異世界のリサイクルガチャスキルで伝説作ります!?~無能領主の開拓記~

AKISIRO

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第1章 無能領主のリサイクルガチャ

第28話 8領地同時侵略開始③

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★マール領地 VS ババス

学問の領地と呼ばれるマール領地では、代理人である一人の学士が慟哭に近い叫びをあげていた。

「なんたることか……マール様が、亡くなったと!?」
「まさか、本当なのか!」

代理人の名はセガス。青年貴族として生まれたが、怠惰な日々に嫌気が差し、学問の道を志したという人物だった。

「問題は、我らに軍事力が皆無ということだ」
「そうだ……戦争は避けねばならぬ」
「しかし、仇は取りたい」
「そんなものは、知恵ある者にとっては無意味」

そこに透き通るような声が響き渡った。
図書館の闇を切り裂くように、天使が優雅に舞い降りる。

「わらわは天使王ババス。王であり女性。貴殿の膨大な知識が、我がガルフ様の知恵となるでしょう」
「が、ガルフ様だと?」
「無礼よ!」

セガスの背後の人達から白い翼が生え、そのまま即死。

「落ち着きなさい。次にガルフ様に無礼を働けば、即死よ」
「ぎょ、御意……私はセガス、戦う意思はありません」
「根性は認めるわ。頼みがあるの」
「なんでしょう」
「この世界のパンドラの書物、神と通じたとされるあの本よ」
「なぜそれを?」
「わらわ、それに強い興味があるの。天界と地獄の戦争、ロイガルドとの激しい抗争。思い出したくても思い出せないことも多いけれど、神を殺すこと……ガルフ様なら可能と思わない?」

セガスの脳内で膨大な計算が高速で駆け巡る。

「スキル:高速計算」発動中だ。

数字の計算のみならず、あらゆる物事の行動計画も瞬時に算出できる。

「このマール領地の奥深くにダンジョンがある。通常の人間では攻略不可能な強敵が眠るが、ガルフ様なら例外だろう」
「その心意気、よいわ。さて、この領地は取りあえずガルフ様のもの。よろしくね」
「御意。セガスの命に代えてもガルフ様に忠義を尽くします」

その日、マール領地は学士の一人が天使ババスに殺された以外、戦いもなく静かにババスの手に落ちた。

★デストニア領地 VS ロイガルド

「大地の裂け目に異常はありません。ただ、デストニア様が亡くなりました」
老婆が叫ぶ。彼女の額には包帯が巻かれている。
「ふむ、やはりガルフ様の仕業か」
「はい」
「お主たちは大地の裂け目の監視を続けよ」
「御意」

老婆が振り返ると、果てしなく続く大地の裂け目が見えた。
その底は異世界と繋がり、かつて地上を恐怖に陥れた地下都市王国――ロイガルドの領域だ。
ここは山中の坑道にある領地。裂け目からの侵入者や異変を国王に知らせるのが役目だ。

一本の細長い槍が地面を穿つ。

「緊急事態。一人の三つ目族が来訪」
「通せ」
「なぜだ、ファルガルド様?」
「通すのじゃ。その者は恐らくロイガルド様」
一人の青年が姿を現し、けらけらと笑った。
「おお、賢者バタリー、生きていたのか」
「今はファルガルドと名乗る、ロイガルド様」
「お前、賢者ナタリーに賢者世界を伝授したな」
「そんなことがあったか?」
「まぁいい。この領地はくれてやる」
「話が早い」
「お前と戦えば世界が一つや二つ消える」
「ははは、だがな、俺は最高の主人を見つけた」
「ほう、ガルフ様か?」
「その通りだ。ガルフ様の力があれば異世界の攻略も夢ではない」
「そこまでの御仁だったか」
「さて、大地の裂け目の様子はどうだ?父君は怒っていないか?」
「地下帝国の魔王はいまだ眠り続けています」
「ははは、面白い」
「賢者バタリー、いろいろと苦労かけたな。まだその包帯を隠しているのか」
「隠さねばならぬのだ」
「お前も三つ目族だろうに」
「仕方ない。この世界では三つ目族は忌み嫌われている」
「ははは、そんな世界はガルフ様が変えてくれるだろう」
「そう願う」

その日、デストニア領地はロイガルドの手に戻った。
こうして、全ての領地はガルフの支配下に落ちた――
ただ、ひとつを除いて。

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