完璧な淑女の私、女友達と親友夫婦との撮影会で、身も心もとろとろに蕩かされるまで

Yu_mei_mai

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序章 「新たな風」

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「佐々木さん、少しいいですか?」

夜勤前のナースステーション。書類の山にうんざりしていた雛は、不意にかけられた落ち着いた声に顔を上げた。

声の主は、ひと月前に赴任してきたばかりの循環器内科医、高橋さとし

端正な顔立ちと穏やかな眼差し。高橋医師は誠実な印象で、患者への接し方も優しく丁寧だった。

「はい、先生。どうかなさいましたか?」

雛は、完璧な笑顔を顔に貼り付けた。

「いつも助かります。佐々木さんがいると、本当に仕事がやりやすい」

不意にかけられた労いの言葉に、雛は少しだけ驚いて顔を上げた。

「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」

高橋は穏やかに微笑むと、本題を切り出した。

「実は個人的なお願いなのですが…」

高橋医師は少し照れたように口元を緩めた。

「私の大学の後輩が、先月こちらに引っ越してきたんです。まだこの街に知り合いが少ないようで」

雛は手を止め、医師の話に耳を傾けた。

「由美は大学の後輩でして。この春からアートギャラリーを開くことになったんです。」

「ただ、少し古風というか…清廉潔白せいれんけっぱくすぎるところがありましてね。自分から積極的に輪を広げていくタイプじゃないので、少し寂しい思いをしているようなんです」

清廉潔白、と彼は言った。その言葉の響きに、雛の口の端が微かに吊り上がる。

(張りつめた清廉さがほどける“瞬間”を見たい)

高橋の言葉は続く。その口調には、まるでガラスケースの中に飾られた完璧な作品を眺めるような、奇妙な客観性が含まれていた。

「由美のことをぜひ佐々木さんに紹介したいと思っています。もし良ければ、休みの日にでも…」

突然の申し出に少し戸惑いながらも、雛は微笑んだ。

「もちろん、喜んでお会いしますよ。私も病院以外の友人は意外と少ないので」

高橋医師の表情が明るくなる。

「ありがとうございます。では、来週の土曜日はどうですか?由美のギャラリーの近くでランチでもどうでしょう」

雛は手帳を確認し、「土曜日なら大丈夫です」と返事をした。

(どんな人なんだろう。清廉潔白すぎる、って…)

雛は、高橋医師が語った「清廉潔白…」という言葉に、ほんの少しだけ興味を覚えた。



土曜日の正午、雛は待ち合わせの駅前カフェに到着した。

窓際の席で待っている高橋医師が手を振る。その隣に座っている女性の姿を認め、雛は思わず息を呑んだ。

「お待たせしました」

二人に近づきながらも、雛の視線は隣の女性に釘付けになっていた。

 立ち上がって挨拶するその女性、水野由美は、少女のような透明感と、成熟した大人の女性が持つ凛とした佇(たたず)まいを完璧に両立させていた。

彼女が立ち上がった瞬間、ふわりと、雛の嗅覚に絡みついて離れない香りがした。それは、どこかの花の蜜のような甘さの奥に、こちらの本能を直接揺さぶるような、どこか危険な罠のような香りだった。

上質な生地だと一目でわかるスタイリッシュなワンピースは、彼女のしなやかな身体のラインを拾いすぎず、しかし隠しきれないほどの女性らしさを際立たせている。

ダークブラウンに微かに透けるボブヘアが、白い首筋のラインを驚くほど上品に引き立てていた。

「初めまして、水野由美です。聡からいつも話を聞いています」

その声は、涼やかで知性的だった。だが、雛の目は別の場所に釘付けになっていた。

ワンピースの胸元が、淑やかなデザインとは裏腹に、豊かな乳房の存在をはっきりと主張している。スカートから覗く脚は、細く、しなやかで、完璧な曲線を描いていた。

(この人…すごい…)

一見すると、清楚で、上品で、まさに「良家の子女」という言葉がぴったりの女性。しかし、その完璧すぎる外見が、逆に雛の暴きたいという衝動を掻き立てた。

(この人が、もし…)

あの涼やかな声は、快感に溺れるとき、どんな風に掠れて甘くなるのだろう。品のいいワンピースの下に隠された肌は、どれほど滑らかで、どんな色に染まるのだろうか。

知的で整った顔立ちが、理性を失ったとき、どんな表情を見せるのだろう。

(見てみたい…この人の、隠された一面を)

その想いが、雛の胸を熱く満たしていく。

「佐々木雛です。こちらこそ、よろしくお願いします」

なんとか平静を装って挨拶を返すと、由美の表情が、まるで硬い蕾が一気に満開になるかのように、鮮やかに変化した。今まで浮かべていた理知的な微笑みとは全く違う、抑えきれない歓喜そのものだった。

その瞳は、雛ただ一人を、まっすぐに射抜いていた。それはまるで、長い間探し求めていた魂の片割れにようやく巡り会えたような、切実で、どこか貪欲さすら感じさせる眼差しだった。

(うわ…、こんな顔もするんだ…)

込み上げてくる歪んだ欲望。この完璧な仮面を剥がして、誰も知らないような、淫らな顔を引き出してみたい。

その抗いがたい衝動が、雛の身体の奥深くで、熱く渦巻くのを感じていた。

高橋医師が、嬉しそうに続ける。 

「由美もね、こちらに来てから話し相手がいなくて寂しがっていたんだ。雛さんがお友達になってくれたら、僕も安心です」

雛は、心の中の黒い妄想を完璧に隠し、人懐っこい笑顔を由美に向けた。 

「もちろんです。由美さん、これから色々教えてくださいね」

三人はランチを楽しみながら会話を交わした。由美は帝都芸術大学出身で、海外でも活動経験があるという。話題は自然と芸術や文化に及び、雛は由美の知的な会話に引き込まれていった。

「佐々木さんは、芸術にも詳しいのですね」

「いえ、そんなことはないんです。でも、時々美術館に行くのは好きで」

「今度、私のギャラリーができたら、ぜひ来てください。まだ準備中なんですけど」

高橋医師は二人の会話に満足そうに微笑んでいた。昼食後、彼は病院への緊急呼び出しで先に帰ることになり、雛と由美は二人きりになった。

「お時間があれば、もう少しお付き合いいただけませんか?」由美が提案した。

「もちろん」

二人は近くの公園を散策しながら、より個人的な話をするようになった。由美は東京に来たばかりで友人が少ないこと、高橋との出会い、そしてギャラリーへの夢を語った。

雛も自分の仕事や日常について話した。ただし、仕事の話が中心で、恋愛や家族についてはまだ深く触れなかった。

「また会いましょうね」

別れ際、由美が言った。

「ぜひ。私も楽しかったです」

この出会いから、雛と由美は時々連絡を取り合うようになった。病院の近くでお茶をしたり、由美のギャラリー準備を手伝ったりと、自然と二人の距離は縮まっていった。

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