Inventory Kingdom ~僕の収納は国家規模!~

AKISIRO

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第32話 熊人形と蛙人形により奴隷解放

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 ――パイソン王国、ルプリス将軍領の外れにて。

「おい、蛙。そろそろ動くぞ」
「蛙と呼ぶな。俺の名は英雄王ユーバスだ」

 ひときわ小さな体をした蛙のぬいぐるみが、ぷいと横を向く。

「どこからどう見ても蛙だがな」

 熊のぬいぐるみが肩をすくめた。こちらは破壊王カイルード。今やぬいぐるみの姿で佇んでいる。

「お前こそ、破壊王の名を持ちながら熊のぬいぐるみとは滑稽極まりない」
「ふん、そんなことより魔女候補を探すんだったな。だが、お前のほうがパイソン王国に詳しいんじゃねぇのか?」
「ああ、奴隷のことならルプリス将軍が多数抱えている。だが、これは想定以上だ。屋敷どころか、領地全体に奴隷が配置されているとは……聞いていない」

「どれだけ奴隷好きなんだよ、ルプリスとかいうヤツは」
「奴は、誰も信じることができない男だった。それでも戦力はある。俺の次くらいには強いだろう」
「ほぉ、それは面白くなりそうだな」

「ただ、最強の冒険者を雇っていたはずだ。注意しろ」
「……で、いきなり全てを爆破してもいいか?」
「ダメに決まっている。まずは周囲の城壁を崩して撹乱しろ」

「面倒くせぇから城壁全部まとめて爆破してくるわ。兵士ごとさようならってな」
「それで構わん。空から『一億剣』で残りの兵士を仕留めよう」
「おいおい、自分の国の兵士だろ? 罪悪感ないのかよ」
「残念だな。俺はもうリード様の下僕だ」
「……それは、俺も同じだな」

 ――そして、動き出す。



 一方、ルプリス将軍の屋敷。
 将軍は椅子にふんぞり返り、口に葉巻をくわえていた。

「まったく、予定外のことが起きましたね。せっかく不老不死の条件を掴んだというのに、ソード王国を攻める前に同盟が瓦解とは。英雄王の生死も不明……最悪だ」
 将軍の問いかけに、部屋にいた少女・ルルが応える。

「……私は、食器を片付けてまいります」
「そうですか。ルル、君がこの部屋を任されたのは随分前ですね。戦闘奴隷になる気はないですか? 隣国エイチィムル王国ではコロシアムがあります。君には不思議な力があるという報告も受けていますよ」
「それは、きっと間違いです。私は弱い、スキルもない、ただの少女です」
「ふむ。まあ考えておいてください。戦闘奴隷になれば金貨も得られます。もちろん我が家の取り分もありますが、今よりは暮らしが良くなるかもしれません。まあ……死んだらそこで終わりですがね」
「……検討します」

 ルルが扉を閉めて出ていったその直後――。
 ドオォォン!
 屋敷全体が震える。外から轟音が響いた。将軍は即座に判断した。

(――城壁がやられたか)
「……ガエル」
「はい、御屋形様」

 天井裏から、黒装束の女性が降りてくる。

「どうやら敵が動いたようです。詳細は不明ですが、迎撃可能ですか」
「御意。仲間が既に向かっています。拙者も続きます」
「油断なきように。私の文字スキルが危険を示している」
「御屋形様の能力は本物……承知しました」

 この男、ルプリス将軍こそ“文字スキル”の使い手にして、文字王と呼ばれる存在。

「さて……楽しませてくれよ、文字たち。敵の情報を――示せ」

 至る所に刻まれた〈文字〉が、その力を発揮する。
 ――【ヌイグルミが動く】

「ぬいぐるみ、だと……? 熊と蛙? 聞いたことがないな」



「おいおいおいおい、聞いてねぇぞ英雄王! どんだけ文字が迫って来てるんだ!」
「忘れていた。ルプリス将軍は“文字王”と呼ばれている。俺と同格の存在だ」
「さっきは【俺より弱い】って言っただろうが!」
「言ったな。すまん。ここでは、相手のほうが圧倒的に有利だ。領地そのものがトラップだからな」

 熊と蛙のぬいぐるみ――いや、破壊王と英雄王は、全速力で駆けていた。
 後ろから、巨大な兵士の形をした〈文字〉が追いかけてくる。
 それは【兵】という一文字で構成された巨大な文字兵。

「なんか、ダセぇ格好してやがるな!」
「ふざけている場合ではない。ぬいぐるみとはいえ、損傷は修復が困難だ。リード様が悲しまれる」
「おっと、それは避けたい。なら派手に行くぜ!」

 ドン! ドォン! 次々と爆破される文字兵たち。
 しかし、追いかけてくる〈文字〉は無限に湧いてくるようだった。
 そんな中――。

「おい……なんか、影が動いたぞ?」

 突如、二人の黒装束の男が姿を現した。

「人形が……動いている? これは新しい現象ですね、ダブル」
「ああ、世界は広い。シュダが空を飛ぶエルフのように、僕は賢者の意思を受け継いだ存在」
「熊のぬいぐるみは僕が相手しようダブルは蛙を」
「任せたよ」

 空を飛翔するシュダの姿を、破壊王カイルードは見上げる。

「蛙さんはこの賢者が相手しようか」

 黒装束の男・ダブルが、左右に杖を構える。

「杖を2本使うだと? 聞いたことねぇな。誰だてめぇら」
「カイルード、油断するな!」

 英雄王ユーバスが叫んだ、その瞬間――。
 空から飛来したシュダが、破壊王に向けて拳を繰り出す。

「そんな拳で死ねるかよ!」

 衝撃が響く。
 破壊王カイルードのぬいぐるみが爆発する。シュダの姿も、その中に消えた。
 同時に、英雄王ユーバスにも、賢者ダブルの魔法が炸裂する。
 ルプリス将軍の領地は、次第に混沌とした色を深めていった――。


















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