拍子抜けするほどの簡単な手順に、ラディムは少し不安を覚えた。
『あたいとご主人様の精神リンクは完璧にゃ。ご主人様の意をくんで、あとはあたいがうまく操作するから、大船に乗ったつもりでいてくれにゃ』
どうやらミアにお任せでいいようだ。
(便利だな、精霊術は……)
ラディムは使い魔の有用性に感嘆した。
『ご主人様、あたい思うんだけど』
「皆まで言うな」
ミアが言いたいことはよくわかる、目の前の光景を見れば。
『これ、侵入は無理だにゃ』
ミアのため息が聞こえた。
ラディムはミアに掛けられた精霊術で身体能力を向上させ、外壁を乗り越えたまではよかった。
街中は多数の兵士が警戒をして歩き回っており、なかなか隙を見いだせない。無策で突っ込むには躊躇する程度には、厳重に監視されていた。
「仕方がない、今日はいったん戻ろう。作戦の練り直しだ」
ここで捕まっては意味がない。万全を期すためにも、もっとしっかりした準備を整えなければならないと判断した。
ラディムとミアは再び外壁の外へ戻り、いったん生命力を取り払う。周囲を見回し誰にも見られていないことを確認して、帝国軍の陣地への帰路についた。
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