わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!

ふみきり

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第八章 皇帝親征

18 アリツェと名乗る少女とともに

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「私はバイアー帝国第一皇子、ラディム・ギーゼブレヒトだ」

 なめられてはいけないと思い、ラディムはやや尊大な態度で名を告げた。

「帝国の、皇子様ですの!?」

 アリツェは目をぱちくりとさせている。

「こいつはたまげた、皇帝親征とは聞いていたが、まさか第一皇子まで同行しているとは」

 ドミニクも目をむいて、じろじろとラディムの姿を観察し始めた。

「で、私はアリツェさんのお知り合いと、何か関係がありそうか?」

 驚愕に動きが止まっているアリツェとドミニクが落ち着くのを待って、ラディムは尋ねた。

「いえ、さすがに関係はなさそうですわね。フェイシア王国の敵国である帝国の、しかも皇子様では……」

 アリツェは残念そうに頭を振った。

「ちなみに、誰とそっくりだったのだ?」

 ラディムは自分に似ているという人物が気になった。世界には同じ顔をした人間が三人はいるとよく聞くが、まさか、与太話などではなく、事実なのだろうか。

「ええ、カレル・プリンツという殿方に……。ただ、カレル様自体は十八歳なので、ラディム様とは歳が違いますわね」

「カレル・プリンツだと? 前辺境伯の名だな。……だが前辺境伯は死んでいるはずだし、そもそも生きていたとしても、今三十代後半くらいのはずだが」

 アリツェの話すカレルとラディムの知る実の父たる前辺境伯カレルとは、別人のように思えた。ただ、王国の上級貴族であったカレル・プリンツと同姓同名を名乗る人間など、他にいるだろうか。アリツェの語るカレルは、偽名で間違いないだろう。

「ああ、いえ……。その、前辺境伯とは違うカレル・プリンツですわ。同姓同名の、別人ですの」

「なん……だと……?」

 まさか、本当に同姓同名の別人がいるとは……。ラディムは驚き、言葉を失った。

 その時、ラディムの脳裏に、一つの突飛な考えが浮かんだ。アリツェの言うカレル・プリンツは、もしやシステム上のラディムの父である横見悠太の操っていたカレル・プリンツではないか、と。そうであれば、ラディムにそっくりなのも当たり前の話だ。

 それに、もう一つ気になる点があった。アリツェの容姿だ。どう見てもラディムの中の優里菜――ユリナ・カタクラと瓜二つだった。ユリナ・カタクラにそっくりな少女が、ラディムのシステム上の父のカレル・プリンツを知っている。これはどう考えても、転生がらみな気がしてならない。

「おい、その話、詳しく聞かせてくれないか? もしかして、その男、別の世界から来たとか言っていなかったか?」

 確かめるため、ラディムはアリツェに鎌をかけてみた。

「なんですって? ラディム様、どこでその話を!」

 案の定、アリツェは食いついた。どうやら、ラディムの予想が当たったようだ。

「実はな、笑われるかもしれないが、私の心の中に別の世界から転生したという者の人格がある」

「!? ラディム様は、もしかしてテストプレイヤー!」

 アリツェの口から、決定的なキーワードが飛び出した。

「テストプレイヤーを知っているということは、どうやらお互いにそうみたいだな。まさかこんなタイミングで出会うとは」

 ラディムの側から転生者を探すまでもなかった。まさか件の相手からラディムに近づいてくるとは。偶然とはいえ、ここでもう一人の転生者に会えたのは僥倖かもしれない。いろいろ疑問を解消できるいい機会だ。

「わたくし……、いや、もういいか、オレは転生前のキャラクター名がカレル・プリンツ。転生したはいいが、なぜかこのアリツェって女の子の中に入っちまっている」

 突然アリツェは口調を変えた。しかも、ラディムのシステム上の父カレル・プリンツ本人、つまり、横見悠太だとのたまう。

 アリツェの言葉を聞いた瞬間、優里菜の人格から歓喜の情が激しく発せられた。
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