創者―ソウシャ―

AKISIRO

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第8話 奴隷商人達の悲劇

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 俺達は取り合えず、奴隷商人達をフルボッコにしたわけで。
 後、巨人のデガスを見た彼等は泡を食って逃げ出そうとしたのだが。
 チェイミが縄を使って即座に拘束してしまった。

「おい、動くなよてめーら」

 チェイミは笑顔でそんな事をいうから、奴隷商人達は真っ青になっている。

「うち、バナッシュ」

「俺は、ヴェイク、異世界人だ」
「ぼくは、デナントス、魔王だ」
「私は、チェイミ、海賊娘だ」
「おいらは、デガス、鍛冶屋でそこのカモメがカモンだよ」

「なんか、凄い冒険者パーティーだね」

「そうでもないよ、そもそも冒険者登録してないんだけどね」

「ここに、冒険者ギルドがあるから登録するといいよ」
「1つ聞きたいんだけど、君はなんでそんなに涙の跡があるんだい?」

「えーと、ジャスカとデャスカとブャスカが殺されて、逃げてきたんだけど、もう生きる希望もなくて、だけど、生きなくちゃいけなくて、とてもとてもイライラしてたの」

「そ、そうか、イライラして簡単に奴隷商人に捕まろうとしてたのか」

「違うの、捕まったふりをして、他の奴隷達を解放してあげようと思ったの」

「とんでもない事を考える少女だな」

「これでも13歳なの、今日で誕生日なの、ジャスカとデャスカとブャスカが祝ってくれる予定だったの」

「ちょっと待ってくれ、その3人て確かゴブリンだよな、昔酒を飲んで遊んだ記憶が、てかあいつらこんな少女を育ててたのか!?」

「知ってるの? 3人を」

「誰に殺された3人は」

「勇者グリングシャなの」

「ちょっと待ってくれ、どういう事だ? あの冒険者は勇者だったのか?」

「勇者グリングシャは魔石を浄化すると言っていた。ジャスカとデャスカとブャスカが魔族の死体から集めていた魔石を全て浄化したの」

「一体何のために、つまりあいつの目的は魔石の浄化で、魔王であるぼくの体に埋め込まれている魔石を浄化する為に、わざわざあんな周りくどい事をしたのだろうか」

「何を言っているか分からないのよ、そんなよく分からない事を言うと、怒っちゃうの」

「そうか、よーくわかった。あのグリングシャは勇者でぼくが殺さないといけない相手だ!」

「まぁ、落ち着けよ、ってかここキノコだらけだろおおおおおお」

 路地裏はキノコの密集地になっていたわけで。
 俺は冷や汗を掻きながら、ぜぃぜぃと呼吸を荒げていた。

「お、俺はな、小さなころにキノコを大量に食ってな、しかも生でな、幻覚、妄想、笑い、こわばりが止まらなくなって死にかけたんだよ」

 その場が沈黙に包まれていたが、いつも笑っているチェイミがげらげらとさらに笑い出した。

「そりゃーすげーこったな」

「おいらでも生では食べないよ」

「魔王でもキノコを生では食べないな」

「面白いのそれ、やってみたいの」

「「「「やらんでよろしい」」」」

 俺とチェイミとデガスとデナントスが思わず突っ込んでしまった。
 そんな話をしていると。

「あのーすみませんが、俺達を解放してもらえませんかねー」

「あ、君達は奴隷達の居場所を教えてもらってもいいかな」

「えーと解放は無理ですよ? なぜならこの街のルールですから、それを破るというなら、国家反逆罪になりますが。ギルガザンド大陸のギルバラス帝国に謀反したとなれば、冒険者登録だって出来ませんよ?」

「それなら安心してくれ、ぼくは魔王なんだ。そんな事を告げ口したら君達を処刑する」

「ひ、ひいいいいい、魔王様でしたか」

「どこの魔王様で?」

「ガロルフ大陸を滅ぼしたデナントスだが?」

「あ、あの最悪のデナントス様でしたか、奴隷達は解放いたします。早く連れて行ってください、ささ、こちらへ」

 その光景を見て、俺は思わず苦笑を漏らしてしまったのだが。
 チェイミはげらげらと腹を抱えて笑っている。
 まるで姉さんではなく、おっさんであったのだが、そこは突っ込まないでおく。

 奴隷商人達は縄で両手を縛られながら。
 まるで犬のように走り出した訳だ。
 かくして魔族の奴隷20人を解放する事が出来た。
 殆どが子供だったが、5人程大人が含まれる。
 男女比はなぜか1体1の10人と10人だった。

「さて、俺達はこれからどうしようか」

「すみません、俺達はどうすればいいのでしょうか、身よりもないもので」

 20人の奴隷達は困り果てた顔をしていたが。

「確かジャスカ達の集落があるはずだが、そこに向かうか」

 デナントスがそう言うと、魔族達は困り顔になりながらもうなずいてくれる。
 空を見上げると太陽が昇ってきていた。
 お昼時なのだろう、全員のお腹が鳴り響いた。
 
「まず、食事にしたいですが、お金がないですよね」

「安心しろ、船に備蓄してある食料があるからな、海賊たちの置き土産さ、全員殺したけど」

 チェイミが笑顔でさらっと恐ろしい事を呟いた。

 かくして俺達は一旦船に戻る事となったわけだ。
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